3狂筆頭店が歌舞伎町の頂点に立った日、その業火に焼かれてきた
とある金曜日の夜22時半。家でMリーグを観ていた。そこにラインで、今から筆頭店で打とうという誘いがきた。
おいおい、麻雀のためにわざわざ歌舞伎町まで行くとかねーって。俺は予定を入れたくないからセットだってめったにやらないちゅーに。
というのが俺の平常運転なんだけど、この日は麻雀したい気分ではあった。連絡が来る前から今から歌舞伎町に行こうかって思ってたんだわ。
こうやって連れ立って行くのってどうなんだろうね。すぐ10万いっちまうレートだぜ。1人で行って自己都合優先で目を血走らせて打つべきじゃね?
なんで俺と同卓したがるんだろう? 安い店なら遊びでいいけどさ、筆頭店で俺と同卓したがるって養分扱い以外の何があるんだ?
この前、某雀ゴロに某くそ高いセットにめちゃくちゃ誘われた。どんだけ俺のこと養分だと思ってるんだろうな。世の中危険すぎるわ。
そういえば、今日は筆頭店に新牌レインボー牌が入る日じゃねーか。その初日だ。どれくらいの威力なんだろう?
レインボーは単体では祝儀1枚で、他の祝儀牌と合わせて全部合算した後で枚数を倍にする。つまり、青+金+レインボーの3枚使いでアガったら、(青3枚+金2枚+レインボー1枚)×2=12枚となる。高ぇな。
極端なケースを考えてみよう。2月か3月から役満祝儀が倍になった。ツモ5枚ロン10枚からツモ10枚ロン20枚に。
5が全部アンコの四暗刻をツモったらどうなるか? こんな手だ↓
これをポチでツモったとしたら、30枚オールの倍だから60枚オールになる。極端すぎてよくわかんねーか。もうちょい普通の手を考えてみよう。
こんな手をリーチしてツモったとする。だいぶ勝負手だよな。裏ドラは3mで1枚乗った。
各色の5は青2枚+金1枚+赤1枚+レインボー1枚だとする。そして裏が1枚。
メンピンツモドラ6。倍満の11枚は22枚オールとなる。高ぇな。ブラックダイヤ5pよりだいぶ高ぇぞ。
やべーよ。こんな麻雀を覚えちゃ駄目だ。脳みそを焼かれて人生が破綻する。これは麻雀じゃない。裏スロだ。
そんな危険な麻雀に、たいした知り合いでもねーのに誘われてのこのこ行こうとしてる。退職金でなんか商売やってみっか?と、うさんくせーフランチャイズに手を出してしまう養分ジジイかよ。
行きにタクシーを使うってまずしないんだけど、今日は朝から出動してたから疲労が不安でやっちまった。午前中から実家に行き、役所に行って門前払いされそうになったり大変だったんだよ。そんな老人を呼び出すなって。
店に入った。夜は明るい感じだな。2卓立ってて、中央の卓で打ってる令和雀ゴロきなぴよがチラッと視線をよこした。
待ち席にダチがいた。見た目が忍者みたいだから忍者君としよう。会うのは4年ぶりとか? コロナ以降は会ってなかったと思う。たぶん20代にーちゃん。俺のアドゲー日記の愛読者。ネタをくれるから助かる。彼は待ち席でビールをジョッキで飲んでた。今から高い麻雀を打とうというのに、ビールって余裕ありすぎね?
オーナーのマダムから挨拶された。「なんか書いてくださったようで、ありがとうございます」って。おいおい、誰が何を伝えたんだ?
「いえいえ、別にほめてないんで」と言ったら、「でも、いい宣伝になってますから」と。そうですか。警察様の資料になってなきゃいいんだけど。
忍者君はビールを飲みながらアボガドチーズバーガーを食い始めた。
店内には見たことある顔が多少あった。
若い美人ねーちゃんが来店した。どっかで顔を知ってるな。ザンかな?
最近は若くて美人のねーちゃんで、自分の金でアドゲー東風とか三麻を打つ人たちが現れてる。近麻に取材されたえいみさんなんて東工大修士卒のバリキャリなのに、麻雀にハマって仕事を休職し麻雀ばっかやってるもんな。しかも発狂店とか高い麻雀を。麻雀を覚えて本当に幸せとか、おいおいそれでえーんか?ということをゆーてる。
このねーちゃんと同卓になった。聞いてみたら、レインボー牌を試してみるために来たと。いつも発狂店で打ってるみたい。そっちと比較したいそうな。
そしてアボガドチーズバーガーを食い終わった忍者君。ひょうたん顔の若いリーマン。
忍者君は「俺でも勝てるんですから楽勝です」といつも言ってる。麻雀が始まってみると、その詐欺師ぶりが明らかになった。
彼は誰かのアガリが出ると秒で何枚と数えてくれる。レインボーがあると7枚は14枚みたいに数が多くなって複雑なんだよ。俺みたいな老人はそんなのちゃっちゃと数えらんねーよ。それを彼はコンマ1秒で数えられるのだった。
歌舞伎町で生きてる若者ってこんな感じだよな。芋ねーちゃんを立ちんぼに沈めてるホストにーちゃんたちもこんな感じかね?
彼は麻雀もめちゃ安定してた。決して無謀な勝負はせず、安全圏に身を置きながらアガリを拾っていく。
初回はラス。さっそく20枚おかわりした。5万両からスタートするのはおかわりが早すぎて良くねーな。次回から10万両スタートにしよう。
2戦目は3着。相変わらず良くない。忍者君は着々と蓄財してる。
だが3戦目、麻雀で生きてきた老人の意地が火を吹いた。マンガン7枚オールツモ。ハネマン6枚オールツモ。この2つのアガリが炸裂した。
6枚とか7枚とかツモると、チップが大量に集まってくる。ものすごく気持ちいい。この世の富がゾゾゾっと俺の手元に集まってきてる気分になる。
逆に6枚とか7枚とかツモられたときは、その理不尽な痛みに泣きたくなる。やめろ!俺の金を削るな!これが俺の全財産なんだぞ!そう叫び出したくなる。
ツモるかツモられるか。そこにこの世のすべてが凝縮される。人類の階級闘争は、現代では歌舞伎町でツモるかツモられるかに姿を変えてる。ここに人類の歴史が込められてる。
我々は猿の時代からこうやって生きてきたのか。そんなサピエンス全史の振り返りが歌舞伎町では日夜繰り返されてる。
3戦目はトップ。こうして福地族の逆襲が始まった。
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