スタイリッシュを諦めた日のハンバーガー
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「スタイリッシュ」こんな言葉に憧れてきた人生だった。
「センスあるね」こんな言葉が似合う人になりたかった。
部屋を引っ越すたび、黒と白のモノトーンで。とか
カフェみたいにしたいとか。
学生の頃ラーメンズに憧れて
浅野いにおの漫画に衝撃を受けた。
クドカンや三谷幸喜の映画やドラマを見て育ち
岩井俊二がスワロウテイルやリリイ・シュシュを僕に流し込んだ。
コーネリアスを聴いている人はセンスが良いと思ってた。
くるりやナンバーガールが生活に色を付け、
ヴィレバンで流れているボサノバアレンジ音楽を買い漁った。
いわゆる1990年後半から、2000年代の
「サブカルかぶれ」
それが僕の学生時代だった。
僕もいつか、憧れてきた人たちのように、
そうなれる、いつかきっと。
「そうじゃない人生は平凡でかっこ悪い」
そんなことすら思っていたかもしれない。
大人になって、社会人になって。
自分で好きなものを買えるようになって。
「スタイリッシュに生きるんだ」
そう意気込んでから10年以上が経つ。
素晴らしい目覚めを促すためのコーヒーメーカーと
ジャズやボサノバを流すためのスピーカー
目玉焼きを焼くためのスキレット
ポップアップトースターで食パンを焼く
読書をするためのデスク
優しい光を放つ間接照明
創作活動のために買ったMacBook
快眠を実現するマットレスと枕
全て買った上で言おう。
僕は
「スタイリッシュに生きれる人間ではない」
コーヒーメーカーはいつも出番待ち
スピーカーからは何時だろうと深夜ラジオが流れる。
スキレットは修学旅行で男子が買う木刀並みにサラのまま。
朝はバタバタして食パンすら焼かねえ。
デスクに座ることもなく座椅子にいて。
間接照明は使われることなく部屋の蛍光灯だけが動く。
MacBookは人間の脳ばりに機能のごく一部しか使われず、
結局売って、格安のタブレットに姿を変えた。
トゥルースリーパーとは名ばかり
大体毎回いつもコタツの中で寝落ちする
それが真実。
「そうじゃない人生は平凡でかっこ悪い」
確かに平凡でかっこ悪い。
一生懸命仕事して。
うまくいかなくて車で反省して、
あの時のくるりやナンバーガールに慰められて。
隣でいい腕時計をつけて、
僕の使いこなせなかったMacBookで仕事をしている人がいる。
僕はその隣で、格安のタブレットでこのnoteを書いている。
あの時の僕へ。
平凡な人生なんてつまらないと思っているだろうけど、
そもそもスタイリッシュに生きるのが向いていないから
穏やかな心と、どっちかといえばポップなキャラクター、
サブカルかぶれで身につけた
「深くはないけど大体の人と浅くは話せる会話の引き出し」
それだけでまあまあ幸せに生きてるから、
早く斜に構えるのやめて、楽になりなさいよ。
スタイリッシュに生きてると思ってる人も
そうでないように見える人も
みんな一生懸命に生きているだけ。
何を幸せとするかは人それぞれ。
気付いてしまえば簡単なことだよ。
さあ、あしたも頑張って生きて
大好きな音楽と芸人さんのラジオを聞いて、
たくさん食べて、お風呂入って。
たまにはちゃんとベッドで寝ろよ。
良いマットレスあるんだから。
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