精神科入院⑫

外泊の二泊三日はあっという間に過ぎてしまった。
病院に戻る日がやって来た。
３日間で、だいぶ息子とは打ち解けたようだ。
私には母親として接して来てくれる。
息子に対する愛情だけは、甦ってきたような気がする。やっぱり自分で生んだからだろうか、育てたからだろうか。息子だという記憶は無くても、母親としての本能が、私の中にもあるのかもしれない。
育児日記やマタニティー日記には、息子に対する愛情がいっぱい書かれていて、どれだけいつも思っていたか、どんなに愛していたか、記憶の無い私でも分かる。ぎこちなかった2人の距離は近付いて、やっぱり私達親子なんだなと思う瞬間はあった。
私が嬉しくて泣きそうになると、息子は無邪気に「どうしたの？」と顔を覗き込んでくる。
「泣かないで、よしよし」と、頭を撫でてくれる。
息子の温もりを感じる。息子の優しさを感じる。
ずっと息子の側にいてやりたいと、心からそう思った。だって、息子は私が家出した時、幻となって、助けにきてくれた命の恩人だから。
特別なつながりが2人にはあるんだなと思う。
またいつ外泊になるか分からないけど、また息子と一緒に過ごしたい。
息子に対する思いはずっと今でも消えてはいない。
つづく