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不法投棄のチェストをこっそり拾ったら大変なことになった……。

タイトルの通りなのだが、我が家は拾ったチェストのせいで大変な騒ぎとなっている(現在進行形)。

数日前、商店街へ抜けるために、近所の神社を通りすがった。その神社はかなりオープンなつくりで、近所の子供の遊び場であり、休憩用のベンチも置かれ近所のご老人の休憩場所でもあり、そしてみんなの抜け道となっている。

神社の境内の藤棚の下に、まだまだきれいで破損もないラタンチェストが捨てられていた。本体がぼーんと捨てられていて、そのまわりに引き出された引出が、散らばっている。本体には、神主さんが書いたであろう「不法投棄は犯罪です。ただちに持ち去れ。」の太文字の張り紙。

ほほぅ……である。

じつは、引っ越してすぐ、やさしい方から、ラタンのチェストをひとつ無料でいただき、キッチンで非常に便利に使っていたのだ。ちょうど、服や靴を収納するチェストがいるなぁと思っていたわたしたちは、このチェストにひそかに目を付けていた。

あくる日もあくる日も、チェストは消えなかった。「不法投棄された罪の品」として哀愁を放ちつつ、そこにあり続けた。当然である。不法投棄した本人は、気まずくてここを通れないだろう。本人は、きっとどこか少し遠いところからやってきて、不法投棄するだけして去って行ったにちがいないのだ。

雨が降った夜、うめとわたしはあのラタンチェストが濡れていることがどうにもこうにも気がかりであった。いつのまにか、不法投棄されたラタンチェストが、もはや自分たちのラタンチェストのように感じ始めていたのである。

神主さんはあのチェストが邪魔だし、不法投棄した人物はあのチェストは絶対に不要なわけで、こっそりいただいてもいいのではないだろうか?

雨が止んだ深夜2時、わたしたちは深夜のテンションも相まって、あのラタンチェストを拾ってくることに決めたのである。

深夜の境内、濡れそぼるチェストをテンションだけで持ち帰り、引出に溜まっていた落ち葉やダンゴムシ(2匹)などを取り除ききれいに拭き上げた。どこも壊れていない素敵なチェストである。素晴らしい。重いチェストを運び入れた疲労感もあり、チェストはとりあえず洋室に置き、その日は気持ちよく眠ることができた。明日はあの中に、きれいにたたんだ服をしまうんだーーーと想像しながら。

朝、さわやかなはずの目覚めは裏切られた。部屋が、なんだかくさいのである。ブコ(猫、雌)がめったにない粗相をやらかしたのか?それにしてもくさい。なんだこのにおい、なんか嗅いだことのないにおい……。

そう思いながら鼻をひくひくさせ原因を探す、というかうっすらわかっていたんだけど、発生源は当然、昨夜拾ってきたラタンチェストなのである。

とくに、チェストの足の部分に鼻を近づけたときなど、懐かしのコピペのごとく「エンッッッ!!」と奇声を発しつつのけぞるレベルである。

なんだなんなんだこのにおいは。たとえるなら、血抜きを失敗したラム肉を常温で一か月腐らせドブと混ぜたようなにおいである。勝手に拾ったくせに、これを不法投棄したやつに腹が立ってくるレベル。くさいならくさいって書いとけ。「とてもくさいです。」と一言書いてあれば拾うこともなかっただろうが!である。

しかし、どうもくさいのはこの脚の部分、地面に接している部分だけのようなのだ。まだ見込みはある……。貧乏で鍛えられた『とりあえず力業でなんとかする力』をなめるな……。

まず、王道、トイレ洗剤である。これをたっぷりふきつけ、2時間ほどおく。流して拭き上げ、天日に干す。ははは、トイレ洗剤に天日なら大概のものはどうにでもなるだろう、そう思ったわたしを殴りたい。そこに残ったのは、腐ったラム肉のドブ臭にレモン汁をかけた最凶の悪臭であった。

しかしまだ諦めない。キッチン用漂白剤に、片栗粉を混ぜたペーストを用意する。そして、ペーストをくさい部分にまんべんなく塗り込み、その上からラップでおおい、浸透を助けるのである。この漂白剤ペーストで、古マンションの頑固なカビをなんとかしてきた実績がわたしを奮い立たせた。そして数時間後、そこには漂白剤を大量にぶっかけたドブ漬け腐敗ラム肉のレモン添えが完成した。わたしの鼻は死んでしまった。

それでもわたしたちはあきらめない。もうくさい部分を切って捨ててしまえばいいのである。これでだめなら諦めよう。風呂場でうめがのこぎりでチェストを切断している。冒頭の意味のわからない写真がその様子である。手伝おうか、と扉を開けたら、狭い密室内に立ち込めるあまりの悪臭に呼吸が変になるので焦って閉め、全く意味のわからない写真しか撮れなかったレベル。それくらいくさい。うめは危険だから、と男気でわたしの手助けを断り、尊い犠牲となったのだ。

かくしてチェストの脚は切断された。切断された脚はさらにバラされ、二重にゴミ袋に封印され、ベランダの片隅で収集日を待っている。

けれどもう、鼻がくさいのである。そして長時間チェストが閉じこもった風呂場がくさい。換気扇をいくら回してもくさい。5,000円くらい払ってこのにおいをきれいさっぱり消臭できるものならそうしたいレベル。

いくらケチでも、やはり捨てられているものは何か理由があって捨てられているのだから、拾うべからずである。

不法投棄したやつには、神主さんの分も合わせて、一日に一度あの悪臭が鼻をかすめる呪いを心の中でかけておくこととする。

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