【図解】降圧薬/わかりやすくまとめ/国家試験問題抽出
こんにちは、病院薬剤師のいるかです。降圧薬にはたくさんの種類があると思いますが、学生さんではどれが汎用されているのか、どこが重要なのかわからないことが多いと思います。今回重要ポイントや要点をまとめ図解しました。(太字は重要だと思ってください)
試験勉強に役立つ資料や、動画、国家試験問題を抽出しました。ぜひお役立てください😌
↓文字より動画がいいという方はこちらをご覧ください😌
1.降圧薬とは
降圧薬とは、高血圧症の治療に使用される医薬品の一つで、血圧を下げることを目的としています。高血圧が続くと心筋梗塞や脳卒中などの重大な健康問題を引き起こす可能性があるため、降圧薬は非常に重要な役割を果たします。
2.降圧薬の分類
降圧薬には主に以下の5種類があります。
※他にもありますが、多すぎるので今回は割愛。
ACE阻害薬
ARB
カルシウム拮抗薬
利尿薬
βブロッカー
3.分類ごとの代表的な薬、特徴と副作用
・ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
血管を拡張して血圧を下げる作用があります。副作用として、空咳、血管浮腫が特徴的。
禁忌:妊婦、血管神経性浮腫、アフェレーシス施工中
<薬剤>
エナラプリル 心不全に適応、プロドラック・持続性
イミダプリル 空咳が少ない、プロドラック・持続性、
糖尿病性腎症に適応
カプトプリル 負荷試験に使用されることがある
リシノプリル 心不全に適応
テモカプリル
ペリンドプリル
デラプリル
キナプリル
アラセプリル
シラザプリル
ベナゼプリル
トランドラプリル
・ARB(アンギオテンシンⅡ受容体阻害薬)
血管の収縮を抑えて血圧を下げる作用があります。副作用としては、めまい、頭痛、下痢などがあります。
禁忌:妊婦
<薬剤>
ロサルタン 初のARB、作用は弱め
アジルサルタン ARBで最も強力と言われている
オルメサルタン プロドラック、降圧作用が強い
カンデサルタン 心不全に適応あり
バルサルタン
テルミサルタン 胆汁排泄型、PPARγ活性化
イルベサルタン
・カルシウム拮抗薬
血管の筋肉に作用して血管を広げ、血圧を下げる作用があります。副作用として、むくみ、頭痛、動悸などが報告されています。
禁忌:徐脈
<薬剤>
・ジヒドロピリジン系
アムロジピン 最も有名、汎用。最も長時間作用型。副作用も少ない
ニフェジピン 有名、降圧作用強い。短時間作用型だが製剤工夫により長時
間作用型製剤あり
シルニジピン L・N型Caチャネル抑制。頻脈を起こしにくく、抗蛋白尿作用
ニカルジピン 病院では点滴で汎用、脳血管選択制高い、配合変化多い
ベニジピン
アゼルニジピン
エホニジピン
ニトレンジピン
ニルバジビン
バルニジピン
フェロジピン
マニジピン
アラニジピン
・ベンゾジアゼピン系
ジルチアゼム 降圧作用は弱いが徐脈作用は強い
・利尿薬
体内の余分な水分やナトリウムを排出して血圧を下げます。副作用としては、尿量の増加、口の渇き、倦怠感などがあることがあります。
<薬剤>
・ループ利尿薬
フロセミド 利尿作用は強いが、降圧作用は弱い
・サイアザイド利尿薬
ヒドロクロロチアジド
トリクロルメチアジド
※サイアザイド類似
インダパミド
トリパミド
・K保持性利尿薬
トリアムテレン 高K注意
・βブロッカー
心拍数を減少させることで血圧を下げます。副作用としては、手足の冷え、眠気、呼吸困難などがあります。
禁忌:喘息、高度徐脈、未治療の褐色細胞腫
<薬剤>
・β1選択性
ビソプロロール 汎用、頻脈性心房細動にも使用
アテノロール 作用が強い
メトプロロール 短時間作用(長時間作用製剤あり)
ベタキソロール
アセプトロール
セリプロロール
・β1非選択性
プロプラノロール
ニプラジロール NOドナーで血管拡張作用あり
ナドロール
カルテオロール
ピンドロール
・αβ遮断薬
カルベジロール 汎用、血管拡張作用を持つ
アロチノロール 振戦に適応を持つ
アラスラモール
ベバントロール
4.作用機序
ACE阻害薬
まず、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)について説明します。RAASは、血圧や体液量を調節するための体内の重要な系です。この系は、血圧が低下したり、血液のナトリウム濃度が低下したりすると、腎臓でレニンが産生され、血液中に放出されるところから始まります。レニンは、アンジオテンシン(アンジオテンシノーゲン)を切断してアンジオテンシンIを生成します。
