文化人類学カフェ2015年1月
<いろいろある幸せ?>
ラジオ番組を聴いていたら、60代の男性が「年に一回のケーキが何よりの楽しみだった」と話していました。朝食はもちろん、昼食も抜いて、夕食はケーキだけ。箱も捨てずにとっておいて最後までケーキの匂いを楽しんだそうです。
現在ではケーキが嫌いな子もいます(ま、昔も嫌いな子はいたとは思いますがともかく)。なぜなら、ケーキも数多くある選択肢の一つでしかないからです。嫌いなものを食べなくてもよいのですから一見幸せにみえます。
でも、なんとなく「未知との出会い」がなくなっているような気がします。知っている好きな物だけ、いつでも食べることができてしまう。「どんな味がするんだろう?」。そんなドキドキはありません。未知を知る機会がないのです。
現在はあらゆる分野において選択肢だけは異様に多い。しかし、想像を超える出会いは少ないような気がします。前述の男性のように想像を超えた出会いは、鮮烈に記憶に残り人生を豊かにします。これからの子供たちに未知と出会う道筋を作ってあげることは案外重要なことのように、僕には思えたりするのです。
※特別養護老人ホーム グレイスヴィルまいづる発行の『ぐれいす村便り(2015年1月号)』掲載分を加筆修正しています。