あたたかい目線で見たくなる映画『かば』
かば(2021年製作の映画) 上映日:2021年07月24日製作国:日本上映時間:135分
監督 川本貴弘
脚本 川本貴弘
原作 川本貴弘
出演者 山中アラタ 折目真穂 近藤里奈 木村知貴 さくら若菜 高見こころ 石川雄也 牛丸亮 安永稔 松山歩夢
〝手のかからないおとなしい生徒たち〟の犠牲
良かった!
学級運営って〝手のかからないおとなしい生徒たち〟の犠牲で成り立ってるとこがあるのに
不良更生感動話ってのはだいたいその生徒たちをモブ扱いしてる場合が多いんだけど、
本作は後半から〝卒業したら名前も忘れられちゃうおとなしい生徒〟の話になっていくのがホントに良かった!
在学中は苦しみに気づけなかった子と
在学中に話を聞いてあげられた子が対になって描かれてた。
色んな視点があって誰も描きこぼさない!という意志を感じたしそれは映画のテーマそのもの。
僕も大阪で暮らしてたし全っ然遠い話じゃなかったので、ヒリヒリしながらも痛快な気持ちになれました
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漫画っぽい
前半に関しては
ちょっと脚本と撮影現場が乖離しているような、
シナオリや漫画だったら成立するかもしれないけど生の俳優がそれ成立させるには相当な技量が必要なのに、、
と思うシーンが多かったです。。
ラストの千本ノックのシーンでヘトヘトの野球部員とか(一応ボールをキャッチしてることになってんの?同時にボール何個飛んできてんの)、ピッチャー返しが顔面に当たって気絶する不良とか、机が降ってくる(死ぬよね)とか、
漫画っぽい演出が多くて、その度ちょっと引いてしまいました。
俳優さんの演技
ただ、良いポイントの方が多い映画だと思います。
まず俳優さんの演技がいいですね。
かば先生の山中アラタさんは、この人が暑苦しくてうっとおしかったら大失敗していたとこですが、素敵で普通の悩めるミドルエイジだったので、うまくこの主役に乗って映画を楽しむことができました。
臨時教員の折目真穂さんも素晴らしくて、声がよく通って気持ちがいいし、キメ顔もいいし、フルスイングもいいし、何よりビンタが速くてびっくり痛快。。「この子らに会って3日で自分が教師やってこと忘れたわっ!」ってセリフもかっこよく決まってました。
おとなしい生徒代表のさくら若菜さんですよね。湿っぽく過剰な演技をしそうな役でしたけど、そういう感じもなく存在感もあって素晴らしかった。
助演の皆さんもそれぞれ良かったけど、お母さん役の皷美佳さんが特に。声もいいし、動きもいいし、面白いし、憎たらしいのに憎めないし。面白くて素晴らしい演技。皷美佳さんを楽しみに観るだけでも十分な映画。
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だらだと長いシーンや漫画っぽいシーンもあるんだけど、
逆にどうしたの?っていうくらいにサッと切り上げるシーンや
ホラー映画のフラッシュバックくらいの短い秒数の顔の切り返しがあったりして
「ギョッ」とさせられます。いい意味で。割と好きです。
カメラのブレとか、、どこまで意図してやっているのかわかりませんが、、面白かったです。
セリフで語るのではなく、映像や演技で語らせるシーンも多くあって
とくに要所要所はセリフを少なめにしていたので
とても好みに合っていました。
肉じゃがにはニンニクをすりおろしてたのかな?
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大阪の鶴見橋中学の教員の方が映画制作に多く関わっていることから鑑みるに、
めちゃくちゃ多い情報を2時間くらいに入れ込まなきゃいけなかったのでしょう。
いろんな人物をいろんな視点で描く必要があったので。
思い返してみるともっっっっのすごい情報量(問題を抱えた人物量)を
平行して語る脚本が素晴らしかったです。