文化人類学カフェ便り2014年1月

「たのしみ/たのしむ」

 ぼくは、大仰にも文化人類学カフェのマスターという肩書をいただいておりますが、カフェを開くに際して、一応のオチを考えているわけです。

 でも、「文化人類学カフェとは大人の雑談」とえらそうにいっている以上、考えていた着地点から遠く離れたところを話がふわふわ浮いてしまって「はて、どんな 風に終わればいいのかしらん」と途方にくれることも多いです。2013年12月11日の人類学カフェはまさにそんな目的地のわからない会でした。

 人類学者の植島啓司が使う言葉で「フラート(flirt)」というのがあります。意味は、「恋愛にいたるまでの恋の戯れ」ということですが、植島は不安を抱えた恋愛未満のこの時の豊かさを強調しています。

 「たのしみ」も同じです。実は世間で「楽しい」と思っている部分は本当は楽しいわけではない。そこにいたるまでの不安や苦しみと共にある過程こそが楽しさの源泉かもしれない。それは説明されてもわかるものではないですよね。だから「教える」ことは難しいのです。

 というわけで(どういうわけだ)、次回 の1月24日(金)の人類学カフェのテーマは「教える」です。

※特別養護老人ホーム グレイスヴィルまいづる発行の『ぐれいす村便り(2014年1月号)』掲載分を加筆修正しています。


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