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北野赤いトマト
2023年7月10日 09:00
静謐な鼓動へ、勝手に逝くなよ、とぶっきらぼうにつぶやいて涙した。そんな言い方しかできないのは、これから訪れる深い喪失に対しての防御だったし、言葉がわからなくても心は通じ合っている、と信じていたから。すると、愛犬は、頭をスクッと持ち上げて後部座席から父母を見て、そのあと隣の私をじっと見た。その眼は、晴れた日の空色でとてもとてもきれいだった。そして、愛犬は、眼を瞑り口をくちゃくちゃさせて大きく長い