灯りに灯された「ベンガラ灯り」という祭り
岡山県は高梁市、ベンガラのまち「吹屋」を訪れて2週間。短い滞在ながら濃い濃い体験となった3日間を経て、さて次はいつ行こうかな、と思っていたものの、ソッコーで再訪の機会が訪れた。
今回のお目当ては「ベンガラ灯り」というお祭り。富山県の有名な「おわら風の盆」と雰囲気が似ているな、と先日の訪問時にポスターを見て思っていた。(なお、「おわら風の盆」は、何年も前から行きたいと思いつつ、まだ行けていない…来年こそ)
「ベンガラ」というのは、酸化鉄を主成分とした土から作られる天然顔料のことで、吹屋の特産品である。というのは、前回の訪問記でも軽く触れたが、実際その用途はかなり幅広い。
今回のベンガラ灯りでは
・ベンガラの町並み(建築物)
で
・ベンガラ焼きの灯篭(陶芸品)
を並べ、
・ベンガラ染めの衣装(衣類)
を着た踊り手が踊りを披露する
という、ベンガラづくしのお祭りなのだ。
さて、そんなベンガラ灯りが夕方には始まった。
ふるさと村の通りの真ん中に踊り手たちが並び、吹屋小唄の調子に合わせて、少しずつ少しずつ進んでいく。黒っぽい衣装の男踊りの方は、時々地面に膝をつくくらいの、大きく機敏な動きを見せていたが、全体的にキレのある踊りというよりは、ゆるやかで流れるような動きが特徴的。
「幽玄」「妖艶」といった形容詞が頭に浮かぶ。
お祭りは夕方から始まった第一部と、少し時間を空けての第二部に分かれており、そのどちらもが通りを進んでいくタイプの流し踊り。
一部と二部の間には、ステージで踊りを披露するような形の定置踊りが行われた。(踊りの呼び方については、うろ覚えだが、伝われば幸い)
なお、夕焼けくらいのタイミングで始まったベンガラ灯りだったが、第一部が終わる頃にはすっかり暗くなっていた。
日が暮れていく。夕日の赤が薄くなり、若い夜の濃い青が近づいてくる。そんな一日の終わりの空気と、ベンガラ灯りの雰囲気が妙に溶け合っていて、なんだかわからないけど祈りたくなるような、神聖とも言えるような心持ちになったのは僕だけじゃなかったのではなかろうか。
やっぱりお祭りって最高だ。
とても満足な一日となったが、ベンガラ灯りはどういった成り立ちでいつからやってるのかな、と思い地元の方に話を聞いてみたら、なんと始まったのは10年ほど前だということが判明。
100年単位での歴史なんかがあるのかと勝手に思っていたので驚いたが、これも吹屋を盛り上げるために地元の人が考えて始めたもののひとつということらしい。なんとなく感じた手作り感の理由はそこだったようだ。
個人的には、それも吹屋ならではの魅力だと思えたし、ベンガラ灯りはこれからも長く続いていく文化になりそうだと感じた。そういうのもいいよね。
ちなみに、今年のベンガラ灯りは、天気の関係で一週間延期された9/28(土)の開催となった。それもあってか、例年に比べて少し人出は少なかったらしい。
来年はもっと盛り上がる吹屋を見られるかな?と、いまから楽しみな筆者だった。
(文・写真 岡本大樹さん
本人の了承を得て、フキヤビト通信へ記事を載せています。)