またきっといつかどこかで 1
「おつかれー、帰るよー」
「チーフ、お疲れ様です」
「ああ、2日間ありがとうね、お土産食べてね」
「いただきまーす」
「また明日ねー」
...日常に戻ってきたなー。
.........。
───ガチャ
「いらっしゃいませ、あ、恭輔くん」
「こんばんは、マスター、ビールと納豆ピザで」
「旅行どうだった?」
「楽しかったですよ、温泉も入れたし、花見して仕事のことも忘れられたし、申し訳ないぐらい色んなところ連れてってもらっちゃったし」
「そりゃよかった」
「はい、これお土産、みんな来た時食べて、
ああ、あと昔の色んなこと思い出しちゃったな」
「あのさ...」
「ん?」
「マスター、この店15年続けてて思う、バーテンダーに必要なことって何?」
「え?必要なこと?、なんやろうね、誠実さと、ちょっとひねくれてることかな」
「誠実さとひねくれ....」
「そう、誠実さとひねくれ」
「...例えば、例えばの話よ、大変なのはもちろん分かるけど、僕がバーテンダーやれる素質あると思う?」
「恭輔くんが?今日はやけに難しい質問するなー」
「この店ができて15年くらい、僕がこの店に来るようになって10年。この10年の間に僕は彼女とも別れて、学生時代の友達とも会わなくなった。今現在の僕の人間性、良い部分も悪い部分も表も裏もここでずっと話してきたから、僕の事を1番知ってるのはマスターだと思う。そんなマスターが僕の事どう思うのかが知りたい」
「んー、そうやな、出来んことは無いと思う、でも」
「でも?」
「恭輔くんは───────────」
「はー、なるほど!そっか、自分でもそう思うわ」
「....マスター、僕、仕事辞めようと思うんです」
「えっ!」
「....その前に、少しずつ、話しても良いですか?思い出した、ここ15年くらいのこと」
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