街が自分のものになっていく感覚
ぼくが大阪から東京に引っ越して来たのが2014年の3月だから、東京での生活はまだ4年とちょっと。諸事情もありこの4年の間に3回も引っ越しをしたので、越して来てから2年経ったいまの祐天寺の街が東京に来てから最も長く住んでいる街になる。
引っ越し自体はべつに嫌いではない。居慣れない街の新しい部屋で始める生活は、自分が別人にリセットされたような気持ちになってワクワクする。よそ者としてその街をハタからそっと眺めるような、そんな感覚。
ただ、同じ街に少し長く住むようになって最近その考えがちょっとだけ変わってきた。というのも何年も同じ場所に住んでいると、自然と街に顔見知りができてくるのだ。
顔見知りといってもそんな大層な間柄じゃない。いつもランチで行く寿司屋の大将とバイトの子だったり、仕事帰りについ寄り道してチキンカツ(食べる前に大量の粗塩を振ってくれるのが美味しい)を買ってしまうカツ屋のおばちゃんだったり、通っている歯医者の先生だったり。
「お兄さん、"いつもの"でいいですか?」
「お兄ちゃん一人暮らし?身体気をつけてね!」
「今日もキックボードで来たんですか?(※)」
とりとめない会話だけど、ぼくのことをこの街の住む人間として、そしてこれからもこの街に居る人間として接してくれる人がいる。そんな時、それまでよそ者だと思っていた街が、自分のものになっていく感覚を覚える。うまく言葉にできないけど、あたたかい感情が風船のように膨らみ心の中を満たしていく。ここがぼくの街だ。
ぼくも誰かが居慣れなさを感じているのを見つけたら、そこがその人にとって自分の場所だと思えるような手助けがしたい。その時に仰々しい言葉は要らない。ただその場所に居る人として、そしてこれからもそこに居続ける一員として接すること。寿司屋の大将やカツ屋のおばちゃんのように。
もっとも、街に顔見知りが増えるのは良いことばかりじゃない。少し前から近所のコンビニに可愛いレジ打ちの女の子が入ってきたせいで、ちょっと買い物に行くときも寝癖を気にしなければならなくなった。おしゃれな帽子が欲しい。
今日の1枚
ぼくが暮らす中目黒の朝の様子を撮影。今風でおしゃれなお店と、下町っぽさが同居する良い街です。使ったフィルムはKodak UltraMax 400。
※ぼくは近所を移動するときは大抵キックボードに乗っています。