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虹色の宝物(童心・短編小説)

虹色の宝物(童心・短編小説)

太陽がサンサンと照りつける日陰のない道を、タモを持って僕らは歩く。

景色はユラユラと揺らめき、湿った髪の毛からは汗がタラリと流れ落ちる。

石段を登って神社の中を横切り、ブロックの塀に囲まれた目的の人家の横にたどり着いた。

神社から少し離れたその家は、大きな木が塀沿いに3本生えて緑のタワーを形作る。

側溝横の黒いアスファルトに緑の虫かごを置き、僕達は臨戦態勢に入った。

見上げるそのタワーに

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心躍らせる春の嵐(童心・短編小説)

心躍らせる春の嵐(童心・短編小説)

《ビュービュー、パチパチパチ》

春の嵐が家を揺する。

雨は窓ガラスを打ち、絶え間なく雨水は流れ落ちる。

窓の外を眺める僕は一人ワクワクと気持ちが高なってくる。

学校が休みの土曜日が待ち遠しい、、そして土曜日の天気は晴れでも雨でもどうでもよいのだ。

土曜日さえ来ればいいのだ。

やっと《土曜日》だ。

家族がまだ寝静まる時間に早起きして駅に向かう。

始発電車を待つ駅の、山に向かうホームに

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一人で野球をする子供(童心・短編小説)

一人で野球をする子供(童心・短編小説)

『ピッチャー第一球を投げた〜』

振りかぶった僕は全力で壁に向かい白いボールを投げる。

グローブを放り誕生日に買ってもらった木製のバットに握り直し、壁から戻ってくる白球を狙って力一杯振り回した。

《カ〜ン》

バットに弾かれた白球は45度の角度で壁に当たり、跳ね返ったボールは僕の後ろの壁にも当たってコロコロと転がった。

高架の線路に交差する道路は短いトンネルとなり、僕一人の野球場へと変貌する

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