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断捨離の真実 映画『ハッピー・オールド・イヤー』
ハッピー・オールド・イヤー(2019年製作の映画)
Happy Old Year 上映日:2020年12月11日製作国:タイ上映時間:113分
この映画、素晴らしいじゃないですか!
映画の冒頭が死ぬほどつまらなくて、、
10分見るまでに2回寝ちゃったレベル。
ていうのも、
冒頭でわりと「断捨離って微妙よね…」っていう大枠のテーマが示唆されてしまうので
「え、あと2時間ずっと〝断捨離って微妙よね話〟を延々とやるの??」と思って
見るのめんどくセーってなっちゃいました。
断捨離って微妙よね…
しかししかししかし、
この映画の凄いとこ。
たしかに〝断捨離って微妙よね〟っていうテーマではあるのですが
深掘りが凄い。
あらゆる方面を掘っていく。
北欧のデザインってシンプルよね、とか
ミニマリズムって現代的でオシャレよね、とか
物や過去に縛られる人生って窮屈じゃないですか?
みないな思想をひとつひとつアイスピックでグリグリと掘っていく。。
痛い痛い痛い。。
リアル。。
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痛いくらいのリアル
主人公がひたすら断捨離するだけの話なので
リアリティ度は低いです。
働きもしないし、
とにかく主人公は記憶力がない。。
物を捨てたり
過去と決別する段階に至るまで
それにまつわることを全て忘却していて
急に記憶が蘇ることで話が進んでいく。
というファンタジックな構造なんですけど
感情がとてもリアルなので
物語全体としてはとても現実味のある、痛いくらいのリアルを見せつけられます。
これが面白い。
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チュティモンちゃんの演技
チュティモンちゃんの演技が素晴らしいですね。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』ではカリスマ性はすごかったけど
ロボット感が拭えなくて
人間らしい感情や可愛らしさが弱かった。
今作では等身大のアラサーに見えたし、
自分の理想を追求するあまりに
自分を追い込んでしまって
さらには周りまでもを引き摺り落としてしまう悲しさや可笑しみを表現していました。
けして表情豊かなタイプではないけど
だからこそ、グッと堪えても漏れてしまう感情が観客に伝わって
映画と観客が同じ気持ちになれる。
素晴らしい。
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断る 捨てる 離れる
「断捨離」ってやっぱ
断る 捨てる 離れる ですから
なかなか強烈な行為なんですよね。
覚悟ができていないと自分自身にも影響が出るし
周りも確かに微妙な気持ちにさせられる。
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主人公は
物を捨てたり過去と決別することで
楽にシンプルに生きようとするわけですが、
自分がプレゼントした物を捨てられてショックを受ける人や、
苦しくても過去の記憶の中で生きていたい人が登場してきて
主人公を揺さぶります。
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罪悪感と共に生きろ。
主人公は謝罪することで過去の過ちから逃れようとするけど
「謝るのは身勝手だ。謝った方は楽になるだろうけど、謝られた方は一生それを負うことになる。罪悪感と共に生きろ。」
と言われてしまう。
断捨離。
断り捨てて離れて楽に生きる人がいる反面、
断られた捨てられて離れられる誰かがいる。
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話としてはものすごく小さな話。
でもその分痛い痛い痛い。
ナワポン監督が製作と脚本も担当してんのか。
ナワポン監督、今後も期待大です。