2024年5月3日(金)ーーゴッドハンドOT①
15:35-16:30滞在
16:40-初めて作業療法士のゴッドハンドG先生にお会いし、リハビリを見学させていただいた。
ふくT:T
妻: P
ゴッドハンドPTさん: G
G: 元々手の方の作業療法士なんですが、Pさんに関しては、1番必要なのは車椅子から乗り移るための足なので、足をやっています。膝が曲がってしまっていたんですね(つい最近まで膝が伸びなかった)。
T: ずっと外旋したままだったですよね。
G: 外旋して内旋に戻らなかったですよね。
T: そうなんですよ。
G: 今、内旋がかかってきています。
T: なぜこうなるんですか?
G: 大臀筋と深部の筋肉の長さが根本的に足りなかったんです。
G: 感覚は、ご本人、よく取れていて、動かすと硬い筋肉は「硬いよ」とちゃんと教えてくれる。
P: コリコリしてる。
G: ここで引っかかるんですが、重たくなる原因の筋肉がどこかにある。関節は壊れてない。
T: 関節が死んで動かないのではなく、インナーマッスルとか筋肉の問題なんですか?
G: そうですね。
T: 我々が股関節が固くて前屈できないのも筋肉の問題なんですか?
G: 筋肉が短くなって引っ張ってしまうんですね。
T: それは、どうやればなおるんですか?
G: 筋肉はゴムみたいなんですが、短いゴムになってしまっています。それを動かしてやって、筋肉を柔らかくしてやる。筋肉が短縮しているのは、物理的に筋肉が短縮しているのもあるのですが、設定しているのは脳なんです。脳の方にこの長さを調節している機能があるんです。ここをこう動かしてやると、脳の方が設定を間違えていると。ここ硬いよと脳の方に送ってやる。そうすると脳が「じゃあ、もうちょっと緩めよう」と反応する。そうすると少し緩んでくる。入ってくると(脳からの命令?)、今度は関節が動きます。関節が動くと関節内にある角度計(この字で合っているか微妙)に入れてやると、脳の方では「この角度で動いている」と認識する。
T: ほんとプロフェッショナルですね。話聞くだけで楽しい。
G: その角度を脳が感じて、その角度に応じた筋の長さをインプットする。
G: いわゆるマッサージ師と我々の違いは、ターゲットが違うんです。あくまでも、脳血管領域。壊れているのは脳なんです。足じゃないんですよ。
T: 私は、動かないのは、しばらく同じ状態だったから動かないと認識していましたが、それだけじゃなくて、実は、脳のせいで動かないんですね。
G: そうです。
T: 固まって動かないと思っていたけど、そうじゃないんですね。
G: 車でいうと、タイヤが回らないのはハブのところで癒着して回らない、ブレーキがロックして回らない、というのではなくて、エンジンが動かないから回らない。
T: なるほど!エンジンが動かないのにいくら足回りを修理しても動かないということですね。
G: ただ、逆もあり得るんですよ。エンジン治しても、ここで癒着していたら動かない。だから、両方を修理していかなければならない。
G: この膝に関してはサスペンションが曲がっていた、そんな感じです。完全に曲がっちゃって骨のアライメントがおかしくなってしまっていた。
T: これもG先生のやり方だと伸びるんですか?
G: 伸びます。
T: それはなぜ伸びるんですか?
G: 関節の中の隙間がないんです。関節は滑っていかなければならないので。
T: じゃあ、ロックしちゃっているんですね。
G: まだ完全に取りきれてないんですけど、クリアランスって分かります?エンジンでいうと、シリンダーとピストンの間は、くっついてないんです。隙間があるから動くんです。その隙間をうまく整えてやる。関節には膜があって、ベルトで靭帯がついてます。それが短く硬いんです。その靭帯とか調整してクリアランスを調整すれば動く。壊れてはいない。整備不良。
T: 完全に壊れたと思っていましたが、そうじゃないんですね。
G: 事故して、骨が折れて壊れてしまう人はいる。この膝は壊れていない。癒着をリハビリで治してやればいい。
T: 修理屋さんも良い修理屋さんとそうでない修理屋さんでは差があるんだね。
P: G先生は神の手を持つ男だから。それに分かりやすく説明してくれる。
T: ほんとだね。そこが大事だよね。理屈が分かっていれば前向きになれるもんね。勉強になります。
G: 発症から時間が経っているけど、まだ手をつけてないところがある。ガンガン動けるようになるとは思わないけど。電気が来てないところ、停電している。でも、脳の発電所が壊れてもスペアがいっぱいあるので。
T: 発電所が止まっても自家発電が稼働する可能性はあるんですか?
G: 予備の発電所も変電所もいっぱいあるんです。予備を使って、少しでも復旧してくれれば。その工事をするのはご本人しかできない。我々は何をするかというと、どこをどう工事してくれと情報を与えることができる。そうじゃないと何をやっていいか分からない。脳に情報を送っているんです。
T: 今までは施術しているところを見て、固まっている関節の可動域を伸ばすためにやっているものだとばかり思っていました。
G: それももちろんあります。踵に体重がかかると膝も伸びるし、股関節に体重が入るんです。股関節に体重が入ると体幹にスイッチが入る(まさに「我が意をえたり」)。
T: その踵をつくというのは、健常者でも同じ仕組みですか?
G: そうです。
T: つま先だけで走れという人がいるが、それは変?
G: 踵がついてスイッチが入ってつま先から抜ける。踵がつくのは、歩くにも走るにも絶対に必要。そのスイッチを入れたいんですけど、どうしてもこれがこっちに来ない(足首を背屈させようとするが、なかなか背屈しない)。
T: なぜ背屈しなくなっているのですか?
