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大根と幻肢痛とオリジナルラブ

今からから2年前、2023年4月1日。
比叡山最高峰の水井山から下山中、滑って転んで左手首を骨折してしまいました。
ソロじゃなかったのが不幸中の幸い。
同行していた兄に、拾った小枝を添木にして包帯で手首を固定し、三角巾で腕を吊ってもらいました。兄のエマージェンシーキット大活躍。

まだ1時間ほど山道を歩かねばならず、家の近くの病院まではそこからさらに2時間近くかかりそう。
雨がポツポツ降り始め、胸のあたりの、三角巾からのぞいている指先が冷えるので、右手でさすったり握ったりして温めるのですが、感覚がなくなりそうなくらい、冷え切ってしまいました。

やっとの思いで病院に到着。
「あんまりきつくしばると血流が悪くなって良く無いですよ。(そうですよねー)あと、骨折してるんだから救急車呼んでも良かったんですよ(家の近くの病院で診てもらわないと入院とか通院がめんどうかなと思ってん…)」
看護士さんかな?若いお兄さんのことばに「ワシもそう思う」と頷きながら、何枚かの書類に必要事項を記入。連絡を受けた夫が到着。

準備ができたら麻酔注射を打ち、あとは静かに手術の順番待ちです。(同じく手首骨折の中学生が先に手術していた)

待ってる間にトイレに行った時のこと。
片手で不自由ながら用を足し、立ち上がると、
なんか大根みたいな重たい物体が、ぶらーんと体にぶつかってきたのです。

きやー!

知らぬ間に、三角巾からこぼれ落ちた自分の腕でした。
いや、こわい!
感覚のない腕を必死で三角巾に納めようとするのですが、重たいし、自分の腕とは思えない、本物そっくりな人形の腕のようなんだけど、ほのぬくいのが気色悪くて泣きそう。
重さとサイズはまさに大根。やわらかく萎びた大根。
折れてるのに固定もしないで、ぶらーん、自分の足にぼーん、便器にもごーんて、あたった気がするんですけど。大丈夫なんでしょうか。
(大丈夫でした)

夫に、「トイレで腕がぶらーんなってこわかった」と訴えましたが、「へー?」って。
ぜんぜん伝わりませんでした。なんやねん!

手術中は、オリジナルラブの接吻が流れていました。
私の年齢を見て、80〜90年代のヒット曲を流してくださったみたいです。

尻もちついて骨折した時の私↑

土曜日だったので、月曜日まで入院することになり、病室へ。
いろいろあって忘れそうになってるけど、今日は登山してきたんだった。
疲れがどっと出て、うつらうつらすると、胸の辺りの左手の指先が冷たくてつらい。さすってあたためようと、右手を伸ばすと。
無い。左手が無い。
私の左手はまだ麻酔がさめておらず、ベットの柵に肘から上をもたれさせている。(なるべく手先を上に向けといてくださいねとのこと)
なので、胸の上には手は無い。
これや。知ってるで、この現象。
戦争や何かで失った手足が痛むという、アレ。
はだしのゲンで読んだで!

麻酔が覚めるまで、私は何度も、胸の上の左手の指先が冷たくて我慢できず、温めようとしては、無い!プチパニック!を繰り返しました。
で、あーここにある私の手って、左手の指先を触ってみるとほのぬくいの。冷たくない。
泣きそう。

知ってるけど名前は知らないこの現象は、
「幻肢痛」というそうです。

ー今日の学びー
登山は疲れが出やすい下りでの事故、怪我が多いそうです。気をつけましょう!

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