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LayerXがコミットする「身の丈」D&I(ダイバシティー&インクルージョン)

はじめに

どうも、すべての経済活動を、デジタル化したいLayerXの福島です。

本日、LayerXはD&I(ダイバシティー&インクルージョン, 以下D&Iと記載)に関するポリシー「LayerX D&I Policy」を発表しました。

そもそもどういう意図でこれを出すのか?どういった考えでこのポリシーにコミットしていくのか?それはLayerXという会社の強みにどうつながっていくと考えてるのか?を今日は書いていきたいと思います。

ポリシーの意図

ポリシーを打ち出す上で重要視したのは2つです。

①「経営」が打ち出すコミットできるポリシーであること。広報施策の1つにしないこと

② 実行可能な「身の丈」D&Iであること

です。

ポリシーをみたメンバー1人1人が「なんか突然きれいごといいだしたな」「そうはいってもうちはまだベンチャーだし、それよりも重視することがあるよな」と感じて、しらけてしまわないよう、現実と理想のギャップが大きすぎるものにはしたくないと考えました。

LayerXがこのポリシーを実行していくことで、会社の優位性を作り出せる。そのための第一歩として、身の丈にあった、実行可能なポリシーをという点に非常に拘りました。

特に我々のようなベンチャー企業は、今日、死ぬか生き残るかの戦いをしています。外れ値の会社です。世間で言われる、SDGs, ESG, D&Iなどに対して、ぐうの音も出ないほど重要だとわかっていながら、短期的には企業価値に直結しないように見える概念に対してどう向き合っていいか頭を悩ませている経営者も多いと思います。単なる広報施策の1つでしょと冷ややかに考えてる方も少なくないのではないでしょうか。

我々は「理想を定義する」「現状を理解する」だけでは足りないと考えました。それに加えて、「なぜLayerXにとってD&Iが重要か」「会社としてどう競争優位につながっていくか」「一歩目として実行可能か」などを議論しながらこのポリシー策定を進めてきました。その中で経営としてコミットできる、実行可能な「身の丈」D&Iを出していこうと決めました。

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誤解を恐れずに言えば、ベンチャー企業とはダイバーシティとかけ離れた、一部の偏った熱狂的なチームから生まれる組織です。そうやってはじまるベンチャー企業もプロダクトが広がり、社会のインフラになるにしたがって段階的に多様性を組織に取り入れていくものだと思います。

こうした背景から、このポリシーも、Ver.01とし、ベンチャー企業らしくフェーズによってVer.02, 03と順次アップデートしていくものとしていきたいです。

(専門家の方から見ると、疑問に感じる点やフィードバックが必要と感じる部分が多々あると思います。そういった意見も我々はポリシーを世に晒すことで積極的にフィードバックを取り入れ改善していきたいと思っております。)

どういったポリシーか

LayerX D&Iポリシーの根幹は2つあります。

①プロダクトを通じた社会全体のD&I活性 (Empowering D&I through our Products)

②“違い”を歓迎する採用・組織運営 (Appreciating Diversity)

の2つです。

プロダクトを通じた社会全体のD&I活性 (Empowering D&I through our Products)

ベンチャー企業は、プロダクトを通じて社会に今までにない価値を作る、加速させるというのが本分です。

LayerXでは事業・プロダクトを通じて以下のことに取り組んでいます。

①業務の効率化によって多彩な働き方が加速するような「LayerX インボイス」をはじめとしたソフトウェアの提供。社会における見えづらい不便を解決し、生産性が高い社会にする。

