被災者への支援は、三つのフェーズに分けて進められます(ぼうさいペディア #2)
今回は、大きな自然災害がおきたときに、実際に、被災された方に対して、国や自治体が行う支援のおおまかな姿を説明します。
地震などの大きな自然災害が起きた場合には、起きた直後から3日間と、それから3ヶ月から6ヶ月、それ以降の三つのフェーズに分けて、国や地方自治体の様々な支援が行われます。
この三つのフェースでそれぞれ被災した市民の方の心構えが異なりますので、それを説明します。
また、この三つのフェーズは、国や自治体の職員はそれぞれ名前をつけて対応しています。こういう「防災ワード」は、市民のみなさんにはわかりにくいのですが、被災者の側でも、あらかじめ、こういう「防災ワード」を知っていると何が起きているかわかって安心できますので、その部分も丁寧に説明します。
本日のポイントは以下の三つです。
① 被災者の支援は、直後から3日まで、4日目から3~6ヶ月、
それ以降の3段階で異なります。
② 国や自治体では、「緊急事態対応」「応急対策」「復旧・復興対策」
という“防災ワード”で呼びます。
③ それぞれの段階で被災した市民の方の心構えが異なります。
あらかじめ理解して自然からの被害から立ち直ることが大切です。
それでは始めましょう。
防災対策は3つのフェーズに分けられる
防災対策は、大きな自然災害が起きてから、3日間を「緊急事態対応」、3日目から避難所が閉じられる間(3ヶ月から6ヶ月くらいまで)を「応急対策」、それ以降を「復旧・復興対策」といいます。
難しい言葉ですけど、これまでの経験から、この3つにわけて行政が対応したほうが、被災された市民のお役にたてるということで、対策を大きく3つにわけています。
さらに、被災された市民の立場からの心構えも、この三つのフェーズで異なります。
そのため、この三つのフェーズごとに、以下述べていきます。
なお、大きな自然災害がおきるまえの準備、例えば、防災訓練とか、みなさんも参加したことがあると思いますが、これは「災害予防対策」といいます。
緊急事態対応時は、まず自力で生き抜きましょう
台風などでは、気象予報であらかじめ危険な区域と時期がわかります。この場合には、直前からの対応、そして、実際に、台風、地震や火山の噴火などで実際の被害が生じてから、3日間(72時間)の対応を「緊急事態対応」といいます。
この3日間(72時間)は、こわれた建物などに埋もれている被災者が、生きて見つかる可能性がある期間とされています。
これは阪神・淡路大震災のあとにデータを調べてみてわかりました。
このため、最初の3日間は、「生き死に」の瀬戸際にある被災者を集中的に助けるための期間です。
自衛隊員とか市町村の消防職員、警察職員は、現場で生存者をみつける作業に全力で取組みます。
また、自衛隊員などが現場に行けるように、国や県、などの道路関係の職員や建設会社の社員が道路を塞いでいるがれきなどを除く作業も行います。
この緊急事態対応に、具体的にどう行動したらいいかは、次回以降、災害ごとに詳しく述べたいと思います。
ここでは、とても大事な心構えをお伝えします。
災害発生の直前そして直後は、自分の判断と力で、自分と家族の命を守る
ということです。
さらに、自衛隊員などは、生き埋めになった方など、生き死の瀬戸際にある方の救出に全力を挙げていますので、命を守ったあとも三日間は、自分で水や食料などを確保して、自分の力で生き抜いていくことが必要になります。
応急対策時は健康第一。困ったことは声に出そう
大きな自然災害が起きてから3日たつと、市町村や自衛隊などの職員が、避難所などに避難している被災者への支援を開始します。
市民のみなさんは、自分の力で避難所に避難しているケースが多いと思います。自宅でなんとか暮らせる方でも、水や食料、あるいは情報を求めに、避難所で通っていると思います。
なお、避難所の確認の仕方や生活の仕方などは、今後丁寧に説明をします。
