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滞在しないとわからない吹屋
大人の里山留学生として、2024年10月から2か月間、吹屋ふるさと村に滞在しました。私はミュージアム巡りや自然、歴史的なスポットを訪れることをライフワークとしています。今回は、吹屋に滞在したからこそ知ることができた「吹屋の文化体験3選」をご紹介します。
吹屋地区は、2020年に「『ジャパンレッド』発祥の地~弁柄と銅の町・備中吹屋~」として日本遺産に認定されました。美しい町並みだけでなく、現存最古の木造校舎である吹屋小学校、旧片山家住宅、かつて銅が採掘されていた笹畝坑道、映画のロケ地となった広兼邸など、歴史的な施設が数多くあります。決して広いエリアではありませんが、1日で全てを見て回るのはなかなか難しいです。しかし、これらの施設は既に観光情報などで紹介されているため、今回はそれ以外の魅力について書きたいと思います。
夜の町並みの…
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吹屋ふるさと村といえば1977年に高梁市吹屋伝統的建造物群保存地区として認定されたベンガラの赤い町並みで有名ですが、地区で暮らす住民は100人ほど。観光シーズンの週末は終日観光客で賑わいますが、日が暮れると驚くほど静寂が広がります。会合の帰りに市街地から戻った際の町灯りの美しさは、まるで映画のセットのようでした。ただし、秋が深まるとイノシシに遭遇する可能性がある場所もありますので、ご注意ください。
引き継がれる民俗芸能
秋祭りと「渡り拍子」
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11月3日、吹屋地域で開催された秋祭りに参加させていただきました。このお祭りは観光イベントではなく、地域住民のために行われる伝統行事です。前日から通りには紅白の横断幕が飾られ、御旅所のノボリが設営されます。そして迎えた当日、女性たちは朝早く集会所に集まり、お祭り関係者用のおにぎりを作りました。その後、神社で神事が行われ、子どもたちは練習を重ねた「渡り拍子」を町内で披露しました。行く先々で住民がお出迎えしてくださり、温かい接遇を受けました。なお、渡り拍子は子どもの数が減少したため一時は途絶えていましたが、現在は復活しています。以前は男子だけが舞っていたのですが、今では性別を問わず舞っています。高梁市内では各地区で異なる衣装で行われているので、違う地区の渡り拍子も見てみたいと思います。
備中神楽
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もう一つ忘れてはいけない民俗芸能は備中神楽です。滞在中、聞こえてきた太鼓の音に導かれていった先では備中神楽の公開練習が行われていました。ここでは民俗芸能が日常にあることを目の当たりにしたのでした。
年に一度の登り窯の火入れ
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吹屋には陶芸館があり、滞在中の10月下旬に、年に一度しか行われない登り窯の火入れに立ち会うことができました。普段は電気釜を使用しているそうなので、昔ながらの登り窯を使って作品を作る体験は非常に貴重です。火入れは神事から始まり、薪割り作業をする人、一晩中火を守る人、作業者の食事の世話をする人など、多くの人が関わります。高梁だけでなく岡山からも老若男女が集い、ひたすら夜明けまで1300度を目指して窯に火を焚き続ける様子は、まるで体育会系の活動のようでした。窯の近くはオンドルのように暖かく、何度も眠気に襲われましたが、翌朝6:30頃、無事に目標温度に到達し、不思議な達成感に包まれました。
あとがき
住民の方にとっては日常の一コマかもしれません。ですが、札幌出身の私から見ると脈々と続く豊かな文化と共に暮らす吹屋の方々がとても羨ましくあると同時に、如何にして未来に継承していくのかと少し考えさせられました(答えはすぐに出ませんが…)。とはいえ、同じ時を刻ませてもらえたことに、感謝いたします。
(文・写真:高尾 戸美)