②秘匿化技術により、「多様な人の参画を可能にするインターネット投票の仕組み」を提供。安心してパーソナルデータを預けられ、活用できる社会にする。

③個人を含む「包摂的な金融商品アクセス」を実現し、日本に眠る1000兆円の現預金を動かす。お金に関する心配がなくなる社会にする。

プロダクトを通じて例えば、

「月末月初のルーティンワークから解放されて、新たなキャリアアップにつながる仕事、スキルの勉強に時間を充てられる」

「インターネット投票で足腰の弱く投票所まで行けないお年寄りの方や、海外に赴任しており、物理的に投票に行けない方などの投票への参加を可能とする」

「今までアクセスできなかった優良な投資商品にアクセスできるようになり、お金の不安がなくなりより豊かな人生が送れるようになる」

といったことを実現していっています。ポリシーをVer.02, Ver.03にする頃にはプロダクトの提供範囲も上記に限らずより幅広いものにしていくつもりです。

ここで、当社が提供するプロダクトについて第三者からご評価を頂いた内容を紹介します。先日行われたReversible World 2021の「GREAT PRODUCT 30 Award」において弊社が提供する「LayerXインボイス」はSDGs of the Yearを受賞しました。

受賞理由は

「事務の効率化を図ることで労働資源の最適配分が可能になる」「デジタル化により、一人ひとりが尊重される仕事ができるようになる」とのご評価をいただき、持続可能でより良い世界を目指す国際目標であるSDGsのゴール8「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」や、ゴール9「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に資するものとして、この度のSDGs of the Yearの受賞に至りました。

といったものです。

我々自身、受賞するまで正直こういった意識をもっていませんでした。こういった評価を通じて「ああ、自分たちが提供しているプロダクトにはこういう意味があるのか」「D&Iという観点でも実は貢献しうるのではないのか」と視点を改めさせてくれました。

ベンチャー企業にとって遠いものに感じるD&Iも、ベンチャー企業の本分たる、プロダクトの提供・改善を通じて社会をエンパワーすることができる。プロダクトを磨き続けることで、社会全体のD&Iをすすめることができる。と感じました。

プロダクトを磨き続けることはLayerXにとっての企業優位性に直結するものです。「プロダクトを磨くこと」と「社会全体のD&I活性」がリンクする具体的な事象を、発見した瞬間でもありました。

“違い”を歓迎する採用・組織運営 (Appreciating Diversity)

一方で、LayerXの課題は明確に組織の多様性欠如にあります。LayerXの現状を一言でいうと、「男性エンジニアがあつまった男子校」です。

LayerXの2021年6月30日時点の
エンジニア比率...55.2%
女性比率...5.26%

これは問題です。なぜ問題なのかと言うと、LayerXのプロダクトの利用者には多様な方々がいます。いまの組織構成でプロダクトを作っていくと、どうしても「男性エンジニアがあつまった男子校」視点でのプロダクトになってしまいます。LayerXが目指す理想はプロダクトを通じた社会全体のD&I活性であり、これではその目標に到達できません。ニッチなもので終わってしまいます。LayerXの競争優位は限定的なものに留まってしまいます。

LayerX D&I Policyではここを明確な課題として、経営がコミットするポリシーであると意識しています。

日本中、世界中の多様な方々にプロダクトを利用してもらうために、作り手の視点も多様化していかないといけません。

またもう一つ重要な課題意識は、組織としての「優秀さ」の解釈の拡張が必要ということです。

LayerXの今までのフェーズはプロダクトを立ち上げ、マーケットフィットを探すというフェーズでした。このフェーズで求められるものは1にも2にも「開発速度」「高速な仮説検証」でした。ですので、「今までの」LayerXで「優秀」とされる人は、頭が抜群に切れて、高速にユーザーの仮説検証できる、開発力があるエンジニアでした。

しかし現在では一定のマーケットフィットが見えて、フェーズが変わっています。

プロダクト開発力はそのままの強みにしつつ、プロダクトを広げるためのマーケティング、セールスやプロダクトを定着させるためのカスタマーサクセスが非常に重要になっています。