避難所での生活は不便ですが、少しずつ落ち着いてくると、市町村がさまざまな備蓄していた物資を避難所でくばったり、自衛隊が食事などを提供することもだんだん始まっていきます。また、国もこのような避難所での環境改善や食事の提供などについて補助を行って支援をしていきます。
この避難所の生活は、その後の住宅の再建や仕事の再開などに向けた準備期間ですので、まず、健康を維持して過ごすことが大事です。
また、自治体などの支援に加えて、ボランティアをはじめとして、お医者さんや弁護士さんなど、さまざまな支援が行われます。
とにかく、応急対策の時期は、みなさんが健康を維持し、そして、生活や仕事の再建につながる大事な時期です。困ったことがあれば、どんどん助けを求めてください。全国のさまざまな人たちが助けてくれます。
なお、この避難所の生活は、被災した方の住宅の被害が軽いときには、自宅などを修理すればおわりますが、大きな災害のときには、自宅がそのまま住めない状況になることもおおいので、その場合には、県が応急仮設住宅という仮住まいを用意するまで続くことになります。
応急仮設住宅というのは、市町村などは3か月程度で供給する計画にしていますが、これまでの阪神・淡路大震災や東日本大震災などの経験から、半年程度はかかると思っていた方が安全です。ですから、3ヶ月から6ヶ月は避難所生活が続きます。
3ヶ月から6ヶ月、避難所で暮らすことは大変なことです。だからこそ、苦しいこと、つらいことがあれば、助けてほしいと声をあげてください。
復旧・復興対策の時期は、いよいよ自分の力で生活を取り戻します
避難所の生活は、やはり環境がわるいので、県が応急仮設住宅という仮の住宅をつくっていきます。これが3ヶ月から6ヶ月ぐらいでできます。
同時に避難所などで暮らしている間に、市町村が住宅を建て直すための資金などの相談にのってくれます。最大、国と県の資金をあわせて最大300万円のお金が住宅の再建のために支払われるなど、いろんな支援が用意されます。
詳細は今後お話をします。
大事なのは、国などの支援もありますが、ご自宅や仕事場を直して行くには、国の支援だけで全額をまかなうことは難しく、皆さんのこれまで貯められた資金や金融機関の融資などでお金を確保して行う必要があります。
この意味では、復旧・復興対策の時期になると、そろそろ被災した皆さんも自分の力を振り絞って、自宅の再建や仕事場の再開に取り組む必要があります。
もちろん、ご高齢などで、自分の力で自宅の再建が大変な場合には、県や市町村が安い家賃の住宅を用意するなどの対応はちゃんとしてもらえます。
でも、自分の力で自宅などを再建できるのであれば、それに越したことはありません。
復旧・復興期では、結局、どのくらいのお金を国や自治体から支援してもらえるのか、という部分が大事になってきます。このあたりは、すでに大きな災害を何度か繰り返しているので、次の大災害のときの支援の内容もほぼわかっています。
事前の知識がなくて大災害に直面すると、むやみに不安になります。また、情報が混乱して間違った情報が流れたりします。それを防ぐために、次回以降で、丁寧に、支援の仕組みを説明したいと思います。
お金のはなしで、ややせちがらいですけど、やっぱりお金がどのくらいもらえるのかは、是非、大災害で被害にある前に知っておいてほしいと思います。
第二回のぼうさいペディアのまとめ
①大きな自然災害が発生してから3日間は、
なんとか自分の力で自分と家族の命を守りましょう。
②そして、4日目からは、避難所での生活が始まりますが、
健康維持を特に注意してください。
そして、苦しいこと、大変なことには遠慮なく、声をあげてください。
③応急仮設住宅ができて避難所から移る、
3ヶ月から6ヶ月たったころからは、お金のことを考えながら、
自宅や仕事の場を再建することを考えましょう。
国も自治体もお金という面でも支援します。
今回は、三つのフェーズにわけて、防災対策の大きな枠組みと私たちが被災者になったときの心構えをまとめてみました。次回以降は、それぞれの段階ごとの防災対策や支援のしくみを、具体的に述べていきますね。
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