マンチェスター・シティvsチェルシー~プレミアリーグ第26節マッチレビュー~

1.はじめに

fukuharaです。

今回はマンチェスター・シティとチェルシーの試合を観ていきます。

2.スターティングイレブン

<マンチェスター・シティ>
GKエデルソン
DFウォーカー、ストーンズ、ラポルテ、ジンチェンコ
MFギュンドアン、フェルナンジーニョ、デ・ブルイネ
FWベルナルド・シウバ、アグエロ、スターリング
<チェルシー>
GKケパ
DFアスピリクエタ、リュディガー、ダビド・ルイス、アロンソ
MFカンテ、ジョルジーニョ、バークリー
FWペドロ、イグアイン、アザール

3.チェルシーの守備の狙い

チェルシーのボール非保持は面白いです。
4-5-1をセットした後にIHが前進してプレスをかけます。
アンカー脇空いちゃうじゃん!と思ったらジョルジーニョはスペースを埋める、カバーリング要素の強いアンカーではありませんでした。稼動型です。

チェルシーのボール非保持

4-1-4-1→4-4-2変換
①IHが前進してCBにプレス。誘導します。
②もう片方のCBはCFがついています。
③SBはSHがついています。
④ジョルジーニョが誘導先を捕まえに行きます。

よくジョルジーニョに対してソファの幅を守らせようという言葉を使いますね。
ちゃんと読んだことないけどジョルジーニョの守備範囲が狭い!という悪口だと思っていましたが、そんな事はありませんでした。
むしろかなり広いです。広くなってはいけないのかもしれないですけど。

サッリチェルシーは2ライン間を空けてでも前で奪いたいチームだという事が分かります。
ボール保持を目指すチームにはよくある守備の理想ですね。

4.シティのチェルシー攻略

しかしサッリのボール非保持のプランは崩れます。
守備規準を見抜かれていました。

偽SB
①SBがHSに入ってくる。

②SHが守備の規準を失い彷徨う。
③守備規準通りIHが前進してプレスをかける。
④パスコースが限定できていないので塞ぐべきギャップが定まらない。

この流れでアンカー脇を使われ、ジョルジーニョが与えたFKから開始早々失点してしまいます。

ポイントは遮断というところです。
イグアインしかり、アザールやペドロしかり、FWの守備タスクはあくまで遮断。それ以上のことは戦術的には恐らく求められていません。
なので遊ばせられると規準が狂います。
今回遊ばせられたWGはエリアを守るべきなのか。IHの代わりにプレスにいくべきなのか。

僕はついていくべきだったと思いますが、同数プレスをかけてもリセットされるだけのような気がするので、リセットされた後を設計できていないと厳しかったと思います。

グアルディオラはこのタスクをこなさせるためにハーフスペースでもプレーできるジンチェンコ&ウォーカーを起用したと思いますが、試合後に予想はできても試合前は難しいですね。
ラポルテがSBならプレーエリアがジンチェンコに比べて狭いので、ペドロの遮断で何とかなったかもしれませんし。

5.チェルシーの守備はまだまだ未整理?

先ほどはWGがミドルサードで規準を狂わされましたが他のエリアでも狂わされています。

アタッキングサード

GKのビルドアップ参加
①3バック化したGKにCFがプレス+戻しのパスコースを遮断。
②IHがCBへプレスをかける。
③WGは縦パスは消したものの、パスコースを限定できていない。
④パスコースが限定できていないので塞ぐべきギャップが定まらない。

これはミドルサードで上手く嵌めれた時にシティがリセットすると何度か見られた光景です。
基本的にはIHに通されて疑似カウンター状態になっていました。

ミドルサード

WGがSBと少し距離を置くように修正。

あとはIHがカバーシャドウで消しながらプレスすれば盤面上はいけそうな気がしますが上手くいきません。
カバーシャドウはDF側が背中で消しているとも考えられますし、OF側がわざと隠れてスペースを空けているとも考えられます。
このIHを前進させる守備のやり方は普段試合を見ていない僕でも知っているくらい、サッリチェルシーの特徴的な部分なので、今回出し手として優れたストーンズ・ラポルテをCBに置いたのもこれを狙っていたかもしれませんね。

疑問点

全く分からなかったのはCBが意地でも迎撃にでなかったことと、ラインを上げる仕草をしなかった事。
ピン止めといえば簡単なんですけども、止まりすぎな気がしました。
画面に映っていない所でシティのFWと駆け引きがあったのか。
それともサッリの優先順位は最終ラインで必ず数的優位を作ることなのか。
CBを迎撃させれば殴り合いにはなったかもしれませんが、殴られ続けるという事はなかったように思うので疑問点です。

→こういう動きをしていたらしいです。見ていませんでした。

シティの徹底した左ハーフスペース活用。マンチェスター・シティ 対 チェルシー レビュー【2018/19プレミア第26節】
polestarさん(@lovefootball216)

6.マンチェスター・シティの守備との違い

さて、ここまで読んでいて気付いた方がいると思いますが、実はこのIHが前進する守備はマンチェスター・シティも同じです。
シティも同様にWGを下げた4-5-1をセット。そこからIHを前進させます。
それではチェルシーとマンチェスター・シティ、いったい何が違うのでしょうか。

IHのセットはDHの脇からスタートします。
CFのプレス+誘導をスイッチにボールサイドのIHがプレスをかけます。
WGの立ち位置はIHの脇からスタート。
カバーシャドウで消しながらSBへプレッシャー。
空いたIHはDHがスライドして対応します。時折2ライン間で受けようとしていた選手をフェルナンジーニョが潰していたのは印象的だったと思います。

