長期旅行者は恋に落ちる その2
当時、バックパッカーの間で世界三大悪路とされている区間があった。パキスタンの26時間バス、エジプト-スーダン間の36時間列車、もう1つは忘れた。
パキスタンの26時間バスはその旅行の最後のころに乗った。実際めちゃくちゃきつかった。窓ガラスは割れており、砂漠を走ってる間はバスの中でも10センチ先も見えないくらいの砂ぼこり。巨大な荷物を持った出稼ぎアフガン人がいっぱい乗ってて異常なくらい混んでおり、身動きすらできない。座れてるのが幸運だと思うしかない。たまにトイレ休憩はあるけど、食べ物はない。何時間走ったら目的地の着くのかもわからない。目的地は乗る前に確認してるから、着くまでひたすら耐えてるしかない。トイレが一番困るから、乗る前日から食事は食わない。トイレ休憩のときに小屋でみかんを売ってたから、それを食ったのが2日間で唯一の食事。俺のバックパッカーでは一番きつい経験だった。
でもね、世界三大悪路なんてじつはテケトーで、このパキスタンの26時間バスなんて序の口なんだわ。ひどいのはアフリカだ。桁が違う。アフリカでは、バスが1週間に1本しか通らず、それが何曜日の何時に来るのかわからない、みたいな交通網が普通なんだわ。いや、普通ってことはないかもしれんけど、それくらいひどい箇所がいくらでもある。どうやって乗るんだろうね? 待ちようがねーじゃん。
アフリカではエジプト、モロッコ、ケニアみたいな入口はいいけど、そこから奥に入るとそういう世界になる。病気や怪我のときなど、手の打ちようがねーんだよな。
三角関係の3人は、そういう世界に3人のまま向かったのだった。エジプト-スーダン間の36時間列車は世界三大悪路の1つとされてるけど、それを入口としてアフリカに入っていった。
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