見出し画像

保護者の信頼を失った言葉・・それは誰もが使っている言葉でした・・・。特別支援学校現場より

私が中学部にいるとき、ちょうど中1の担任だった頃の話です。     


懇談中、保護者のかたの信頼を失ってしまった言葉があるのです。
でもその前に、なぜその言葉が信頼を失ってしまったのかがわかるためにも
保護者の方とのコミュニケーションで大切に思っていることを共有しておこうと思います。

日々、連絡帳で、お電話で、学年通信で
懇談で・・・とお母さん方とやり取りする機会も時間も
支援学校はとても多いです。
このやりとりの機会が多いおかげでコミュニケーションを深め、子どもの理解を深め、学校と保護者さんとの二人三脚・・・ができてくるのです


私は年齢の幼いこどもたちの担任をすることが多かったので、
特にお母さん方との連携はもう必須条件。
それはなぜかというと、子供が成長するための必須条件だからです。

その鍵は、お母さんがもっていることがほとんどです。
鍵をあけてくれるのか・・・それとも、それ以前に
成長の箱をみせてくれない保護者さんも中にはいらっしゃいます。      
日々の生活の大変さや、ご自分の気持ちの整理、家族との関係
夫婦の関係、親戚との関係、それはそれは抱えていらっしゃったと思うから
成長は願うけど、今への不安、何かを言われたら、自分が否定されたように感じてしまう、もう現状維持が精いっぱいに思える           そんなお母さんもいらっしゃいました。


だから、丁寧にコミュニケーションをとっていきたいと思うようになりました。


成長の箱をみせてもらえるようになって、鍵を一緒に開けるところまで、共有してそして中の宝物をお母さんが受け取ることができるようになるまで
サポートしたいと思うようになりました。

当時私が放った言葉で信用を失ってしまった、お母さんは小学部出身の中1のこどものお母さん。
それはもう、いろいろなことを乗り越え、行きつ戻りつ、気持ちを揺らしながら・・・それでも、日々の生活をプロデュースしてきて、お母さん方と小学部の先生が一生懸命連携してこられたんです。
成長するためのカギを開けてこられて、共に喜んでこられた。


小学部を卒業して
お母さんも中学部に対する期待と
大丈夫なのかなという不安をもって
中学部に入学されてきた。
そんな誰よりもわが子の成長を願う期待と不安が混じっていた
中1のお母さんに何気に行ってしまった言葉。

たった一言でお母さんの信頼を失ってしまったある言葉。

それは


「○○くんは明るくて みんなのムードメーカーで 「問題ないです
という言葉でした。           

                
この「問題ない」がだめでした。

一見、間違ってもないように聞こえる言葉なんですが、

なぜ信用を失ってしまったのか?


それは、子供の成長を楽しみにしている親御さんに「問題ないことが一番」と担任がとらえているっていうことに対しての不信をもたれた
からです。

もちろんお母さんによって
問題がない、安心安全が一番、の方もいらっしゃいます。だから問題ないですと聞いて安心されるかたもいらっしゃるかもしれません。
でも
このお母さんは成長を、変化を期待されているのです。


その時はほんの少し怪訝な表情をされただけで
その1年大きく何かあったわけではありません。

でも、その子が中2になった時に
新しい担任の先生にそのことを
言われたそうです。

「学校生活の中で問題がないはずがない」と
「成長するための課題をなぜ先生はみつけれないのか・・・」と
そうなんです。

問題ないです。の言葉
の後に、せめて日々の光景が浮かぶ具体的なエピソードや
今こんなことに取り組んでいるよとか
私の口から
お伝えできればよかったんですけど
その時はお母さんがそのように思われていると
察することもできませんでした。

私の失敗はお母さんの今までのがんばられたことを感じることができず、
想像できず、問題のないという
ほんとに無難なその場しのぎの、いい加減な言葉を選んでしまったことです。物事の捉え方の甘さが出た言葉だなって思います。

問題ないです。


ムードメーカーです。
誰もが言いそうなことですよね。でも、プロである立場である担任が
安易に伝えてしまった情けなさ・・・
実際、その子に課題はたくさんありました。
気分にむらがあったし、身辺自立の課題も残っていた。
でも
問題ないと言ってしまったのです。

このエピソードがあって
私は中学部から小学部に行くことを決意しました。
捉え方を見直したい、もう一度やり直したい。
土台作りのプロである小学部の門をたたきました。
でもね
私の失敗は私の成長へのエネルギーに変えましたが
でもお母さんにとったら常に大切な1年だったわけですよね。
この1年は担任もひとつだったなあ。
ため息をつきながら1年過ごされていたわけです。
だからこのことを
思い出すと心がチクチクしてしまうんですね。
相手の心の声に耳を傾けること。大切だなって思います。
その人に届ける言葉の意味をもっと丁寧に
扱っておけばよかったと思います。

みなさんも忙しさにおいかけられまくっていると思いますが、
時に立ち止まって、普段使っている言葉が
どんな意味があるのか 改めて考えてみてください。
言葉によって救われ、言葉によって思いもよらなかったとしても傷つける

言葉にならない声を
そっと聞いてみてください。


最後までお読みくださりありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?