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偏食の強い大ちゃんの話②:特別支援学校現場より

療育園の引継ぎでも園の先生が、強い偏食です!!           と全員がそろっておっしゃるくらい食べることの受け入れがほんとに難しかった大ちゃんでした。
 
さあ、小1、入学する前にすぐに作戦を立てます。建物、人が変わることは不安も大きいですが、今までのパターンを壊すチャンスでもあります。

私がまずはじめたのは大ちゃんと仲良くなること。


それも入学式が終わって給食が始まるまでに4日間。          この4日間がまずは勝負。
食べる問題をとらえた時に、その食べる場面だけの解決をみるのは    対処療法。
食べられたことのみを評価してしまいます。


ちょっとややこしいですね。


食べてほしい、食べられることが目標ではあるんですけど、       それが目的ではないんです。


食べることを通して心を育てたいって思うから。。。


心を育てるためにまずは学校での一番の大人の存在になる私の人間関係を作ることから始まります!!

そして入学してから、4日間これでもかとやり続けたこと。


着替えたら遊具のお部屋に遊びに行く、                何か終わったら遊具のお部屋に遊びに行く。
着替えたらすぐに行く!です、終わったらすぐ!です。

そして彼と一緒に4日間、遊びまくりました。鬼ごっこに滑り台、4月はまだ肌寒いですが、毎日汗だくです。 


2日目が終わったら私の手をひいて一緒に遊具のお部屋に遊び行くように なりました。
3日目になると朝登校してくるとすたすたすたーと教室に入ってきて、服をぬいでぽいぽいすっぱだか。着替えたら遊びに行くが見通せてきました。 

私も遊びに行くオーラ全開、態度満開で待ってます、          「今日は大ちゃんとなにしよっかな。鬼ごっこかなー?ぶらんこかなー?と聞こえるような大きな独り言をいうと
「鬼ごっこ!!」と大ちゃん。                   「よーっしおにっごしよねー。」


そして朝の身支度が終わったら二人でクラスのほかのともだちに    「お先に~」と告げて一目散に二人で遊具のお部屋へ移動。 

「明日は何して遊ぶ?」
って聞くと「鬼ごっこ!!」と大ちゃん嬉しそうに返してくれます。


終わったら遊べるをひたすら4日間私と続けました。

この間、お母さんの食べることができるようになってほしいの願いも   もう一度確認して、今の困り感を伺って、気持ちも伺って、      「食べれる食事内容が少なすぎるし、ごはんばっかり食べて太っていくし、外での外食も難しいし、、、、」たくさん困っておられる様子。

食事を受け入れる練習を少しづつやっていくけど、           うまくいかない日もある。
おなかすいちゃうこともあるからおうちでのフォローをお願いすること、毎日食べた量、様子は保護者の方を確認することの了承を得たうえで始めたいことを伝えました
園でもほとんど食べれない日もあったので、お母さんもすんなりと了承してくだいました。
おうちでは学校でできたことを今まで通り認めてもらって、当面は
特に新しいアプローチはやめておこうということになりました。       
でも給食の献立をみてがーーん。
給食の初日はまさかの炊き込みご飯だったんです。。。。

白ご飯をパクっと一口食べてすぐに一緒に遊びに行く予定が、
まさかの初日のたきこみごはん。。。
初日だし、つまづきたくなかったし、様子もみてみたかったのに、
これは手ごわい。。。どうしよう・・。

でもとりあえず、
私は大ちゃんの机の上に給食お盆をのせてそこにはスプーンのうえにご飯をほんの一口一円玉にも満たないくらい乗せてあるのみ。にして様子をみました。

大ちゃん。それをみて「食べない」といわんばかりの堅い表情。     それはスルーしつつ、
ほかの友だちと先生はおいしいね。と言いながら食事をすすめました。    
大ちゃんはみんなの周りをうろうろ。遊びにいきたそうですが、私もスルーしています。
しびれを切らした大ちゃんからこちらに来て遊ぼう!と誘ってきました。
「大ちゃん、スプーン一口食べたらね」
大ちゃんあからさまに嫌そうな顔をしています。その顔はみないふりでどうぞ?と促すも、顔をそむける。                     

                              
わかったー。私もいったん引き下がります。またほかの子と
おいしいねーっていいながら食べます。大ちゃんも遊びに行きたくてしかたない。
でもそうこうしているとほかの子が食べ終わっちゃいました。
「おさきに!!」                          そう言ってほかの子が遊戯室に行っちゃいました。
いつもだいちゃんが言っていたセリフを言われてしまいました。

