プロ連盟に訴えられる可能性は?
数年前の記事の再録です。どこに掲載したものかは事情により伏せます。読んだことある方は間違えて購入なさらないようご注意ください。
状況としては、以前は
第30期十段戦堀内正人失格事件を中心に、プロ連盟を批判してた福地
VS
誹謗中傷は止めるようにと抗議文書を送ってきたプロ連盟
の間で、緊迫した空気がありました。
参考:日本プロ麻雀連盟の試合で堀内正人が悪質極まりない行為としてプロ失格処分を受ける
その時期、プロ連盟では「誰か弁護士の知り合いはいないでしょうか?」という一斉メールが回っていたこともありました。
この記事は、そんな時期に、とある弁護士に、ぼくがプロ連盟から訴えられることはありえるか、訴えられたときに勝てる見込みは?などについて、語っていただいたことをまとめたもの。
これを読むと、名誉棄損で訴えられることが怖くなくなります。
なお、プロ連盟とはその後、多少は融和してます(たぶん)。
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名誉毀損のポイントは2つ
弁 今日は、ぼくがプロ連盟から法律相談を受けたという状況を仮定します。にっくき福地をこらしめたいというご相談、ぼくも気合を入れてアドバイスします。
――はい、さっそくいきましょう(笑)。
弁 本件に関しては、やるんだったら名誉毀損です。訴えることが可能か不可能かということでしたら、訴えるくらいは可能です。どういう主張をするかというと、福地さんが過去に書いてきたことで、プロ連盟の社会的評価が低下していると。そう主張していくことになりますね。
――漠然と社会的評価が低下しているといっても弱くないですか? プロ連盟の受験者が何人減ったとか、売り上げがいくら減ったみたいな数値がないと。
弁 それはあとから言いますけど、損害金の問題になってきますね。名誉毀損って仮に勝ったとしても安いんですよ。せいぜい数十万円、ざっくり言って30~50万くらいです。この件はがんばっても100万は取れないかなぁと。福地さんからしたら、高レート麻雀でひと晩に負けるくらいの金額なんじゃないですか(笑)。
――最高で78万円までしか負けたことないので、すごい大敗です(笑)。
弁 しかも前提として、訴えて勝つのはかなり難しいかもしれません。というのは名誉毀損には、ポイントが2つあるんです。ひとつは、事実の指摘を含まない単なる意見や論評は、原則として名誉毀損にならないということです。これは一番大事なことです。
たとえばですけど、福地さんが「小島武夫の麻雀は古い」と言ったとします。でもこれは単なる意見ですから、名誉毀損になりません。
――ということは、ネマタ本2の帯で「旧式麻雀のプロ連盟」って書いてますけど、これは名誉毀損にならないんですか?
『もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編』(洋泉社)通称ネマタ本2。発売前から帯が話題になり、その影響もあってか発売前重版になった。
弁 それは福地さんが古臭い麻雀だなぁって思うということで論評です。名誉毀損にはなりませんね。萎縮せずに意見を言い合うことは民主主義の基盤なので、表現の自由は最大限に保障されているんですよ。人を批判する意見であっても、それが意見である限りは名誉毀損にはなりません。
――なるほど。
公益性があるか
弁 その一方で、たとえば福地さんが「プロ連盟の〇〇は借金まみれだ」と言ったとしましょう。これは「借金がある」という事実を指摘していますよね。だから名誉毀損になる可能性があります。
――事実を言っちゃいけないんですか?
弁 ここで、もうひとつのポイントです。それは公益性があるかです。事実を指摘したとしても、その目的に公益性があって、指摘した事実が真実なら名誉毀損になりません。
――公益性のない真実を指摘するとヤバイんですか?
弁 自分の恨みみたいな個人的な理由から、嘘の事実を語るとアウトです。言ったことが真実かどうかも問題になりますけど、真実ならOKというわけではなく、公益性がない場合は真実であっても名誉毀損になることがあります。
たとえば、あの人はフーゾクにハマっているという発言は、真実であっても公益性がないですよね。私生活ネタは公共性がないと言われやすく、名誉毀損になりやすいです。
――それが本当であっても名誉毀損になるんですか?
弁 公益性がないので、その人が本当にフーゾクにハマってても駄目ですね。離婚とか、浮気とか、不倫とか、キャバクラ通いとか、そういう話は名誉毀損になりやすいんですよ。
テレビに出ている弁護士が、週刊誌にキャバクラ通いをすっぱ抜かれ、オキニの娘に「乳首さわらせて」と迫ったっていう記事を書かれたんですよ。それを名誉毀損で訴えて、その弁護士は真面目キャラで売ってる人だったんで、30万が認められました。ただ、キャバクラ通い自体は真実だったんで賠償金は安かった。キャバクラ通いは認められるが乳首云々を言った事実は認められない、なんて間抜けな判決文になっています。
――プロ連盟の下半身ネタはほんとひどいので、うっかり書いたりするとマズイんですね。昔のことですけど、いい歳したオヤジが未成年を彼女にしてたりとか(笑)。
※昔の話です。最近は世間並になってきた印象です。
弁 それはプロ連盟に対する名誉毀損じゃなく、個人に対する名誉毀損になりますね。こっちの方が認められやすいんですよ。そもそも名誉って個人のものですからね。プロ連盟からすると、福地さんがそういうことを言い出したら、じゃあ訴訟をやりましょうかってことになります。
――森山さんは下半身がきれいなので、そこらへんは大丈夫ですね。たぶん(笑)。
弁 元のイメージがどうかは関係してきます。たとえば小島さんは豪快なイメージがありますから、小島さんが遊んでるって書いても、これはあまり名誉毀損にならないですね。真面目なイメージの人の下半身ネタを書くと名誉毀損になりやすいです。
評論活動は自由
弁 まとめますと、第一のポイントとして事実であるか意見や論評であるかがあります。その次に、事実だったとして、その発言に公益性があるかですね。
そういう観点から考えると、福地さんのブログに書かれていることは意見が多いんですよ。たとえば、プロ連盟の幹部が「シロートはうるせーよ」と思っているはずだって書かれていて、それに対してプロ連盟が事実とは違いますって文書を送ってきてましたよね。あれは意見です。福地さんはそう思うって話ですよね。
――なるほど(笑)。
福地がプロ連盟から送付された抗議文書の一部。福地誠blog【麻雀】プロ連盟からのラブレターより。
弁 また堀内本に、堀内さんが十段戦を失格になったのに、賞金と同じ20万円を渡されたのは、口止め料だって書かれてますよね。これはちょっと微妙ですけど、基本的には、福地さんがそういう性質の金だと考えているという意見です。なので名誉毀損を問うのはなかなか難しいでしょうね。
『神速の麻雀』(洋泉社)所収「プロ連盟 終わりのはじまり」より。
――なるほど。評論活動は自由に行えるんですね(笑)。
弁 福地さんは、麻雀ライターとして麻雀界全体に関係することを言っているケースが多いので、こういうのは公共性があると認められやすいです。
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