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読書メモ・『バカと無知~ 人間、この不都合な生き物』 橘 玲著 2022年10月20日発行

科学的知見から、「きれいごと 社会」の残酷すぎる真実を解き明かすことが得意な 橘 玲さんに期待して読んでみた。 一部だけど印象に残ったのは以下の 3つ。

1.まず知ってるってどういうことか
「知ってることを知ってる」っていうのはもちろん、2番目で「知らないことを知っている」はいわゆる無知の知のようでもあるけどそうじゃなくて、科学とテクノロジーの発達でうまく 正確に説明はできないけれども、スマホでなぜメールが送れるかを知っているというようなこと。3番目「知らないことは知らない」。4つ目は「知ってることを知らない」というのは、天才が思いつくようなこと。例えばモーツァルトが作曲した曲って、モーツァルトが曲を作るわけだから、それも 実はそれまで潜在的にはその旋律を知っていたんだけど、作曲するまでは知らなかったのが顕在化されて現れる。

2.バカに引きずられるのを避けるには
これちょっと辛辣な話なんだけど、バカを排除するのが一番の良い方策。バカって自分を過大評価する、これに反して賢い人っていうのは自分を過小評価する。そうすると複数で集まってその複数人を単純に平均すると、バカに引きずられるから。
その過大評価・過小評価する理由は、評価基準の原則は昔から能力のあるものが高い地位を獲得する原則だったから。自分に能力がないことを他者に知られるのは致命的だから能力を大幅に過大評価するようになる。一方 優れた能力があることを他者に知られることもリスク、なぜならば 権力者が真っ先に排除しようとするのは 将来のライバルになりそうな有能なものだから、能力を過小評価して共同体の中で極端に目立つことを避けようとする。自分を大きく過大評価してみせるのも、能ある鷹が爪を隠すのも生き延びるために脳に埋め込まれた戦略。 

そこから発生して、シリコンバレーも賢い方法で、バックグラウンド において多様性に富んでいる賢い人だけが集まってる(賢い人だけっていう部分では多様性はないけど)からそのアイデアがぶつかり合うと大きなイノベーションにつながっている。反対に古い体質の日本企業には、上記の「平均効果」が生じてしまっている。
ワンマン経営者が成功する可能性が高いのも、バカに引きずられる効果を避けられているからかもしれない。

3.ファーストフード店や ファミレス店の店員から聞かれる言葉 「よろしかったでしょうか」のような 過剰な敬語を使うようになった理由 
会社でも上司が部下に敬語で話しかけるのが当たり前になり今や全ての会話が相手の自尊心を傷つけないように細心の注意を払って行われている。逆に アメリカではこれが行き過ぎて 平社員が上司 ばかりか 社長までも 名前で呼び捨てするという 逆の方向・カジュアル化が 起きており、形式上の平等が達成されている。私がいた会社でも昔 一時期だけ全ての人に対して「さん付け運動」というのがあって、これはいいものだなって思ったけれども 続きませんでした。  ただ これらも相手の反応が目に見えるから生じるこている。
昨今の SNS では 匿名で意見が交換され、向こう側に人格を想像することが難しい。歴史的に見ても人間は匿名の影に隠れると限りなく残酷になる。戦場で想像を絶する残虐行為が行われるのは、軍隊が個人ではなく 「匿名の兵士の集団」だからだそう。自分は安全な場所にいながら相手を一方的に攻撃できるという、言論空間のプラットフォームとしては最悪の環境を作り出している。 

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