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谷口ジローの漫画を原作にしたフランスアニメ映画『神々の山嶺』 漫画版と映画版との違い

神々の山嶺(2021年製作の映画)
Le sommet des dieux/The Summit of the Gods上映日:2022年07月08日製作国:ルクセンブルクフランス上映時間:94分
監督 パトリック・インバート
脚本 マガリ・プゾル パトリック・インバート

冬山モノ好きなんです。


この映画でも話に出てくる『アイガー北壁』、恐怖のドキュメンタリー『運命を分けたザイル』など。

僕は高所恐怖症なので「落ちちゃうかも〜」ってシーンは誰よりも怖がることができます。

今作でも一番後ろの席で、1人で手に汗握って「ひゃっ!」とか「く〜〜〜」などの声が出そうになるのを必死に抑えながら見て楽しみました。

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谷口ジローの漫画版が大好きだし
実写でもなくアニメでこの恐怖や絶望感を伝えられるのかと思ってたけど、ごめんなさいすみませんでしたJe suis désolé(フランス語)!

クレバスジャンプとか文太郎ピンチとか声出そうなの必死に抑えてました。
今思い出しても手に汗かくわ。

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この映画は1998年の夢枕獏の同名小説ではなく、「谷口ジローによる同名の日本のマンガシリーズを基にした2021年のフランス語のアニメーション映画」とのこと。

なので、原作は谷口ジローの『神々の山嶺』。
『神々の山嶺』は大名作。大好き。
谷口ジローの漫画はフランスでも大人気。

ですが、割と改変があります。
全5巻の漫画を90分の映画にしてありますので、仕方ないし、改変自体は問題ない。

ただ不思議なのは、なぜかエモくない方へ改変してるような気がするんです。。

90分ですからいちいちエモいことやってる時間がなかったってことなのかもしれないんですけど。

この映画の作り手の好み、または表現したいメッセージがこの改変の中にはあったのでしょう。

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僕は夢枕獏の原作小説を読んでいないのでそれとの比較はできません。
悪しからず。


ネタバレは以下に





漫画と映画のラストの違い マロリーの写真

まず史実で言うと、
エベレストの頂上付近の北壁で見つかったマロリーの遺体からはカメラは見つからなかった。


1924年にマロリーがヒマラヤに登頂チャレンジをしたが帰って来なかった。遺体は発見されなかった。
1953年にエドモンド・ヒラリーがヒマラヤ初登頂に成功!
1999年にマロリーの遺体を発見。
マロリーのカメラに登頂写真が撮られていれば歴史は塗り替えられたが、カメラは見つからなかった。。
というのが史実。

彼の遺体(服の中)にカメラがあって登頂写真が撮影されていれば「エベレストに初登頂したのがマロニーかどうか」という議論は起きなかった。

この映画では漫画と同じくマロリーのカメラが見つかったと言う別の世界線を描いています。
そのカメラの中のフィルムを現像すればエベレストに初登頂したのがマロニーかどうか」がわかるぞ!
というのが原作漫画とこの映画の一つの物語の柱です。

***

ただ漫画のラストでは、深町がマロリーのフィルムを現像するとそこにはエベレスト頂上で撮影したマロリーの姿があった、と描かれている。

史実を知らない人にしてみたら「マロリーさん、偉業が証明されてよかったね!」と思ったことでしょう。
史実を知っていた人は「イフを描いたんですね!これこそ創作だね!」と思ったことでしょう(もしくは、じゃあ1953年の初登頂エドモンド・ヒラリーの立場は…??と心配になった人もいたかも)。

この映画では「マロリーがエベレストに登頂したかどうかを判別できるものは写っていなかった」というラストでした。

映画版は史実に近い方を選んで描いたわけですね。
うん。。。。事実そうなのでからね。。。
ただ、、、盛り上がらない。。
尻窄み感が否めない。。もちろん史実なんだし、ヒラリーの偉業を邪魔するのもどうかと思うし。。


岸文太郎キャラ変


漫画では岸文太郎が30代前半くらいだと思うんだけど、
映画ではほぼ少年。。20代前半に見える(18くらいにも見えるけどそれは流石にないんでしょう)。

映画では文太郎との北アルプスの屏風岩シーンは丁寧に描かれて、手に汗握ったし声出そうなのを必死に抑えるくらいに緊迫の素晴らしいシーンでしたが
その後の羽生のオンリー遭難シーンがだいぶ簡略化されてましたね。。

アニメならではの恐怖描写は素晴らしかったけど、
墜落などの動的な恐怖と
遭難の静的な恐怖の両面が冬山映画では描けるはずなので、もうちょいそこはじわじわ怖いシーンを作っていただきたかった。

あと、今回は文太郎が子供すぎたので、そもそもそんな子供を連れて行った羽生の責任問題という新たな罪が加わっちゃった。足手まといになるような人間を連れていくような男じゃないと思うんだけど。
(羽生の甥には甘いという人間的な面を描いたのかな)


涼子キャラ変(これは良かったのでは)

↓漫画版

画像1

↓日本映画版(尾野真千子)

画像2

↓今作

画像3


全体的にフランス人から見た日本人ってこういう感じなんだろうな。。。。と思って胸が締め付けられる思いもしましたが、ポイントはそこではなく。

むしろ原作漫画の方での問題点を今作では修正できてると思いました。

漫画では涼子のキャラって「恋愛パート入れときました感」がどうかと思うし、結局深町とデキちゃうってのも、あ、そうですか。。って感じ。。

そもそも涼子は、羽生からの手紙(仕送り)を受け取っていた(それにより深町が羽生の居所を辿ることに成功した)ということだけが必要なキャラ。

羽生の居所を辿るなら別のルートでも良かったし、いちいち女性キャラと主役が恋愛関係に陥る話の必然性もない。

なので、今作のように涼子キャラを簡略化したのは良かったかと。

120分にしても良かったよ!

90分はちょっと物足りなかったな〜。
ラストも尻窄み感が強かったし。。

120分にして北アルプス屏風岩の遭難シーンを長くして欲しかった。

あと史実に近いラストにするのであれば
映画のオリジナルとしてマロリーの人生についての描写も入れて欲しいかな。

そうすれば登頂したかどうか判別つかないマロリーの登山家人生についての悲哀を強く感じられたかも。

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