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バックギャモンフェスに参加してきた

数日前に「バックギャモン1万戦」というnoteをアップしたら、現世界ランク1位の方からイベントにお誘いいただいた↓

望月さんのことは世界一経験者として昔から知ってた。面識はなかった。

そこで5/4にバックギャモンフェスなるイベントに行くことにした。

バックギャモンをリアルでやるのは、20代前半にシベリア鉄道車内でシンガポール人のねーちゃんに教わって以来だ。いろんな作法がよくわかんねーんだよな。

会場に行き、その日だけで出場できる初級戦というやつにエントリー。3000円。サイコロのデポジット2000円。

そして望月さんに挨拶。俺の麻雀の文章を(多少は?)読んでるそうで、以前からおたがいに知ってたからフランクに会話できるのかね。ネットでたがいに知ってた関係っていいよな。

望月さんと1ゲームだけプレイ。一手ごとに、いい悪いと言ってくれて、むちゃくちゃ参考になった。「しっかりしてますね」と言われ、最後の方の一手だけリスキーすぎるから、こっちの方がいいと言われたな。あとは全部正しいと言われたから、アプリ1万戦で基本は身に着いてるみたいね。

そして初級戦スタート。

最初は小学生の男の子。

俺はアプリでしかやってないから、リアルでやる作法がよくわかってないんだけど、相手が小学生だと聞きにくい。子どもは説明力ないし。

1戦目は馬鹿勝ち。俺がサイコロの神様にえこひいきされ、小学生が気の毒だった。

バックギャモンの勝ち方は3通りある。通常の①1点勝ち、②ギャモン勝ち(2点、麻雀の5万点トップくらい?)、③バックギャモン勝ち(3点、麻雀の3人飛ばしくらい?)の3通りなのだが、最初の2戦ともギャモン勝ちとなった。

終わって対戦した2人で成績用紙を受付に持っていくと、次の対戦相手を紹介してくれる。そうやっていろんな人と当たっていく。

何回目に当たった人だったかな、バックギャモンネクタイをしてる人がいた。

男ってこういうとこあるよね。マイキューブ(自分のサイコロ)を持ってたから、俺よりガチ勢なんだけど、初級戦に出てる人だから、そこまでやりまくってるわけじゃないはず。それでもバックギャモンに特別な愛着を持っており、わざわざバックギャモンネクタイをしてきたわけだ。こういうのって愛しいわ。

このネクタイの写真を撮るだけじゃなく、その人から教わったバックギャモン漫画を読んでみようと思った。買ったわ。

また別の人の話も面白かった。初級戦ってほぼアプリだけの人たちで、リアル経験は薄い。なので、なんのアプリをやってんの?という話になる。

俺がやってきた「バックギャモンクエスト」というアプリはレベル低いんだけど、その人がやってる「バックギャモンギャラクシー」というやつはレベル高そう過ぎた。

対戦するたびに、悪い手があったらゲーム終了後にそれを指摘してもらえる。つまり添削指導してもらえる。素晴らしい。

厳しいのはここから先。ゲームするごとに、その回のエラーレートが出て、運で勝っても、対戦相手よりエラーレートが悪かったらレーティングは上がらないという。

エラーレートで上回り、さらに結果として勝ったときのみレーティングは上がる。運の前に腕が大きく立ちふさがってるわけ。

これってきついよね。腕で負けてる相手とプレイしたら、運でいくら勝ってもレーティングは1ミリも上がらない。なんという実力主義。しかもそれがAIによる実力診断によってなされてるわけだ(;^ω^)

その人はレーティングが1500台だ。世界ランク1位の望月さんは3000点台だそうで、そういう強豪とプレイするとレーティングが上がることは絶対にない。せっかく運ゲーやってるのに、純粋な実力ゲーじゃねーか。厳しすぎるわ(´;ω;`)ウゥゥ

なので、その人はレーティングが自分と上下100以内の人としか対戦しないという。なるほどねー。天鳳流に言うなら養分なりの処世術って感じだ。この話は面白かった。俺も「バックギャモンギャラクシー」をやろうと思ったわ。

