体を鍛えるより使う
運動は体によく健康寿命を延ばすために必要、ということは、新聞テレビなどで頻繁に目にするようになりました。
当院でも運動を積極的に勧めていますし、運動療法への取り組みも行っています。
今回は体を鍛えるという意識の持ち方について勉強したいと思います。
そもそも体を鍛えるとはどういうことでしょうか?
筋力を強くする(強い力を発揮する)
持久力を向上させる(長い距離を歩く)
疲れにくくする
免疫力を高める…など、
しんどいことをやって、体に負荷をかけ、それに耐えられるようになることで、身体機能が上がるというイメージだと思います。
負荷をかけ、身体機能が上がることで、できなかったことができるようになり、行けなかったところへ行けるようになったりします。
昨今問題になっている、フレイルやサルコペニアという状態においては、筋肉を鍛えるというよりも、むしろ筋肉を落とさないように食い止めるという考え方も広まっています。
つまり、今の状態をできだけ維持して、体力や筋力の低下を防ぎ、日常生活を維持するという考え方です。
この場合は鍛えて機能を向上させるという目的ではないため、方法を変えることができます。
その時大切なことは“鍛える”という意識よりも“使う”という意識を持つことです。
つまり日常生活の中においてしっかり筋肉や体を使うということです。
筋力トレーニングやウォーキングの時間取らなくても筋力を落とさないという目的であれば日常生活をしっかり送っている中でも十分維持はできます。むしろ日常生活の中で筋肉や関節の使用頻度が減ってしまうことこそが筋肉量や筋力の低下につながります。
筋肉を使うということを意識すれば、新たに運動の時間を取る必要もないですし、トレーニング器具を買ったり、フィットネスクラブに通う必要もありません。
大切なのは工夫です。
例えばエレベーターを使用せず階段にするだけでも筋力維持には効果的です。
自転車で行っている買い物を歩きに変える。
床の拭き掃除を棒ではなく手で行う。
便利な物を使わずに過ごすと、以外と体を使うものです。
この点のメリットは日常生活に必要な筋力を維持できるという点です。
お金がかからないのもメリットかもしれません。
デメリットは痛みや生活レベルが低下してしまっている場合にはなかなか実施できない点です。
その場合は他の方法を模索して、できるだけ体に負担なく動作ができるように身のこなしを変えたり、やり方を調整する必要があります。
そのあたりのアイデアは理学療法士が持ち合わせているため、当院通院中でお困りの方はご相談ください。
トレーニングやその他の運動は、あえて行わなければならないという意識で行うため、始められなかったり、続けられなかったりします。
しかし日常生活の方法を変えることであれば、すぐにでも始められます。
運動は薬と同じように、治療の一環として広まっています。
自分のさじ加減や判断で終了したり、間違った方法で継続される方もおられます。
家事や掃除、買い物など、日常生活の中での動きをしっかり行い、便利過ぎる物はできるだけ使わず、人間の本来持っている能力を発揮できるように意識していきましょう。
そこで得られる物こそが本来の体であり、本来の能力であると考えています。
筋力だけではなく、世の中が便利になることと引き換えに人間はあらゆる能力を退化させています。
そのことに気づき、見直すことで改善される症状や身体機能があるかもしれません。
今後は生活の中での動き方や身のこなしについても発信できればと考えています。
ふくいクリニックのホームページ
毎月当院スタッフが行っている運動を画像付きで掲載しています