その後、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンIはアンジオテンシンIIへと変換されます。アンジオテンシンIIは非常に強力な血管収縮物質で、血圧を上昇させる作用を持ちます。また、アンジオテンシンIIはアルドステロンの産生を刺激します。アルドステロンは腎臓でのナトリウム再吸収とカリウム排泄を増加させ、結果として血圧を上昇させます。
次に、ACE阻害薬の作用機序について説明します。ACE阻害薬はACEを阻害することで、アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を抑制します。これにより、アンジオテンシンIIの生成が減少し、血管の収縮が抑制され、血圧が下がります。さらに、ACE阻害薬はアルドステロンの生成も抑制します。これにより、ナトリウムの再吸収が減少し、体内の液体量が減少し、結果として血圧が下がります。
ARB
ARBはアンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体を特異的に阻害します。これらの受容体は心臓、血管、腎臓、副腎皮質などに広く分布しており、アンジオテンシンIIがこれらの受容体に結合することで血管収縮、ナトリウムと水の再吸収、およびアルドステロンの分泌が促進されます。これらの過程は血圧を上昇させ、心不全を進行する役割があります。
ARBはAT1受容体に結合することでアンジオテンシンIIの作用を阻害し、これにより血管の拡張が促進され、ナトリウムと水の排泄が増加し、アルドステロンの分泌が減少します。これらの結果、血圧が低下し、心不全の進行が防がれます。
カルシウム拮抗薬
細胞膜にはカルシウムチャネルが存在し、これが開くとカルシウムイオンが細胞内へ流入します。心筋細胞や平滑筋細胞では、カルシウムイオンの増加が筋収縮を引き起こします。また、心筋ではカルシウムの流入が心拍数を増加させ、心筋の酸素需要を増加させます。
カルシウム拮抗薬はこれらのカルシウムチャネルをブロックし、カルシウムイオンの細胞内への流入を減少させます。その結果、血管の平滑筋が弛緩し、血管が拡張します。これにより血流が増加し、血圧が下降します。
ジヒドロピリジン系は主に血管を拡張する作用があり、血圧を低下させます。ベンゾジアゼピン系は主に心筋細胞のカルシウムチャネルを阻害し、心拍数を減少させます。
利尿薬
・ループ利尿薬
ループ利尿薬は腎臓のヘンレのループの太い上行脚に作用します。そこでNa/K/2Cl共輸送系を阻害しナトリウムの再吸収を阻害します。Naイオンは正常にはこの部位で再吸収され、尿中には少量しか排泄されません。ループ利尿薬がこれらのイオンの再吸収を阻害すると、大量のナトリウムが尿中に排泄されます。これにより、尿量が増加します。
・サイアザイド利尿薬
サイアザイド利尿薬は腎臓の遠位尿細管に作用します。サイアザイド利尿薬はNa/Cl共輸送体を阻害し、Na再吸収を抑制、Naの尿中への排泄を増加させます。
・K保持性利尿薬
K保持性利尿薬は腎臓の遠位尿細管・集合管に作用します。その主な作用は上皮細胞Naチャネル(ENaC)を抑制することでナトリウムの再吸収を阻害します。しかしカリウムと水素イオンの再吸収には影響を与えません。これにより、尿中のナトリウム排泄が増加し、尿量が増加します。一方で、尿中のカリウム排泄は減少します。これにより、K保持性利尿薬は他の利尿薬が引き起こす可能性のある低カリウム血症のリスクを軽減します。
βブロッカー
心臓のβ受容体を遮断することで、心拍数と心臓の拍出量を減少させ、血圧を下げます。
5.国家試験問題一例
第100回 薬理
問 256-257
55 歳女性。気管支ぜん息のため吸入ステロイド薬を用いて治療中である。高血圧症となったため、降圧薬も用いることとなった。
問 256(実務)
この患者に対して禁忌である薬剤はどれか。 1 つ選べ。
1 シルニジピン錠
2 イミダプリル塩酸塩錠
3 テルミサルタン錠
4 クロニジン塩酸塩錠
5 カルテオロール塩酸塩徐放性カプセル
問 257(薬理)
前問の薬剤のうち、血管平滑筋細胞に直接作用して血管を拡張させるのはどれか。 2 つ選べ。
1 シルニジピン錠
2 イミダプリル塩酸塩錠
3 テルミサルタン錠
4 クロニジン塩酸塩錠
5 カルテオロール塩酸塩徐放性カプセル
問256 答え:5
問257 答え:1,3
薬剤師国家試験問題 降圧薬抽出一覧
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