夏の終わり
デスクに向かっていると、半開きになった窓からさわやかな風が入ってくる。
そのたびに仕事を投げ出して遊びにに出たくなる。
もし今から急遽休みになったらどう過ごそうか。
バイクに乗ったりスケボーをしたり、あえて部屋でネットフリックスを見るのも悪くない。
愉快な妄想が頭の中を駆け巡る。
10月に入り、過ごしやすい日が増えてきた。
僕は秋になると、よく物悲しい気持ちになったり、心地よい不安に包まれたりする。
一説によると夏から冬にかけて、日照時間の減少を体が感じ取り、厳しい冬に対する本能的な不安が呼び起こされるのだそう。
僕は秋が一番好きだ。
澄んだ空気の中で夕暮れを見れば、特に何も起こらなかった今年の夏の終わりに哀愁を感じたり、夕日に包まれた入道雲を見れば、幼いころ、カラスが鳴いても帰らなかったあの日々を思い出させる。
仕事が終わって帰りのバスを待ちながら、ガラにもなく平日から街で酒を飲んで帰ろうか、なんて考えたりもする。
もっと夜風に吹かれていたくなる。
夏よりもはるかに冷たくなった風は人肌恋しく感じさせる。
それぞれの季節に違った良さがあるけど、秋のエモーションは別格だ。
余談だけど、僕の好きな「野崎りこん」の曲の中にこんな一節がある。
「夕焼けと朝焼けって実はまったく同じ色をしているんだよ」と教えてくれた彼女はもう「彼女」じゃなくなって、去年あの公園はマンションになった。
厳密には夕焼けと朝焼けの色は若干違うようだけど、そんなことどうでもいいよね。センスのある表現だと思った。
それじゃあみんな、短い秋を楽しもう。
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