
放課後おにぎり論争【ショートショート】
『放課後のおにぎり論争』
夕暮れの教室。気がつけば
いつもの3人で中身のない話で盛り上がる
男子学生が3人集まれば、
大体そんな感じの放課後になる。

月野が立ち上がり、声を上げた。
「今日、何か食って帰らね?」
「コンビニで肉まんとか?」と火乃村が答える。
「さいきん、コンビニも高くなったよな。オレ、あんま金ないし」
水田が窓の外を見ながら言った。
月野もポケットの小銭を触りつつ
「俺も、そんな無いな」
火乃村も椅子から立ち上がり
「そうだな、無駄遣いする事もないし、そろそろ帰るか。」
「オッケー!」
三人はカバンをとりにいった。
三人は階段を降りながら、中身のない会話を続けた。
最近、お気に入りのVtuberは?
面白かったマンガ、あの先生はカツラじゃね?
クラビアアイドルで最強のオッパイは誰?
マックの新しいバーガーは、どれが美味い?
3階から下駄箱に行く間にも、
中身のない会話は続く。

駅前の公園横を通りがかる頃、
「結局、イヌとネコのどっちがカワイイのか?って
話になってしまうんだよ」
と月野が言い始める。
横の火乃村が溜め息をつく。
「いや、だからイヌだろ?何度も言ってんだろ」
その会話を聞いていた水田が、二人の方に振り向き慌てた口調で
「ふと思いついたんだけどさ、ちょっと聞いてくれよ。」
月野「なんだよ。笑」
火乃村「聞いてるよ、何さ」
「おにぎりの具がアイドルだったら、どれが一番かわいいと思う?」
「あ?! カワイイ。。。アイドルな具?」と空を見上げる月野。

月野が思考停止している中、水田は語る。
「オレは、断然「シャケ」だな! 紅色でカワイイ、絶対センターっしょ? カワイイっていうよりカッコいいかもな。」

「いやいや、それだったら「梅」が最高にカワイイって。あの塩味がなんともいえないクールさを感じさせる、和風でカワイイ!絶対黒髪ロングに違いないし」と火乃村が反論する。

「う、「梅」か!そっか、「梅」もポイントたけぇ。でもさ「たらこ」は?」と水田が質問で返す。
「「たらこ」は明るくてポップ、カラフルでプリッとした感じが、カワイイけど「たらこ」は黒髪ロングじゃねぇよな」と、
思考復活して、この会話に順応し出した月野が応じる。

火乃村は頑なに「梅」を推し続ける、
「梅」こそが本当のアイドル。正義!カワイイ!」と主張。
同じく、水田は「シャケ」推しだ。
月野は二人の話を聞きながら、一言
「でもさ、お前たちの推しの具カワイイけどさ、
やっぱ一番エロそうなのは「ツナマヨ」じゃね?」

その言葉に、火乃村と水田も黙ってお互いを目を合わせ頷く、
「確かに!!」と奇跡のハモリ。
一体何の話をしているのでしょう。
街灯が灯り始める中、意見一致したアホ三人、
「帰るか」月野が二人に声をかける
「そうだな」
「うん、そうしよ。おにぎり食べたくなった笑」
「また明日な」と声を掛け合いながら、それぞれの家路につく。
帰り道、月野はふとコンビニに立ち寄る。迷った末に手にしたのは、
「シャケ」「梅」「ツナマヨ」おにぎりだった。
レジに向かいながら、今日の会話を思い出し、半笑いになる。

家に着くまで空腹に耐えられなくて、月野はおにぎりを頬張った、
どの具もそれぞれの特徴があり
当たり前に美味しいと思った。
「うん!やっぱり「ツナマヨ」は、エロカワイイ、ご馳走様でした。」
食べ終わる頃、家に到着。
玄関ドアを開けながら、ふと考える
「あれ?今日、結局オレら何の話してたんだっけ?
アイドルの誰がエロいか?だっけ?」