営業では顧客の課題に寄り添い、一緒に並走できる力が「優秀」とされます。カスタマーサクセスでは、ホスピタリティが高く、丁寧にボールを拾えて、顧客の成功にコミットできる方が「優秀」です。プロダクトの観点で、リテラシーがなくてもユニバーサルに使える、やりたい課題まで短いステップで解決できるようなデザイン視点的なプロダクト改善も重要で、これもまた違った「優秀さ」です。

LayerXではプロダクトを通じた社会全体のD&I活性を実現するために“違い”を歓迎する採用・組織運営 を進めます。

具体的には

「プロダクト開発の視点に多様性を入れることで、より広く受け入れられるプロダクトに改善すること」

「プロダクト開発視点のみでなく、プロダクトを広める、販売する、定着させるのプロセス全体を改善していく。そのために「優秀さ」の解釈を拡張していくこと」

と定義して、組織のD&Iも実現していきたいと考えてます。そうすることが、LayerX社の競争優位につながると信じられるので、経営としてコミットできる、実現していけるものと考えます。

じゃあ今日・明日から何するの?

プロダクトに関しては今まで通り、自信と自負を持って開発改善を続けていきます。それにより前述した社会に少しでも近づけるようにしていきます。

組織の観点は課題が多いです。「プロダクト開発視点の多様化」「優秀さの定義の拡張」を通じて、多様な視点、人材が集まる場にしていきます。

今までLayerXになかった強みを持つ「違い」(diversity)を歓迎していきます。

直近の取り組みでは、経理出身者をPMとして抜擢する。セールスやカスタマーサクセス、デザイナーといった今までLayerXにはいなかった「優秀さ」を持つ方を採用し組織化することを地道に進めています。

こういった「違い」を尊重し、お互いの個性を活かせるような働く場を提供(inclusion)することにもコミットしていきます。

これには様々な働き方・多様な考え方を組織でカバーできる事が重要です。

直近の取り組みでは「新型コロナウイルスワクチン接種に伴う勤怠の取り扱い」にて希望者が就業時間内に新型コロナワクチンの接種を受けることを可能とし、接種当日や翌日以降の副反応による体調不良や痛みが生じた場合の自宅などの療養についても、特別休暇(有給)としました。

また、非常にプライベートな話ではあるものの、私は今年第一子が誕生予定です。そこで育休を取ることを宣言します。ベンチャー社長が育休を取るという文化はまだ標準ではないものの、私自身先陣を切って育休を取ります。そうすることで、役員・社員も育休を取りやすい文化になっていくと思っています。

また日々の意識改善として「エンジニア中心の男子校」故に生まれる社内スラングなども少しずつ意識的に言葉遣いから変えていこうということしています。専門家をよび「アンコンシャスバイアストレーニング」の勉強会もしていただきました。こういった日々の細かい意思決定、トレーニングの積み重ね、「身の丈」D&Iこそベンチャー企業が取り組むべき一つの形かなと考えます。

こういった多様な観点、価値観を会社として尊重していくことで、プロダクトを通じた社会全体のD&I活性“違い”を歓迎する採用・組織運営 を進めていきます。

おわりに

批判、アドバイス大歓迎です。私自身D&Iという観点に関してはこのポリシー策定が初めて深く考える機会でした。専門家の方からみると的外れ、ここが違うという点も多くあると思います。

ベンチャーの持つべき美徳として、「まず世の中に出す」「評価にさらされる」「評価と真摯に向き合い改善する」というものがあります。

LayerX D&I Policyも例にもれず、この観点で、世に問い、評価にさらされ、真摯に向き合い改善していきます。

そしてそこにコミットすることが「LayerXの競争優位につながる」「だから組織が強くコミットができる」という姿を目指していきたいと思います。

さらにおわりに

どうせ最後に採用リンクがでてくるんだろうと思った方もいるかも知れません。

今回は意思をもって採用リンクをのせません。

LayerX D&I Policyは広報施策でもなければ、採用施策であってはいけないと考えます。あくまでこういったポリシーを経営として組織としてコミットし実行していく宣言だと思っています。

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