さて、対戦の話に戻ろう。8戦を終えた時点で6勝2敗。ギャモン勝ち3回の好成績だった。

これは完全に勝ってるだろってところから逆転されたのが1回、逆に必敗態勢から逆転したのが1回。

9戦目が天王山となった。

その時点で俺は+7点。当たった人は9戦全勝の+9点だった。

全員の成績がわかってるわけじゃないけど、たぶんここで勝った方が優勝じゃないか。参加者25人と、そこまでの規模じゃないからね。

その9戦目は俺の馬鹿ヅキでギャモン勝ち。俺は+9点になり、彼は+7点。点数が入れ替わった。

10戦目も勝った。相手陣の弱点をピンポイントで突ける賽の目が毎回のように出て、俺が弱点を突く動かし方をすると、対戦者の女性が「ですよねー」と言う。それが面白かった。

対戦終了後に感想戦をするときもしないときもあった。麻雀漫画だと「まるで白痴だな」とかひどいことを言う。今の世の中だとコンプラ的に成立しないよな。将棋だと「〇〇が見えてなかったです。本当にひどい」とか、自分の失敗だけを語り、相手を馬鹿にしない。じゃあバックギャモンはというと、やや将棋寄り。しかし、あまり深掘りしない。ゲームの性質として、相手と語り合っても意味なくて、あとでAIにかけるしかないからかもね。

10戦で打ち止めになった。ここでもう一度、望月さんに声をかけた。

そしたら奥のVIPルームに連れていってくれた。そこでは日本選手権の対局を行っていて、酒とつまみもサービスされていた。なぜなのかよくわからんのだが、バックギャモンとテキーラは深い関係らしかった。お茶だけもらった。

表彰式。下の順位から順番に表彰されていく。3位以上は確定だと思いつつ、そろそろ名前が出るかな?と聞いてたけど、ついに2位のときにも出なかった。

優勝。

望月さんと写真を撮ってもらった

バックギャモンは麻雀とちょうど同じくらいのバランスの運ゲーなので、優勝したというのは、その日一番ツイてたというのとほぼ同義だ。ただし、そのツキを活かして勝ち切ったのも事実で、基本的なセオリーはすでにけっこう身についてたみたいね。

賞品はボードセットか上級者が全員使ってるAIのアクセス権か。もちろんAIを選んだ。こういうのこそ勉強だし、リアルでプレイする相手もいないし。

そのあと望月さんに若手プロナンバーワンだという横田さんを紹介してもらった。まず1ゲームプレイした。俺の差し手の良し悪しを解説してもらった。すべて良かったみたいね。

対局終了後、横田さんと雑談。

まず聞いたことは、このゲームは人生を懸けるほど面白いのか?ということ。俺からすると、人生を懸けるほどには面白いようにも思えない。けっこう直線的なゲームじゃね。将棋などと比べて深みがないような気がする。

麻雀勢は麻雀のことを「なんでこんな運ゲーをやってんだ?」と自嘲しながらやってる。麻雀はまだAIがそこまで発達してないから、答えが見えてない。ギャモンはかなり見えてきてる。

横田さんの答えは、そこまで面白いのかといったら難しい。答えられない。その答えを見つけるためにやってる感じだと。

この回答は非常に納得いく。他のゲームでもみんなそんな感じかなーと思った。ガチな人たちってみな、そのゲームの中に汲めども尽きぬ謎を感じながら人生を懸けてる感じがするよな。将棋の羽生とか。

バックギャモンの大局的な戦術についていくつか質問。俺の大きな理解はだいたい合ってたみたいね。こういうの聞く相手がいなかったからなー。

具体的な戦術についてもいくつか質問し、教わった。たとえば最初に4と6が出たときに、指し手は3つある。AIの評価は僅差だからどれでもいい。しかし自分の体感では、自陣の奥深くにブロックポイントを作る手は、AIの評価よりは勝ちにくい気がすると。

一方で、3と5ならブロックポイントを作る一手だと。AIの評価は大差でその一手になる。そういったレクチャーをしてくれた。

横田さんは20歳でギャモンを覚え、今は27歳。世界トップクラスの実力はあるつもりで、モンテカルロで行われる世界選手権で優勝することが目標だという。前回はベスト8で望月さんに当たって負け、望月さんが優勝した。日本人は圧倒的に強いらしい。

