見出し画像

増える空家への対策は?

少子高齢化と単身世帯の増加を主因とする人口減少にともない、適正に管理されないいわゆる空家(あきや)が増加傾向にあります。埼玉県吉見町でも平成31年2月から「吉見町空家等対策計画」を進めていますが、市街化調整区域など土地利用の制限、土地家屋や地域に対する愛着、不動産関連法令での制限、支援制度の遅れから、現状を大きく改善するまでに至っていません。令和2年度のデータですが、総世帯7,877戸に対して、空家は389戸、空家率は4.9%です。この空家率は全国平均や埼玉県平均から依然低いものの、徐々に増えていっていることから、対策が急務です。

町がおこなっている対策は以下の通りです。
・固定資産税納税通知書の送付に併せて、情報を提供
・転出手続きの際に、空家になることが懸念される方に、情報を提供
・総合相談窓口の設置
・木造住宅の耐震改修への支援実施
・住宅リフォームの業者を紹介したり、費用の一部補助などの支援実施
・子育て支援や地域活性化施策による若年層の転出抑制施策
・空家問題のセミナーや相談会の実施
・既存住宅への同居や省エネ化などへの支援実施

上記に加え、町は住民に対し、適正な管理を促すようも喚起もしています。
・空家の数や状態を適切に把握するため、概ね3年に1度、実態調査を実施。
・苦情や相談の件数と内容をデータベース化
・管理不全空家を定期的に見回り
・吉見町空家等維持管理サービス事業者登録制度を活用し、相談に応じた業者を紹介する
・効果的な維持管理の情報提供
・地域が行う発生抑制のための取組と連携
・空家に関する苦情の受付
・苦情や相談に対して、所有者を調査し、改善を依頼する
・特定空家への対応

特定空家等とは、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家」(『空家等対策の推進に関する特別措置法』より)です。上記写真のような状態に、すでになったか、なったと認められる状態です。

特定空家の場合、かつて所有していた人が死亡するなどして、現在の所有者が不明である事例が多く、2023年4月施行の改正民法で、新たに所有者不明土地・建物管理制度が設けられました。これは、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地(建物)に対し、裁判所が必要と認めるとき利害関係人の求めにより、所有者不明土地(建物)管理命令を発令し、所有者不明土地(建物)管理人を選任する制度です。(改正民法264条の2以下)

この制度により、特定空家の隣家の住人の権利が侵害されるおそれがあると裁判所が認めた場合、裁判所がその不明な所有者に代わって管理人を選任し、管理を命ずることが可能になり、請求には合理的な理由が求められるものの、請求することは隣家の住人でも自治会でも、また2023年12月改正の『空家等対策の推進に関する特別措置法』では市町村長でもよいとされます。

これまで行政主導で進んできた空家対策でしたが、種々の法改正により可能なことが増え、今後は住民、自治会での議論が加速することも予想されます。ひとことに空家対策と言いましても、空家の利活用、特定空家になる前に防ぐ、空家の撤去など、いろんな側面があります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?