G: 腓腹筋が短い。
T: 腓腹筋が短くなると背屈しないのですか?
G:そう。
T: 腓腹筋が短くなってしまう理由はなんですか?
G: 両方あります。脳もあるし、ずっとこの底屈した状態で寝ていましたからね。だから腓腹筋が短縮しゃうんです。
T: それは必要ないからそうなるんですか?
G: ゴムみたいなもので、ゴムはたるむのが嫌なので、巻き取るんですね。それで短い状態を基本としてしまう。
G: 左足でちょっとでも立てれば右足が出るんですよ。今は出ないので方向転換が難しい。それができれば1人で車椅子に乗れる。起きて立って車椅子に乗る一連の動作を1人でできるようにしたい。
T: 左足の踵が接地さえすれば、左足は動かなくても右足が出る?
G: 左膝の伸展がないと立てないが、電気が来てない。だから腿前の筋肉が働かない。今後どこまで電気が復旧するか。でもまあ、もう少し動いてくるかなと思う。
P: リハビリ続けた方がいいでしょう?
T: G先生に診てもらえるなら、俺が仕事を辞めてあなたをここに送迎する価値あるね。
G: 私だけではないので。みんなでやっているので。
T: 退院してからも本人がG先生にやってもらいたいと希望すればやってもらえるものなんですか?
G: もちろん外来で来られても、私が担当なので。外来で来れば私が診ます。でも3ヶ月くらいしかできないんです。最長で3ヶ月、あとはドクターがどう判断するか。
P: G先生が開業すればいいけどね。
G: 訪問リハビリでうちのスタッフが行けるとは思います。
P: G先生がいい。
G: さっきも言ったように私は足は専門でないので。足の上手い奴はいっぱいいますから。
P: やっぱりG先生がいいよね。
T: あまり大きな声で言うと角が立つから。
G: 基礎的なことを今、私がやって、PTに他をやってもらっている。
T: PTさんの話も勉強になったけど、更に勉強になりますね。
G: PTと私ではキャリアが違いますから。職人みたいなものなので(これを笑顔で言える自信)。逆に同じじゃ困るんで。うちの病院のいいところは、若いのと私のようなベテランが組んでいるので、平等なんです。当たり外れがないようになっている。
P: でも当たり。
G: 足持てます?
T: (私が左足を持って膝方向に圧を加えると押し返した)オー!凄いじゃん。
G: だいぶ動くようになったでしょ。
T: 左足は全く動かなかったですもんね。膝は外に向いて全然前に向かなかったですよね。
G: 膝は真横向いてましたからね。あのアライメントだと力が入らないんです。ハンドルが90°曲がっているのに真っ直ぐ走るの無理でしょ。あの状況で立てというのは私としてはあり得ない(でも多くのリハ担当者は立つトレーニングをさせていた)。
T: あの状況で立つ練習はあまり良くないんですか?
G: まずは治す方が先。メカを直すには、絶対に押さえなければならないことがある。メカを直さないと。運転するのは本人。間違った情報が頭に入ってしまう。
T: 間違った情報が頭に入る。深い。
G: ハンドルが曲がっている車で真っ直ぐ走ろうとしても曲がってしまう。走っていて変な癖がついてしまう。そういうのは嫌なんです。セラピストの考え方にもよりますが、廃用(過度な安静が長期間続いたり、活動性が低下することで、機能低下すること)が進んでしまうから、とりあえず立たせてエンジン回すという考えもあります。
T: 鼠蹊部の痛みはなくなったの?
P:強く押せば痛いけど。
G 基本的に痛みは何かしら悪いところがあるサインです。痛みが出る原因が必ずある。それを修正する。
※仰向けに寝た状態から自力で左股関節を曲げて膝をお腹に近づけた
G: これができるようになったのはここ2日くらいだよね。ずっとやってきて、この2日ですよね。
P:前は手で持って引き寄せないとダメだった。
T: 最初からここに転院させてくれと言えば良かった。後悔先に立たず。
G: 先生からそんなに長くいられないと聞いているので、急いでやっていきます。
T: 3ヶ月G先生に診ていただいて、それが終わったら元に戻ってしまうことはあるんですか?
G: 元に戻ることはない。訪問リハビリもありますし。
G: やった後は、こんなふうに背屈が出てきます。これで立てれは踵に体重が乗り、右足が出る。もうちょっと膝が伸びないと。無理してやると膝が折れちゃう。
P: 立とうとしても膝が笑っちゃう。
T: 股関節の伸展はできても膝関節の伸展はできないんだ。
G: 腿前にまだ力が入らない。
T: 腸腰筋は動いているんですか?
G: 腸腰筋は動いているから足が上がるけど、膝が曲がったまま。大腿直筋が効いてくると膝を伸ばしながら足が上がる。
※仰向けで膝を立てて(90°に曲げて)左右に振り子運動させて見せた。
T: この動きは腹筋も使います?
G: 使います。股関節の筋肉は腹筋を拠り所にしているので。体幹に繋げないと左膝も安定しない。初めは膝を立てると、パタンと外側に倒れた。
P: だからそのままベッドから落ちた。
G: しっかり立てるように。イメージとしては1人で家にいる時間ができるかな。1人で家にいるということは1人で動く場面が想定されます。その時に転倒のリスクをなくす。それが家に帰る分岐点。
T: つい最近までそんなこと想像できなかった。
G: ヘルパーさん使ったとしても限度がある。いかに家で安全に生活するようにできるか、そんな感じでやっています。
G:私も家に行って、どこをどうしたら万全になるかアドバイスします。
T: それまで頑張って部屋を掃除してます。
T:明日は透析で面会できないから来ないよ。
P: ありがとうございます。明後日またお願いします。