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人畜無害と旅をして。

「山本くんは…4番めに好きかな、話しやすいし」

小学生の頃、一緒に帰っていた女子に言われた。
聞いてもないのに。
4番めとは一体どの程度の好きなのか。

「山本くんには相談しやすい、一緒に考えてよ」

中学生の頃、友達の恋の相談をよく受けた。
いや、俺付き合ったことすらないのに。

「山さんは常に安定している」

高校生の頃、オタクっぽい友達と
ヤンキーっぽい友達を繋ぐ真ん中のポジションにいた。
いや、そんなつもりもないのに。

「山本先輩は大人だし、安心できる」

大学生の頃、部活の後輩たちが言ってくれた。
いや、俺だってほんとは遊びたいし、無茶やってる友達に憧れあるよ?
イライラするし、子供っぽい所なんて山ほどあるのに。

「山本くんって、珍しいぐらい人畜無害だよね」

社会人になって飲みに行った店の女将さんに言われた。
いや、俺だって尖った長所が欲しいし、カリスマ性が欲しい。
突き抜けた個性がほしい。
てか、その言葉ほんとに褒めてる?

個性がほしい、看板がほしい、リーダーシップがほしい
才能がほしい、センスがほしい、圧倒的な何かが欲しい
なにかなにかなにか!!!!
自分って一体何なんだ!!!
あまりに普通すぎる自分が嫌いでたまらなかった。

悩みに悩んだ末、30年余りが過ぎ、
今でもぼんやりそんな昔のことを思い出す時がある。

でもよく考えてみれば、
「みんなにとって、安心できる山本くん」
それこそが、僕の尖った個性であり、積み重ねてきた歴史だと気づいた。

1番でも2番でも3番でもないかもしれない。
それこそ、みんなにとっての4番目かもしれない。
ちょっとさみしく感じてしまうときもあるけど。

みんなのあたまの隅に僕がいられたとするならば、
たった1秒でも、一緒にいた時間を、
その人の安心に変えられたならば。

こんなに幸せなことはないなと、今は思う。

いい人止まりで都合のいいやつ上等
人畜無害も突き抜ければ立派な才能。

だから僕は、

もう知り合っているあなたと
まだこれから知り合うあなたと、

話がしたいし、話を聞いていたい。

今はコロナで会えないけどさ、

美味しいご飯を食べて、美味しいお酒を飲んで、
素敵な音楽を聞いて、楽しい話をして、バカみたいに笑って

ああ、明日からも頑張ろうって、
そうやって生きていきたいんだよ。

それが、今現在の僕が思いつく中で、
最高の人生だと思うし、そうなれるように生きていくよ。




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