「あー」大ちゃんの機嫌も悪くなってきています。

今日は初日だし、今日は一旦ひこうかなって思いながらも
「大ちゃんスプーンからっぽにしたらね」と言ってみました。
大ちゃんは怒りながら、でも私の座っている太ももに顔をうずめにきました。
あれ?手伝ってほしいのかなあ、葛藤しているのかなあ。。
と思って、
大ちゃん、どうぞってスプーンをもって促してみたら、ものすごい顔でじーーーとスプーンの先のごはんを見ています。でもやっぱり無理、って感じでまた太ももに顔をうずめています。
「大ちゃん、わかった。じゃあちょっと減らすね、」といったら、    顔をあげて、
一円玉くらいのごはんをたった34つぶにしました。その様子をじっとみてました。
そしたら
大ちゃん決心したように目をつぶって


パク。

口の中にいれました。

「よし大ちゃん〇、!!」というと
喜ぶのかなと思いきや、
大ちゃんは大泣き。                          
食べたことのないものを受け入れてしまったと感じたのか
教室の前の廊下をうわーんと泣きながらゴロンロゴん転がりまくりでした。
5分くらいたって転がるのをやめてじっとしてきたので
大ちゃん遊戯室いこか。とそっというと
涙をふいてまた私の手をとり、あそぼっていってきました。

ここからは毎日白ご飯一口食べたら遊びに行くを2週間くらい続けました。大ちゃんの食事時間わずか5秒。でもすごく喜んで、昼休み二人っきりでこれでもかって遊びました。
そうしていくと、給食に自信をもってきたのか、エプロンを付けるのがとても速くて、いつも1番にスタンバイしているくらい。                                 
そして、私やほかの子の給食のお盆をじっとみていることがよくみられるようになりました。興味もってきたのかなあと感じたので、
スプーンにのっているのがごはん以外のニンジンひとつに増やしてみたり、
量も二口、3口、と少しずつ増やしていきました。
ほかの先生にもいっぱい褒めてもらって、一緒にたくさん遊んで
1学期が終わるころにはほとんどの食材の経験がおわり、私でなくても食べることができるようになってきました。
量も子どもの量半分くらいは食べることができるようになりました。

1年後は普通量を普通盛りでお椀をもって姿勢を正して食べることができるようになりましたよ。

大ちゃんとは2年間おつきあいしたのですが、食事以外でもものすごい変化がありました。
1年生の時は感触系の遊びはほぼNG.                  土に触れず、ボディペイントもできず、だったのですが、2年生になると誰よりもフィーバーして遊んでいた大ちゃん。
日々の小さなこだわりも減り、言葉も増えました。友達にも興味がでてきて一緒に遊ぶ姿が格段に増えたり、2年生になって給食を食べることの問題を抱えていた新しいクラスメートをみて
「給食たべれる大ちゃんは〇」「おいしいのに」なんて言ってました。
ご家庭でも今日はこれが食べれるようになりました!!とうれしい報告も続きました。

何よりも成長したのは心だったんだなあ・・って。

初日のおしは果たしてどうだったのか・・・。             いつも悩んでしまうのですが、
大ちゃんに助けられて、一緒に成功できたんだろうなって思います。

今でも、食べないっていう大ちゃんの困った目と、
よし食べるわと気持ちが切り替わった時のクリっとしたお目目をおもいだします。

食べない意思をみせるのは嫌いだから?それだけではなくて
今あるもの、過去の経験に引きずられ、不安でどうしようもないんだなと思います;
こうなりたいという憧れの気持ちが育ちにくい子どもたち。
大好きなお母さんがお父さんがおいしそうに食べているから       僕もほしい!僕も食べる!
そうやって乳児期幼児期を超えてくると思いますが、          その力の弱さがあります。
でも支えとなる大人や周りで励ましたり、               楽しそうにしている友だちの存在があれば
それが刺激となり、食べてみると挑戦するくらい、            かわってくる姿もたくさんみてきました。

全ては周りのは大人がどう受け取るか…なんだと思います。
尊敬する由香子先生の言葉を借りれば、子供が変わると信じてやれば絶対変わる
それは無理、今までが無理だったから、これからも無理
そう思ったらそうです。
変わる変わらない、それは大人が選ぶ選択なんだろうなって思います。


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