自治体の健康管理システム
健康かるてシステムに代表される健康管理システムが自治体に導入されています。それらのシステムを開発している側ならびに具体的なシステム提供しているベンダー側から見た取り組みの現状を整理しています。
自治体の公費医療費助成情報や住民のマイナンバーを予め登録しておいて、利用者の承諾の元に自治体が保有する住民の個人情報など付随情報を連携して医療・介護機関や複数の自治体間で情報共有する仕組みが準備されています。
果たして私たちは個人情報の事前登録を許諾したでしょうか。医療費助成やポイント付与を餌に意図しない許諾を誘導されないでしょうか。許諾した個人情報やそれに付随する情報は医療・介護機関で他の目的で利用されることはないでしょうか。システムは外部ハッキングあるいは内部の違法な情報漏洩に耐えるものになっているでしょうか。
ひとつ前の記事「モラルと治安の崩壊を仕掛けるヤツラ」も参考にご覧になって考えてみて下さい。
なお、ここで取り上げているPublic Medical Hubと連動して構築されている自治体の健康管理システムは、ガバメントクラウドと呼ばれる標準化対象20業務のシステムの一つと位置付けられています。
Public Medical Hub
自治体の各業務システム(健康管理システムなど)とPMH(Public Medical Hub)を連動し、公費医療費助情報とマイナンバーを登録することで、医療機関等と受給者において受給者証情報を閲覧できるようにする情報連携基盤が開発されています。
電子版母子健康手帳(スマートフォンの母子手帳アプリ)を活用することで、スマートフォンでの健診受診・健診結果の確認やプッシュ型支援、里帰りの際の煩雑な手続きの改善等を実現し、住民の利便性の向上や必要な支援へのつなぎ、自治体・医療機関の事務負担の軽減、母子保健情報の利活用を目指しています。
令和6年10月30日の第111回社会保障審議会医療部会(資料3-2参照)によると、令和5年度は、16自治体87医療機関・薬局を選定し、医療費助成の分野は令和6年3月から事業を開始し、予防接種・母子保健分野は、令和6年夏頃を目途として順次開始予定しています。
令和6年度は、医療費助成分野で更に180自治体を選定し、累計で183自治体で先行実施。補助金により医療機関・薬局も拡大していく予定です。予防接種・母子保健分野では、予防接種B類の追加、里帰り出産への対応等のPMHの機能拡充を予定しています。
健康かるて
健康かるてシステムの提供をしているベンダーの一つが両備システムズです。全国700団体で導入実績があります。
トーテックアメニティは健康かるてを自治体などの要望に沿ってカスタマイズするシステム構築サービスを提供しています。
LifeMark HealthAssist
1990年代より富士通が構築・運営してきた健康情報管理システムや、医療分野におけるクラウド製品の実績を活用して、すべての方が安心して暮らせる健康長寿社会づくりを追求しています。病院、診療所、地域医療、介護事業者、健康情報と細分化し、自治体だけではなく各事業体に特化したシステムを開発・提供しています。ライフマークヘルスアシスト(LifeMark HealthAssist)は健康情報ソリューションの一つであり、2020年4月に提供が開始された新しいシステムです。
例えばさいたま市では保健システムや健康マイレージシステムの構築にLifeMark HealthAssistなどが採用されています。
アスリブ
NTTデータは自治体住民の健康寿命の延伸を支援する健康サポートアプリ「アスリブ」を提供しています。このアプリは、自治体と住民の間で健康情報を共有し、健康寿命の延伸を支援するためのツールです。
NTTデータはTogether We Fight Cancer & CVD(Cardiovascular Disease)「ともに、がんと循環器疾患に立ち向かおう!」プロジェクトで自治体・学校・企業など(広島県、広島市、広島国際大学、株式会社もみじ銀行、マイライフ株式会社、ノバルティス ファーマ株式会社、DeSCヘルスケア株式会社、当社)が協働し、地域共創で予防啓発の取り組みを進めています。
PHRアプリ
デジタルを活用して健康・医療・ 介護に関する患者の情報を統合的に収集 し、一元的に保存したデータで、それを 一元管理するアプリケーションサービス を PHR (Personal Health Record)アプリと呼んでいます。
PSP株式会社はPHR(Personal Health Record)アプリ「NOBORI」とデジタル庁が運営するマイナポータルとの連携を2022年5月31日に開始しました。これにより行政機関等で管理されている医療情報を取得し、NOBORIでデータの確認・保管を行うことができるようになっています。連携対象のデータは「予防接種情報」「妊産婦・乳児・幼児健康診断情報」「特定健診情報」「薬剤情報」「医療費情報」となっています。
NOBORIでこれまで自社業務システムで管理してきた電子カルテ、通院履歴、お薬、検査結果、検査画像、健康診断、血圧、歩数等のライフログなどの医療情報と、マイナポータルから連携したデータを合わせて管理することで、個人の健康管理促進、そして利用者 / 医療関係者 / 行政機関等の情報連携、コミュニケーションの円滑化に寄与しています。
harmo株式会社ではharmoワクチンケアという利用者が予防接種情報を記録・管理できるサービスを提供しています。自己情報の取得を行うことで、マイナポータルを介して、各自治体が保有する公的な、信頼性の担保された予防接種記録を取得することができ、手入力の手間がなくなります。
2021年7月リリースのワクチン接種した方が使用する一般ユーザ向けアプリと、2024.10.8リリースした、医療機関の方が使用する医療機関向けアプリが相互に連携することで、医療従事者が正確な接種記録を手間なく管理することをサポートし、接種間違いの実効的な予防を実現します。
令和6年3月時点で、医療保険情報取得APIを活用する事業者は次の通りとなっています。
医療保険情報取得APIを利用することで、利用者の同意を得た上で、次の項目の医療保険情報を外部のWebサービス提供者へ提供することができるようになっています。
デジタル庁では、自治体が健康管理を含む各種サービスの情報を得られるようデジタル田園都市国家構想並びに、Digi田甲子園の受賞サービス、関係府省庁の施策の関与等のあるデジタル実装の優良事例を、横展開を加速化するため、どの自治体でも活用できる、サービスをカタログ化して公開しています。