ギャモンで生活することは十分可能。海外ではハイステークスの対局(高レート)も可能だし、賞金はどうだか知らないけど、金持ちにレクチャーすることで食えるという。それには知名度が重要だと。

高レート麻雀の世界以上に金持ちばっかみたいね。強いプレイヤーは金持ちにレクチャーして食えると。ただし国内マーケットは狭いので、英語は必須だ。

AI絡みの話もいっぱいした。彼はbotと呼ぶ。

強くなるためにAIは必須だけど、それがすべてなわけでもないと。AIとしか対戦しないと、AIはきれいな指し手ばかり選ぶ傾向があるから、汚い陣形の経験値が低くなる。他にも、AIはツールに過ぎない系の話がいくつもあったな。

昔の博打打ちは感性がすべてみたいな空気感があった。今の博打打ちは数字がすべてになっている。それはどうかと聞いたら、数字しかないと。まあ、そうだよな。すべてをAIに解析させる世界だもんな。

彼がバックギャモンを始めたときには、すでにエラーレートが存在した。エラーレートが調べられるようになったのが1998年。とっくの昔に雀鬼流みたいな世界観は脱ぎ捨ててるわけだ。横田さんがバックギャモンを始めたのが2015年。17年もの落差がある。

博打打ちは腕利きの漁師みたいな感覚、遠くにいる動物の移動の足音を異常な聴覚で聞き取るみたいな感じ、そういう博打観は昭和の世界だわ。麻雀くらいだよな。そういううさん臭い文化が今も生き残ってるのは。

ゲームの種類ごとに、ガチなプレイヤーにとって競技者と博打打ちとのバランスを考えるなら、麻雀はMリーグができてようやく競技者の道が開けたけど、博打打ちとしても魅力なかった。稼げねーから。

ポーカーは完全に博打打ち寄り。厳しいけど稼げる。

囲碁将棋は完全に競技者。競技は厳しいけど稼げる。博打では稼げない。

このバランスが一番いいように思えるのがバックギャモンだわ。競技と博打が完全に一致してる。稼げる。

この日、非常に印象的だったことがもうひとつあった。このチラシだ↓

もらったときはどっかの業者だと思って、ぞんざいな扱いしちまったんだよな。「体験してみます?」と聞かれ、「そろそろ表彰式が始まるんで」と。

しかし、このチラシを後から読んでみたら、これが素晴らしかった。こんな文章を書ける人はおそらく世界に一人しかいねーぞ。

その内容は、日本の博打って古代から中世、近世に至るまでずっとスゴロクだったんだけど、それはバックギャモンだったという話だ。今のルールと違う部分がいくつかあるけど、だいたい一緒。戦国時代末期のポルトガル人宣教師と日本人はふつうに対戦できたという。スゴロクが、正月にガキがやるような単純な遊びに入れ替わったのは江戸時代末期のこと。

そういう話を、大きな枠組みを示しながら、具体的なルールの違いも正確に書こうとしてる。大きな枠組と正確な細部という図式は俺が書こうとする文章と似てる。無用に格調を高めないところも。

文責は草場純さんとある。名前は何十年も前から知ってるわ。俺の師匠と言える浅見了さんがむちゃくちゃ怒ってた人だ。師匠は怒りっぽかったからなあ。このチラシを配ってた人が草場さんだったのかな? どっかの業者扱いしてすいませんでした。

この文章には感銘を受けた。世に受けても受けなくても、こういう世の中の片隅を照らす、他の人には書けない文章を書くことが、俺の場合も使命なんじゃないかと。

最近はダンスばっかしてる俺だけど、麻雀したりバックギャモンしたりして、それに関して文章を書くことは、社会参加であり社会貢献でもある。ダンスはいくら頑張っても、初老のオッサンに趣味にすぎない。そんなことを思った。

帰ってから、バックギャモンの日本選手権の動画をしばらく見てしまった。だいたい納得だけど、ごくたまに意味わからん手があったな。

バックギャモン勢はかなり麻雀もやるそうだけど、麻雀勢はほとんどギャモンをやらねーよな。

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