悔しさと切なさと心強さと
米粉で玄人跣のパンを作る友人が、
新しくできた米粉専門のベーカリー行って
美味しさとその技術の高さに「悔しくなった」とSNSで書いていて。
自分にも似たような経験があるな、と思い出した。
自分と似たジャンルでいい仕事をする人を見ると、悔しいってあるよね。
しかもああなりたいとか
あいつめ、上手くやりやがって、とか
そういう下世話な感じじゃなくて、
あーーーーー。
って。
悔しいーーー。
って。
うらやましい、とも違うんですよね。
羨ましくて悔しいわけじゃない。
もう完全に相手の仕事を認めた上での、悔しいなのかな。
だからネガティブな感情じゃなくて、あっぱれと思いながらの悔しい。
複雑か!笑
私の場合は、CMを作るお仕事をしていた当時。
そのとき付き合っていた彼と映画を観に行って。
彼は洋画が好きだけれど、
私の趣味に付き合わせて鳴り物入りの邦画を観たのです。
その映画の、面白いこと。
いや、普通に観ていたら、単に「面白い」だったんだけど、
私の場合は「なんでこの現場に私がいなかったんだろうか」っていう感じ。
CMって、今はデジタルだからそんなに差がないんだろうけれど、
当時は「フィルム」で撮るものだったから
テレビ寄りじゃなくて映画寄りのジャンルだったんですよね、
スタッフさんたちも映画の方とか多くて。
だからなのか
テレビドラマなんかじゃ「悔しい」なんて感じたことなかったのに…。
その映画の最後のエンドロールが流れ始めると同時に
それまですっかり引き込まれていた映画の世界観から
映画館に座っている自分という現実にじわじわじわじわ引き戻され、
あああああああああああああああ
悔しいいいいいいいいいいいいいいい
ってなったの。
彼氏はびっくりしてましたけど。
この感覚はわからないよね、と思って説明しなかったな、そういえば。
あの悔しいっていう感覚。
普通の悔しいじゃなくて、
もうちょっと尊いというか
心の底からのスタンディングオベーション!
だからこその悔しさっていうか。
ネガティブな感じとか
相手に対して渦巻く思い、とかじゃない、
もう、あー、乾杯!完敗!っていうのに近いのかな。
あの感覚って、
この映画のエンドロールのときに感じたものがすごく衝撃的だった。
今でも鮮明に思い出せるくらい。
悔しいし、
ドキドキするし、
切ないし、
頭殴られたみたいな衝撃だし、
鼻の穴ふくらんじゃうし、
愛しい感じ。
そして、なんだか相反しているんだけれど
どこか勇気をもらうような、
心強く感じるような。
こんな凄いものを作る人たちがいるんだ、ってことかもしれないけれど。
あのとき味わったのって
すっごく貴重な感情なんだな、と
美味しい米粉パンを食べて悶絶しながら悔しがったであろう友人の投稿を見て思い出し、
自分の心の中の「キラッ」とした何かに触れたようで
じんわり嬉しさをまとう
でもどこか切ない雨の日の午後です。