Make it Right
たまたま雑誌の整理をしていて、昔の『クーリエジャポン』を読み返しているうちにいろいろ気になる記事があった。
2008年のある号の巻頭で特集されていたのが、ブラッド・ピットがハリケーン、カトリーナ被災地ニューオリンズの復興に立ち上がったという記事。
ハリウッドセレブの慈善活動家として、有名なのはアンジェリーナ・ジョリーだと思うのだけれど(チャリティコンサートをやったり、エチオピアやカンボジアの子供を養子にしたり)、ジョリーの旦那だったピットさんもがんばっていたんですね(アル中でもめてたみたい)。
記事によると、2007年秋から動き出したピットは、ニューオリンズの下9区と呼ばれるアフリカ系住人の住む貧困被災地を復興するために、500 万ドルの私財を投げ打って、協力者と共に救済のための財団"Make it Right"を設立(ちなみに財団名の由来は話し合いの席で住人がブラッド・ピットに言った「(やるなら)ちゃんとしてほしい」という言葉から)。そして、世界の著名な設計事務所に低コストの住宅の設計を依頼し、12月のはじめには資金集めと救済計画の公表をかねたインスタレーションを大々的に行ったそうな。しかも、その際、自らがメディアのガイド役をかってでた、という熱の入れよう。
なんでも、ニューオリンズの下9区は住民の60パーセントが家を失い、未だにルイジアナなどの地域に避難しているほどの派手な被災っぷりで、現地は再建自体が疑問視されるほどの過酷の状況らしい。
政府も助けてくれない、このままでは救世主の登場を祈るしかない。そこに現れたのが、ハリウッド大スター、ブラッド・ピットだったわけだ。ピットによると、2008年早春には、著名な建築家が設計した低コスト、耐洪水住宅群(太陽光パネル、車椅子用のスロープ付)が着工されるらしい。
ピットはいう。
「やがてこの地区にいた家族が戻り、次のクリスマスをここで過ごすでしょう。もう二度と、故郷を離れてクリスマスを迎えることはないんです」
しかし、なんにしろ感服するのは行動力の早さ。なにせ、財団を設立してから、着工まで半年かかっていない。自分の知名度を利用した宣伝も見事だし、メディアに募金を求めて行ったインスタレーションも前衛アートみたいでいちいち男前だ。
そりゃもちろん、ほかのハリウッドセレブのボランティアと同様、売名行為という側面はあるんだろうと思う。ピットが建築に興味をもっていたのはかなり知られた話みたいだし、彼はボランティアという大義名分の下で大々的なプロジェクトをしてみたかったんだと思う。
でも、それがどうした。
一番重要なのは実行力のある人が実行力に見合った行動をすることだと思う。動機はどうであれ、結果が相手にとってよいものであればいいのだ。そういうのが、一方通行でない長続きするボランティアだと思う。
しかし、ブラッド・ピットが被災地に受け入れられるかどうかは、計画通り支援がうまくいけばの話だろう。「(ピットを)80パーセント信用せざるを得ない」と語っている地元の住宅供給業者のヴァネッサ・ゲリンガーさんも、「一軒目が建てば、心から(ピットが本気で支援していることを)信じるでしょう」と述べている。
うまくいったのだろうか?
ブラッド・ピット自体はアンジェリーナ・ジョリーとの離婚やらいろいろあったとはいえ、俳優としてアカデミー助演男優賞を獲ったりしてるけど…。