血糖値を下げるお茶の効果
暑い夏の昼下がり、冷房の効いた涼しい部屋でのんびり過ごすひととき。
口寂しくなってくるとつい、甘いアイスや炭酸飲料が欲しくなる。
何気なくテレビを点ける。グルメ番組やCMが、暑さで萎んだ食欲に火を点けてくる。
私たちの日常生活は、食の誘惑に溢れています。
不摂生を誘うものがどこにでもある私たちの環境では、健康を守るのは難しいこと。
生活習慣病の代表格である糖尿病は、現代の国民病といえます。
[糖質は心身のエネルギー源]
甘味の元である糖質は、消化されるときにブドウ糖に分解され、小腸から吸収されます。
ブドウ糖は少量でも多くのエネルギーに変換されます。
同時に、甘味を感じると神経を介して脳に刺激が伝えられ、β-エンドルフィンというホルモンが分泌されます。
β-エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれ、ストレス軽減効果や、強い快感をもたらします。
甘いものを食べると気分が良くなるのは、気のせいではありません。
一方、気温の高い夏になると体の代謝が下がり、エネルギー必要量が下がります。
するとエネルギー源になるブドウ糖が血液中に多く残ってしまいます。
夏は、既に糖尿病を患っている人はもちろん、普段から血糖値が高めの人にとっても、注意が必要な季節なのです。
[糖尿病(2型)の発症要因と症状]
糖尿病にはさまざまな種類がありますが、
糖尿病患者の90%以上は2型糖尿病だといわれています。
食事などで血糖値が上昇すると、インスリンというホルモンが分泌されます。
すると細胞が血液中の糖を取り込んでエネルギー源に利用し、血糖値が低下します。
2型糖尿病は、複数の遺伝因子に環境因子が加わり、このインスリンの分泌量低下や、効き目が悪くなる(インスリン抵抗性)ことによる高血糖状態が原因で発症します。
環境因子として、加齢、食習慣、喫煙習慣、運動不足、ストレス、肥満などが挙げられます。
血液が高血糖、または高脂肪状態だと、
インスリン分泌量低下、インスリン抵抗性の両方につながることがわかっています。
2型糖尿病の特徴は自覚症状がないことです。
病気の進行に気づくことができないまま合併症の発症に至るため、病気の急変で不意を突かれるように感じられます。
糖尿病が進行すると動脈硬化が起こり、
脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。
また、網膜症、腎症、神経障害を合併症として引き起こします。
失明、透析、壊疽による足の切断を余儀なくされるため、癒えない苦痛とともに残りの人生を過ごすことになります。
[緑茶の抗糖尿病効果]
動物実験などを通じて、茶カテキンの抗糖尿病メカニズムは下記の通り明らかになっています。
口内:糖質の消化を抑制
小腸:ブドウ糖の吸収を遅らせる
肝臓:ブドウ糖の生成(糖新生)を抑制
すい臓:インスリンを分泌するβ細胞を保護
体内の脂肪細胞:ブドウ糖の取り込み促進、インスリン抵抗性改善
また、セレノプロテインPというタンパク質は過剰になるとインスリン抵抗性を引き起こしますが、茶カテキンはL-ISTという高分子の合成を促すことで、セレノプロテインPの合成を抑えることがわかりました。(※1)
さらに、ヒトに対する緑茶の抗糖尿病効果を示す試験結果が、国内外を問わず報告されています。
文部科学省助成の、緑茶に関する大規模コホート研究によると、週に緑茶1杯以下の被験者と比べ、1日6杯以上で発症リスクが3割減少しました(※2)
イギリスの研究グループでも、緑茶抽出物カプセルの単回投与によるインスリン抵抗性の改善を示唆する研究結果が報告されています。(※3)
[おわりに]
夏の暑さは、まだ始まったばかり。
時にはお菓子やジュースに伸びる手を少し止め、冷茶の自然で優しい味わいを堪能してみてはいかがでしょうか。
出典:
※1 Mita, Y., Uchida, R., Yasuhara, S., Kishi, K., Hoshi, T., Matsuo, Y., Yokooji, T., Shirakawa, Y., Toyama, T., Urano, Y., Inada, T., Noguchi, N., Saito, Y., Identification of a novel endogenous long non-coding RNA that inhibits selenoprotein P translation, Nucleic Acids Research, 2021;, gkab498, https://doi.org/10.1093/nar/gkab498
※2 Iso, H., Date, C., Wakai, K., Fukui, M., Tamakoshi, A.; JACC Study Group. The relationship between green tea and total caffeine intake and risk for self-reported type 2 diabetes among Japanese adults. Ann Intern Med. 2006 Apr 18;144(8):554-62. doi: 10.7326/0003-4819-144-8-200604180-00005. PMID: 16618952.
※3 Venables, M., Hulston, C., Cox, H., Jeukendrup, A.. Green tea extract ingestion, fat oxidation, and glucose tolerance in healthy humans. Am J Clin Nutr. 2008 Mar;87(3):778-84. doi: 10.1093/ajcn/87.3.778. PMID: 18326618.