「EOS R1」は正に報道やスポーツのためのプロ機
「はじまりの"1"」は「究極の"1"」
キヤノンより、11月発売が正式発表されたフラッグシップ機「EOS R1」。
これに先駆けて、キヤノンフォトハウスなどで「タッチ&トライ」が開催されました。
8月10日までの開催でしたが、終了直前になってようやくお試しができましたので、あくまで「個人の感想」として紹介いたします。
重さは、数字とは裏腹に"そんなに"感じなかった
EOS R1の重量は「1,115g」(バッテリー、カード1を含む)
数字とは裏腹に、持ってて重いとは感じませんでした。
普段はこれに近い重量で撮影しているためなのか…
(EFマウントのカメラ+レンズ+スピードライトで撮影しているため)※1
ちなみに、タッチ&トライ時の装着レンズは「RF24-70mm F2.8 L IS USM」でした。
ちなみに、この組み合わせでの重量は
EOS R1(1,115g)+RF24-70mm(900g)=2,015g
動体および瞳認識のAFが進化
タッチ&トライでは、タブレット端末に映し出された乗り物・動物でAFの体験ができました。
追尾がスムーズで速く、瞳検知も人間・動物ともに素早い検知でした。
人間・動物は瞳検知できなくても、頭から胴体にかけてピントを合わせていたので、ピント外れはほとんど解消できると言ったところです。
ちなみに、追尾対象は乗り物・動物など対象をあらかじめ決める必要があります(メニューから設定)
カメラ内アップスケーリングは引き伸ばしに使えるが…
EOS R1のCMOSセンサーは約2,420万画素。
撮影後、通常サイズの4倍の画素数相当(約9,600万画素)に拡大する機能があります。
画像を指定し処理をスタートすれば、10秒ほどで拡大画像として処理可能になっています。
従来はDPPの有料バージョンでしか使えませんでしたが、このカメラ1台で可能になったものです。
ただし、撮影後に1枚ずつ処理するので、一度に何枚も処理するのは面倒かも。
しかし、大型の看板やポスターに使わない限り、この機能は本当に広告しか使わないのでは、と思いました。
EOS R3よりも大きくなったファインダー
EOS R1でファインダーを覗いた瞬間、明らかにR3よりも大きくて見やすいと感じました。
アイピースカップも大型化され、深みが大きくとられているので、外光の漏れがあまり気にならなくなりました。
ちなみに、視線入力機能に対応した別売のアイカップ「ER-iE」に付け替えることが可能です。
RFマウントはほとんどの機種でアイカップ交換不可だったため、万が一の破損に備えて、少なくともハイアマチュア機以上は交換可能にしていただけると嬉しいです。
視線入力AFは、設定と慣れが必要
RFマウントではR3に続く「視線入力AF」。
ボタンやレバーで被写体に合わせなくても、目の動きで追尾できるというものなんですが…
これには、事前に「キャリブレーション」という視線入力の調整と、ある程度の慣れが必要になります。
今回はお試しでしたので効果の程はわからずでしたが、これが自分のものになれば効果を発揮できるものと思われます。
CMOSセンサーの画素数は妥当
R1と同時発表された「EOS R5 Mark II」は、約4,500万画素。
これに対して、R1は約2,420万画素と少なめ。
しかし、一瞬たりと逃せない場面での撮影で、高速連写&高速記録の観点から、この画素数は妥当でしょう。
高感度(常用最高ISO102400)、明暗差が大きい場面、データ送信の観点でも然り。
JPEGならともかく、RAWで1枚40〜50MBとなれば、いろんな意味でキツいです。(EOS R5のRAW-Lサイズで50MB前後)
また、EOS-1D X Mark IIIユーザーである鉄道カメラマンの久保田敦(くぼた・あつし)氏は、「フラッグシップ機はセンサーの画素数を抑えめにしてほしい」とキヤノンへ要望していたそうです。
(ラジオ番組・FMサルース「TRAIN-TRAIN」の放送中に言及)
なので、この画素数で落ち着いて良かったと思われている久保田氏にとっては、恐らく購入に向けて貯金していることでしょう。
CFexpress(Type-B)2スロットも、フラッグシップならでは
EOS-1D X Mark IIIと同じく、CFexpress Type-Bのダブルスロットを採用。
これも、プロ機として妥当だと思います。
メディア自体が高価なのがネックですが、SDに比べて読み書きが高速で、アルミ製のため物理的にもデータ的にも損傷が抑えられる点では安心だと思います。
※R3、R5 Mark IIは、CFexpressとSD(UHS-II)のダブルスロットです。
高周波フリッカー低減は、LED照明普及の現在では必須
照明の点滅を検知してシャッターのタイミングをずらし、露出の変化を防ぐフリッカー低減機能。
キヤノンでは、2014年発売のEOS 7D Mark IIを皮切りに「フリッカーレス」として、以降順次搭載されてきました。この機能は、光源が蛍光灯の場合のみ有効です。
蛍光灯の点滅速度は、1秒間に100回/120回(50/60Hz×2)。
しかし現在はLED照明が普及し、蛍光灯に比べて点滅速度がかなり高速(=高周波)になっています。このため、EFマウント全機種が高周波フリッカーに対応できなくなりました。
EOS R1では、メカシャッター・電子シャッターともに「フリッカーレス」と「高周波フリッカーレス」の両方を搭載しています。
※既にR6 Mark II・R5 Mark IIでも搭載しています。
若干逸れますが、EOS R1では電子シャッター使用時でも、スピードライトが使用できます。(フリッカーレス設定可能)
この観点からも、私は早期にRFへの移行を検討せねばなりません。
なお、フリッカー低減機能については、過去の記事をご覧ください。
最新のフラッグシップ機でも、メカシャッターを残している
最近ではソニーが「グローバルシャッター」、ニコン(Z9、Z8)も電子シャッターのみ搭載、とシャッターシステムを進化させている傾向にあります。
しかしキヤノンでは、このEOS R1でさえもメカシャッターを残しています。
これは、報道やスポーツなど最前線での撮影では、従前から実績あるシステムであることが大前提だからでしょう。
キヤノンが常に掲げている「ゼロダウンタイム」の方針の理由は、その一つかと思われます。
高速の動きもの(特に乗り物)でない限りは、メカシャッターで十分です。
確実に撮れるという面では、非常に安心です。
プロ機は信頼性も重視されるという点から、動きものの「ローリングシャッター歪み低減」など電子シャッターの進化に目が行きがちなのが残念です。
結論:ロマンでは済まされない、究極のプロ機
キヤノンフォトハウスのスタッフさんから色々説明を受けましたが、結局は報道・スポーツなど最前線で撮影するための「究極のプロ機」。
物欲を満たすだけのロマンだけでは、意味がないと思います。
撮影業務における技術を磨き、常に最前線で記録する人こそが持てる、と言っても過言ではないと思います。
憧れだけで終わらぬように。自戒の意を込めて。
(補足)
※1:当方におけるスクールフォトは、以下の機材で使用
EOS 7D Mark II(910g)
EF24-105mm F4L IS USM(670g)
SPEEDLITE 600EX-RT(本体425g+ニッケル水素電池4本120g)
→ 合計 2,125gとなります。
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