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理論から注目したい革新的なアイドル曲3選

こんにちは、ひよこです。蒸し暑い雨の日が続きますが、こんな時期だからこそ、アイドル曲をたくさん聴いてテンションを上げていきましょう。

今回私がオススメするのは、音楽理論、特にコード進行やメロディから他の曲とは一線を画したアイドルソングです。「どこかで聞いたことあるな」というありふれた曲調ではない、唯一無二の、極めて革新的な曲を3曲ご紹介します。

①『くらっちゅサマー』(夢みるアドレセンス・2015年)

この曲は、夢みるアドレセンスのメジャー2枚目のシングル『サマーヌード・アドレセンス』に収録されているカップリング曲です。この曲の革新性は、まさにアイドル曲とは思えないコード進行にあります。前奏では「FM7→Em7→Dm7」「A♭M7→Gm7→Fm7」を不安定に繰り返すところから始まり、BメロではCdurからE♭durへと再び不安定をかましサビに突入しています。

しかし、サビの進行は「A♭M7→B♭/A♭→Gm7→Cm7」という、極めて単純な王道進行を用いており、最終的には安定を獲得する不思議な曲になっています。

『くらっちゅサマー』のコード進行は、E♭durとCdurの2つのキーを交互に利用し、あえて前奏、Aメロ、Bメロで不安定を作ることにより、サビで安定感を見せるという構造になっているように感じます。曲調も相俟ってか、冒頭から終盤まで、聴く側は息つく暇も与えられない個性的で面白い曲と言えましょう。

②『ハレとケ!あっぱれ!ジャパニーズ!』(FES☆TIVE・2019年)

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この曲は、「お祭り」をコンセプトに掲げたアイドル「FES☆TIVE」の9枚目シングルの表題曲です。この曲の核となるキーは、サビを聞けば分かる通り、Edurです。ただ、前奏からAメロにかけては、C#(D♭)durが設定されており、ラップ調のセクションの挿入により、転調がさりげなく展開されていると言えます。

サビの進行は「E→B→A♭/C→C#m7→E→A→(G#m7→G)F#m7→B」という、シンプルかつ明瞭なものであり、一見すると革新性はないのではと感じます。

では、この曲の革新性とは何か。それはズバリ、曲自体の構成はベーシックなものでありながら、歌詞やテンポ、ラップ調セクションの挿入がその構成を覆い隠してしまっている点にあるのではないでしょうか。よく聞くと、各セクションによって裏で「和」を連想させるサウンドが鳴り響いています。このようなそれぞれの効果が、我々にアイドル曲としての革新性を認識させていると言えます。言い換えるならば、コード進行、歌詞、ラップ、各サウンドが融合することによって、曲そのものの面白さに繋がっていると言えるでしょう。単なる転調ではなく、その転調がさりげなく行なわれているところに、この曲の魅力があると感じます。

③『サイレントマジョリティー』(欅坂46・2016年)

坂道シリーズ第二弾として結成された欅坂46によるデビューシングルです。この曲はその革新性から世に大きなインパクトを与えたように思います。曲のテーマが「物言わぬ多数派」であるという革新性は、ここでは一旦置いておきましょう。

この曲はまず、G#m(B)から始まります。ベースラインがはっきりとしているため、進行の複雑さはあまり感じられません。しかし、サビで突如転調し、G#(A♭)へと変貌を遂げます。つまり、G#mからG#へと変わったのです。音楽理論の世界では、この転調を「同主調の転調」と呼びます。「同主調」とは、同じトニックを持つ長調と短調のコードを指します。並行調に比べて普段馴染みのない関係調かもしれませんが、この同主調の転調こそが、サイレントマジョリティーの革新性と言えます。

同主調転調の最大の特徴は、他の転調と異なり、音の高低によって雰囲気の差を演出することなく、マイナーからメジャーへとスムーズにキーを変更できる点にあります。例えば、Adurの曲があったとします。ラスサビでBdurに転調します。この時、そもそもとしてのルート(根音)が変更され、曲の雰囲気が大きく変わることでしょう。スケール自体が全音で+1されるからです。

しかし、同主調の転調ではどうでしょうか。ルートが変わらないため、音の高低、スケールの大幅な変更は実感されません。マイナーからメジャーへと装いを反転させながら、実際には音の違い(高低差)はそこまで生じていないという不思議な現象が生まれるのです。

サイレントマジョリティーの曲の冒頭、非常に暗い雰囲気で始まります。しかし、サビの終わりでは非常に明るい雰囲気で締められます。まるで未来に希望を予感させるように。この曲はそのような同主調の転調をさりげなく用いることで演出される明暗の革新性が興味深いと考えられます。


以上、駆け足でしたが3つの曲をご紹介しました。王道のアイドル曲を楽しむのももちろん良いですが、たまには今まで聴いたことのない革新性溢れる曲を聴いてみるのも良いかもしれません。

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