見出し画像

ブラックサンタ参上(短編小説)

  ガサガサガサ・・見つけた・・・では、これは貰っていくぞ。

黒い 大きな影はその家から立ち去って行った。

そして次へ またその次の家へ・・

12月25日の朝、良平は目を覚まし枕元に目を見やった。

「ん・・」

「ベッドの下に落ちたかな・・」

昨日寝るまでやっていたゲーム機が見当たらない。

良平は目覚めにゲームをやるのが日課だった。

とはいうものの、そのゲーム機は良平のものではない。

クラスの気の弱いヤツからむりやり借りている物だった。

ベットから立ちあがりゲーム機を探す。

「なんだ コレ・・・」

≪ブラックサンタ参上  オマエは悪い事ばかりしている。オマエの大事なゲーム機はオレが貰って行く≫

「 ん!ん!なんだと・・糞バカ野郎。」

良平は壁を蹴飛ばした。

「痛ってぇ~」 

壁にはクギが頭を出しており横に小さな紙に

≪ブラックサンタ参上 ざまあみろ≫

と書いてあった。

腹立つなぁ・・とはいうものの怒りをぶつける先が無い。

良平は朝メシを食べに階段を降りる。

が んん・・玄関横の鏡に映る姿が・・・

「クッソ馬鹿野郎~」

ドン・・壁を殴る。

良平の額には

≪ブラックサンタ参上≫

と黒い色で書いてある。

頬には アノ マークまでも書いてある。

近くのフキンで拭くが落書きはとれない。

「油性マジックか・・」

さすがに怒りも通り越し顔の心配をする。

「顔を洗うか・・」

洗顔フォームを手につけ顔をこする。

「あっ」

遅かった。

顔に着く瞬間刺激臭がした。

中身は母親の白髪染めだった。

目を強くつむり風呂場の石鹸を手探りで探し、顔を洗う。

(こいつクドイな・・クソっ)

良平は心の中でつぶやき顔が綺麗になるまで擦る。

顔は赤くなりヒリヒリする。 

そういえば浩太の顔に面白がってみんなで落書きしたな・・・

1週間前の出来事を思いだす。

浩太とは幼馴染だったが(何でも器用にこなす)
浩太に嫉妬してイジメていた。

顔を擦りながら良平は

【浩太に悪い事していたな】

と、いつしか思う様になっていた。

その日、良平は浩太に電話し

「今まで悪かったな・」

と謝っていた。

その後は何事も無く1日は過ぎていった。

夜になり

「良平~風呂入りなぁ~」

階下から母親の声がした。

「オウ」

良平は風呂に向かう。

結局1日どこにも出かけないままの良平は、ジャージを脱ぎだした。

「ん・ん・ん~(怒)(怒)(怒)」

パンツには

《ブラックサンタ参上》の文字が・・・・・・・


あわててパンツを脱いだ良平の目には股間に書かれたかわいい

《象さん》

の姿が映っていた。

いいなと思ったら応援しよう!