【わかりやすく解説】増える「無縁遺体」問題と、厚労省の対策検討
★わかりやすく解説
日本では、「無縁遺体」と呼ばれる、亡くなっても引き取り手がいない遺体が増えています。無縁遺体が増えている背景には、独り暮らしの高齢者が増加していることや、家族関係の希薄化、親族による引き取り拒否の増加が関係しています。自治体がこのような遺体の火葬や遺骨の保管を担っていますが、その手順を定めたルールやマニュアルを持つ自治体は全体の約11%にとどまることが分かり、厚生労働省が対応に乗り出しました。
★何が問題なのか?
無縁遺体に関する課題には、以下のような問題があります。
自治体の負担:自治体は遺体の火葬や親族の連絡、遺骨や遺産の管理を担いますが、手続きが煩雑で、多くの時間と費用がかかります。
親族とのトラブル:火葬後に親族が現れるケースもあり、事前の連絡不足からトラブルになることがあります。
保管場所の不足:遺骨を保管する場所が不足している自治体もあり、管理が難しくなっています。
★これを知っておくと理解が深まる
日本では、1990年に独り暮らしの65歳以上の高齢者が162万人でしたが、2020年には671万人に増加し、今後も増える見込みです。このため、今後さらに無縁遺体の増加が予想されており、自治体の負担はさらに大きくなる可能性があります。厚労省は今後、無縁遺体の取り扱いに関するガイドラインを作成し、自治体が地域の実情に応じたマニュアルを整備できるよう支援することを検討しています。
★自治体が抱える具体的な課題
厚労省の調査や自治体の意見から、無縁遺体に関する現場の困難が見えてきました。
手続きの負担:自治体は、無縁遺体が発見されると、まず親族の連絡先を調査します。場合によっては遠方の親族へも連絡を試みますが、それでも引き取り手が見つからないことが多いです。特に小規模の自治体では、こうした作業にかける人手が足りず、負担が重くなりがちです。
火葬費用や保管費用の負担:遺体の火葬や遺骨の保管にかかる費用も問題です。故人が遺したお金で賄えるケースもありますが、ない場合には自治体が費用を負担することになります。この費用が積み重なり、財政的に厳しい自治体も増えています。
保管場所の不足:遺骨の保管場所は、自治体にとって確保が難しい部分です。遺骨が増え続けると、保管スペースが不足し、管理が困難になります。特に都市部ではこの問題が顕著で、保管場所を新たに確保するのが難しい状況にあります。
親族とのトラブルリスク:火葬が終わってから親族が現れるケースもあり、その場合、「事前に知らせてもらえなかった」という理由で自治体に苦情を寄せることがあります。特に、引き取りを望まない親族でも「火葬や遺骨の管理方法に納得がいかない」として不満を訴えるケースがあり、自治体としては慎重な対応が求められます。
★厚労省の今後の方針と取り組み
厚生労働省は、専門家や葬儀業者への意見を参考にし、無縁遺体の取り扱いに関する統一的な指針を作成する方針です。この指針により、自治体ごとのばらつきを減らし、スムーズでトラブルの少ない対応ができるようにすることが目的です。また、地域ごとの文化や慣習に沿った取り扱いができるように、柔軟に対応できるマニュアル作りも進めています。
さらに、孤独死を防ぐための見守り支援や、地域社会で高齢者を支える体制づくりも併せて検討されています。これは、高齢者が生前に孤立しないよう、自治体や地域が連携して見守る仕組みを構築し、亡くなった後の問題が生じにくい環境を目指すものです。
★このニュースのQ&A
Q1. なぜ無縁遺体が増えているのですか? A1. 独り暮らしの高齢者が増え、親族との関係が希薄になったり、引き取りを拒否されるケースが増えているためです。
Q2. 無縁遺体はどのように処理されるのですか? A2. 自治体が親族を探し、引き取り手がいなければ火葬し、遺骨や遺品を保管します。費用は故人の遺産で賄われますが、足りない場合は自治体が負担します。
Q3. 厚労省が作る指針とは何ですか? A3. 無縁遺体の取り扱い方法について、全国で統一的な手順を示すための指針です。これにより自治体が対応しやすくなり、トラブルを防ぐ狙いがあります。
Q4. 今後、無縁遺体の問題はどうなりますか? A4. 独り暮らし高齢者の増加により、無縁遺体も増えると予測されています。厚労省が指針を作成し、自治体も対応を強化していく必要があるでしょう。