彼女は歩く、歩き続ける(短編小説)
彼女は歩き続ける。
ずっとずっと歩き続けている。
どこに向かっているのか、、
足が痛くても疲れても、それがなにかの使命だったのか、それとも単なる慈善の心だったのかはわからない。
あまりにも長い時間が過ぎてしまった。
彼女はいつから歩いているのかすら忘れてしまったのだ。
なぜ歩いているのかなど覚えているはずもなく、
彼女が向かう先々は凍て付き轟々と風が吹き、
人影はまばらで人々は静かに家に篭っている。
彼女に向かって休みなく寒風は吹き付け、前に進む彼女の気持ちを挫こうと立ち塞がる。
冷たい雪が地面に降り積もる。
無言の白い雪は深々と舞い積もり、彼女の歩みを妨(さまた)げる。
雪は地面を覆い(動きたい)そんな気持ちを止めてしまうかもしれない。
そして勿論雪は彼女の足元にも降り積もる。
彼女は凍える。
それでも彼女は歩き続ける。
強い風が吹く。
すべてを無くそうと、すべてを吹き飛ばそうと。
暗黒の大地から吹き降りてくる風。
冷たくと唸りを上げる見えない存在は、
木々をしならせ枝を打ち払い大いなる力を見せつける。
彼女は大地に強く踏ん張る。
戻されないように。倒れないように。
そんな彼女に寒風が吹き付ける。
それでも彼女は一歩一歩前に進む。
彼女の足元は枯れ草が地面を覆う。
カサカサと風に揺られ、無情の世界を表す様に。
茶色く茶色く世界を一色にする。
雪が降る。
白く白く世界を一色にする。
一色の世界。
彼女も同じ色に染めようと、纏わり抱きつき絡みつく。
それでも彼女はあがない振り払い、足を上げる。
こうして彼女は歩き続ける。
どんな嵐もどんな寒さも乗り越えて。
彼女は考える。
(前に進むことに)何か意味があるのかな、、
【きっと意味がある。】
彼女は心に誓う。
【前に進む】と
どうしてかは分からない。
【なんの為に歩くのか、、】
忘れてしまったけれど
【きっと大事な意味があったから。】
彼女は歩く。
彼女は歩く。
どうしてなんか考えない。
きっと大事な事だから!
彼女は気づけない。
後ろを振り向かないから!
だけど彼女の後ろには
暖かな太陽の光と緑の大地が、、
赤白ピンク多彩な色が、、
家に閉じ籠っていた人々が外に出て喜び叫ぶ。
【花。満開の花。春が来た。】と
オルカパブリッシングさんの
No.121
【春を待ちながら】
に触発されました。
よかったら読み比べて下さい。