見出し画像

「福地さんは強大な組織と戦っているんだよ」と聞いた話〜誠の女の回想録②

その頃の私は、「雀ゴロ」という言葉を知らなかった。

「雀は麻雀の雀だとわかるけど、ゴロって何ですか?」
福地誠と共通の友人を介して初めて会ったその日、私はそう尋ねた。
福地は「ゴロツキのゴロですね」と答えた。
あらゆる業界には「ゴロ」がいる。お金の匂いのするところにチョロチョロチョロチョロ出入りして、何だかわからないけど儲けを得ている人たちのことをゴロツキというのだと。例えば出版ゴロとか、会社ゴロとか。

でもよくよく話を聞いていると、福地は比較的高額を賭けて麻雀をし、勝ち取ったお金で娘さんの学費をまかなっている、というようなことを言っていた。
そうすると、それは出版ゴロや会社ゴロのゴロとはちょっと違っていて、どちらかというとパチプロみたいな感じなのかな……? と、私は何となくそう理解して今でもそう思っているがどうなのだろうか。

とりあえず、この福地誠という人物は、私が生きてきた世界とはまったく違うエリアの住人なんだなと思った。思ったけど、例えば「嫌だ」とか「怪しい」とか「近づきたくない」とは思わなかったし、かといって「興味がわく」とか「この人をもっと知りたい」とも、とくには思わなかった。
よく、女性というのは男性のことをひと目会った瞬間に“男”として「アリ」か「ナシ」いずれかのフォルダに分類してしまうと言う。
でも少なくとも私の場合は、もうひとつ、「アリとかナシとか考えもしない」というフォルダが存在する。
初めて会った時の福地を、私はその第3のフォルダに格納した。
そして、いちどバレエ公演に誘ったけれども速攻で断られて以降は、彼のことをあまり思い出す機会もなく時が過ぎていった。

***

福地の話を久しぶりに聞いたのは、それから2年ほど経ったある日のことだった。
彼と出会うきっかけとなった共通の友人が、何のきっかけだったか、福地の近況を話してくれた。

福地誠はいま、麻雀界最大の組織であるプロ麻雀連盟という団体と戦っていて、大炎上中であると。

ここから先は

848字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?