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隔世遺伝vsフィナステリド【1000文字エッセイ】


さすがに毛が抜けすぎる。

不祥事は何も起こしてないのに相次ぐメンバーの脱退。抜け毛をポジティブに言い換えたくて卒業と呼んでいるけど、さすがに卒業し過ぎじゃないか?毎日卒業式するなよ。


排水溝をこれ以上黒く染めないでくれ。排水溝を指でなぞって集まってきた黒い物体ほど虚しいものはない。


これは必然なのか。愛しき自分の血を辿ってみると両祖父は何というか頭の輪郭が明瞭というか、少数精鋭の毛根というか、頭蓋骨がチャームポイントというか、無修正頭皮というか。


とにかく記憶の中の2人はむき出しの闘志ならぬむき出しの頭皮をしてる。


それに引き換え、僕の父は先の特記事項が一切ない。随分と白髪が増えたけどメンバーの数は問題ない。


つまり、隔世遺伝の銃口がこちらを向いている訳だ。それも2丁拳銃で。家系図の両サイドからシードで駆け上がってこないでほしい。逃げ場なし?何よ隔世遺伝って。もう!


いや、なぜこんなにごねてるかと言うと僕はツルツルが似合わない出立ちなのだ。


平面的で簡素な顔、体はガリガリ。どう頑張ってハゲてもブルースウィリス的な渋みは出ない。


学生時代に坊主にしてた時期があるが24時間、綿棒の形態模写をしてる感じになっていた。


今まで僕は幾度か抵抗を試みた。スカルプ的なシャンプーをしてみたり、逆にお湯だけの湯シャンをしてみたり。頭皮マッサージしてみたり。


でもどれもあまり効果は感じず。おでこの快進撃は止まらない。面積はじわじわ広がっていく。


このオセロ、白が強い。そしてようやく戦局を変えるには角を押さえることだと気が付いた。


抜本的な改革が必要なのだ。書いて思ったけど抜本的って漢字なんか嫌ね。抜けそうで。


何をするか、答えはお薬だ。


AGA治療に有効とされる成分としてフィナステリドというものがあるみたい。


フィナステリドは毛髪を弱らせ抜け毛の原因となる男性ホルモンを抑制することで、薄毛の進行を防ぐ効果があるとのこと。


さてどうなるか。このハゲオセロの角を取るんだ。黒よ、ここから増えていけ。


時代はフィナステリドだ。なんか必殺技っぽいしイケる気がする。フィナステリドを信じていく。


自分の人生において何を信じるかは自分で決めていくんだ。


自分の血筋を愛しながらも人生をカスタマイズしていく。僕はこの度フィナステリドを信じることにした。


隔世遺伝vsフィナステリド、さてこの戦いの行方はいかに。

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福本カズヤ/文学フリマ東京【P-26】
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