親ではなく、子どもにお金をあげる、という提案
児童手当や扶養控除というかたちで親にお金をあげても、それが子どものために使われる保証はありません。
ギャンブルで使いこんでしまうかもしれません。また悪気はなくてもやりくり下手で日々の出費に消えてしまい、学費に回らない可能性もあります。
だからといって児童手当の使途を追及するのはプライバシー侵害なうえに行政コストがかさむだけです。
それなら、直接子どもにお金をあげればいい、という提案です。
いわば子ども限定のベーシックインカムです。
ベーシックインカムについては「労働意欲をそぐ」という批判がついて回りますが(実際はそれを否定する検証結果もあるようですが)、子どもはもともと労働しないのでその心配はありません。
具体的な運用方法
子どもが生まれたら同時に専用の口座が開設されます。
そこに、たとえば2万5千円が毎月振り込まれます。
子どもが成人する18歳までには540万円になる計算です。
ここで重要なのは、きょうだい数や親の所得に関係なく、すべての子どもに平等な金額が支払われることです。
その代わり児童手当や扶養控除は廃止し、親にはお金をあげません。
それでは生活できない、という世帯は別途生活保護を申請してもらいます。
またこの口座は振込専用で、子どもが成人するまでいっさい引き出すことができません。成人後も引き出せるのは子ども本人だけで、保護者であっても代理で引き出すことはできません。なんなら口座番号も親には知らせず、窓口に本人が来ないと使えないようにしてもよいです。
もし子ども本人が死亡した場合、全額国に返金されます(そうしないと遺産目当てに子どもの殺害が企てられる可能性があるからです)。
制度の目的
この制度最大のメリットは、毒親対策です。
児童手当や扶養控除では、もっとも支援が必要な、親が親として機能していなかったり、そもそも親がいなかったりする子どもたちにお金が回りません。
すべての子どもが「君には18歳になったら540万円入るから、自分で学費が払えるよ」と言い聞かされて育つことは、困窮世帯の子や虐待を受けている子には大きな希望となりえます。それを前提に進路が描けるからです。
またお金があっても親が反対したために希望する道に進めない、たとえば地方在住で勉強のできる女の子が東大を志望しても、親から「女にそんな高学歴はいらない、地元の大学に行け」と言われて断念するといった系の差別も防げます。
もう一つのメリットは、公平性です。
現行の児童手当や扶養控除では親の所得が一定以上だともらえないだの共働きだと損だの第3子は増えるだの、どう調整しても不満が出ます。
政府が特定の生き方を奨励しているかのようですし、制度に踊らされて子どもを産む数を調整したり働き方を変えるのもおかしな話です。
すべての子どもに平等に支給されたほうがシンプルで、余計なことを気にせずに済みます。
また大学無償化みたいな支援では「そんな10年後とかに政府の方針がどうなってるかわかるもんかよ」という気分になりますが、この方式では現時点でいくら貯まっていると通知されるので信憑性もあります。
懸念事項への対策
この「子ども限定ベーシックインカム」は学費として使われることが原則ですが、進学を希望しない子に対して不公平にならないように、起業資金や住宅取得資金として使えるようにしてもよいと思います。
ただし気を付けないと悪徳業者に18歳の子が食い物にされる可能性があるので、学費以外の転用については審査を厳重にする必要がありそうです。
例として挙げた540万円が金額として妥当なのかは議論の余地があるでしょうが、国公立大なら一人暮らしだとしてもフォローできそうですし、私立で一人暮らしだとしても、医学部とかでない限りアルバイトで何とかまかなえるのではないでしょうか。奨学金というかたちで人生のスタート地点から借金を背負わせるよりは、負担をかなり軽減できるはずです。
ある程度以上の経済力で良心的な親御さんであれば、それくらいの金額はもともと用意してあげられるのかもしれませんが、児童手当と扶養控除を差し引いても損にはならないでしょうし、自分で教育資金を積み立てる手間が省けるぶんだけお得ではないでしょうか。
あとは財源ですが、必要なら、富裕層に対して所得税や相続税を増税してもいいのではないでしょうか。そのぶんお子さんに支給されているわけですし。
まとめ
すべての若者に18歳時点で540万円持たせてあげられることは、確実に人生の選択肢を増やすことになると思います。
親の経済力や意向しだいで、将来の可能性を絶たれる子どもがいないようにと願っています。