捨てるポジションもしっかりを意思統一されていて、逆サイドの大外は捨てます。
ここで大事なのはサイドチェンジされた後の振舞いです。
シティは無暗にプレスをかけず、一度セットされるまではいきません。
目先の数mの前進よりも、前線を置き去りにされることを拒んでいる印象を受けますね。

これはGKへのバックパス後のプレッシャーでも感じることです。
すぐにジャンプする場面はありませんでした。
必ずGKにプレッシャーをかけるための配置にしてからプレスをしていましたね。
その陣形がどうなっているのはかよく分かりませんでしたけど。

以上のことから、試合中にこんなにきれいな形になることはありませんが、ミドルサードでは瞬間的にこのような違いが生まれています。

中央3レーンでチェルシーは3vs2の数的不利。

中央3レーンでシティは3vs3の数的同数。

ボールの引き出し方が上手なシティの中盤に数的不利は厳しい状況で、レイヤーをスキップされていました。
よくSNS上ではジョルジーニョの守備が悪いというのを見かけますが、この状態で個人の守備でどうこうするのは厳しいというのが僕の考えです。

じゃあチェルシーがシティのように守ればいいじゃん!と言うのも簡単ですが、実際はアザールとペドロといったWGのプレーヤーにIHの役割をさせるのは高負荷です。
この役割は走って死んでを許容しているので選手の思考やベンチ層も大切になります。

SNS上では無理だと分かっていてボール非保持を変えないサッリにも批判がきていますが、サッリが僕たち程度に分かる事に気づかないわけがありません。

マンチェスター・シティ対ナポリ ~グアルディオラのナポリ対策(失敗!?)VOL1~
らいかーるとさん(@qwertyuiiopasd)

ナポリ時代のシティ戦ではよりWGを4-4-2のSHのように絞らせたりしていたようなので、こればかりは今いる選手では現状はできず落とし込み中。
もしくは別の方法を模索中といったところだと思います。

7.チェルシーのボール保持

チェルシーのボール保持は上記のシティの守備により苦しめられていました。
考えられるのはIHの2人が2ライン間でボールを引き出すことが苦手?もしくはビルドアップに苦戦していると降りて受けようとして余計苦しくなることだと思いましたが、その結果として面白い現象が起きます。

フリーマンのアザールです。
大外で張っているだけではなく中へ入ってくる自由も認められているアザールですが、シティが前からしっかり嵌めようとしている事で浮く事ができています。
この立ち位置で受けるとSBとCB、どちらが行く?という問題が発生しますし、仮にプレッシャーが定まったところでアザールはMFとDFに挟まれない限りボールを失いません。

しかしここからがチェルシーの抱える矛盾だと思います。

左サイドでゲームを作る矛盾
①厚みを出すとして、SBが大外で高い位置をとる。
②攻撃的なタスクを持つIHバークリーがネガティブトランジションに備えた立ち位置をとらないといけない。
③代わりに攻撃でタククを振るう、リセットをした時ライン間で立ち位置をとるのはカンテ。
④ネガティブトランジションに強みを持つのは本来はカンテだし、攻撃面で強みを出せるのは本来はバークリー。

ボール非保持でもそうですが、やりたいこと・やれることに対しての矛盾が大きなチェルシー。そういった印象です。

8.まとめ

結果は6-0でマンチェスター・シティが勝ちました。
たぶん多くの人が書きますけど、見直せば見直すほど同じ感想を持つ試合なのかなと思います。構造的に殴られてたので。
なので試合以外の事をまとめでは書きます。

サッカーというスポーツは判断ミスをすればするほど勝利から遠ざかります。それは試合前から始まっていて方針だったり、補強だったり、スカウティングだったり、練習だったり、噛み合わせだったり、プレーの選択だったり。

この試合で言えばほとんどシティの勝利です。
長年ボールを動かすサッカーを目指しているので理念のあった監督を連れてきて、対応できる選手もたくさんいて、だからこそ良い分析、いい練習ができて、噛み合わせをうまくズラして、いいプレーの選択ができる。
クラブの勝利だと思います。

じゃあチェルシーは敗北かというと、この試合で言えば敗北ですがクラブの敗北ではありません。
ボールを動かすサッカーを目指して監督を連れてきて、何人かの対応できる選手を連れてきた。やっとはじまったばかりです。
なので勝利か敗北かはまだ分かりません。
もし敗北するとしたら、この結果で受けて、やたらヒートアップして、サッリを解任して、獲得した選手に合わないサッカーをやることだと思います。

試合を観ていていくつかの矛盾点がありましたが、それらも現状戦力・期間ではクリアできない問題だと思います。
勝利を積み重ねてCL出場権を何とか取り続ける。お金を手にする。移籍ガチャを回して監督に合う選手をそろえていく。ゲームの基本ですね。
これが我慢できれば強くなるかは分かりませんけど、魅力的なチームになると思います。

一方で強くはさせまい!と場外で暗躍している人たちもいます。

元リヴァプールのキャラ〇ーさんは良い例です。
ついでにエメリ政権もぶっ壊そうとしている頭のいい人です。
チェルシーとアーセナルの1年を無駄にさせようとしています。

この拍手を見る限りチェルシーのサポーターは素敵ですね。
キャ〇ガーさんのような言葉にSNSとかで踊らされて、オーナーが解任に動くのが最悪のケースです。
サポーターもオーナーも「サッリ監督が1年目」ではなく「ボールを動かすフットボールを目指して1年目」、「まだまだ上位」だという事実をしっかり認めることが大切です。
自分たちは勝っても負けてもチームについていく、チームそのものだという事を忘れずに。

欧州一魅力的なフットボールを悔しい気持ちでいっぱいの中、最高の拍手をしていたサポーターたちに披露してくれる未来を期待します。

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