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ライン

何度も訪れている奈良の三輪山に
5年ぶりに向かった

ここに来るといつも裸足で御山を登らせて頂いていたのだけれど、世界中に蔓延しているあの感染症のおかげで、昨年から登拝禁止となっていた

登れなくともご挨拶を…と
目指した境内には、人がいっぱい

年始の話ではない
年末12月30日

それも後から後からやってくる

最後に三輪さんに登った時
嫌な感じがした

踏み荒らされた聖域
登山感覚の大勢の人
薙ぎ倒された木々
大量に置かれた酒瓶

弱っているような
お困りのような

そんな感覚がしたのを思い出した

呼ばれた人しか辿り着けないと言われた御山は様変わり

聖域を聖域とも思わない人も含めて大賑わい
祈りを込める最中にもシャッター音や甲高い声、騒ぐ声があちこちから聞こえる

静かに目を閉じて、交信を試みる
幾度となく集中は切れかけるけれど

かつて登った三輪山をイメージし
磐座までゆっくりのぼる

ふと、右から左へ
私の体を通り抜ける感覚があり

通じた感覚がした

体は軽く、気が巡る

御山は、人が足を踏み入れなくなって
生気を取り戻したのだろうか

以前より澄んだ空気と、充実した気

これはこれで良かったのかもしれない
そう思いながら、三輪さんを後にした

10年前、人生をどうしていいのか分からず、人間社会でどうやって生きていけばいいのかと困り果てていた時

奈良の青年から連絡があった

かつて、人気を誇った
もののふという右翼バンドがあった

彼らが歌うのは

日本国万歳
天皇を中心とする神の国

など、あからさまな右翼曲

ところが、デビュー後、鳴かず飛ばずだったようで、私が出会った時、残っていたのはボーカルただ一人

日本、日本人、日本国
国や天皇を高らかに歌い上げていた彼もまた
人生に迷っていた

動きたくても動けない
何か頑張りたい変わりたい
生きろ生きろ

そんなとても個人的なことを歌い上げる
関西のヤンキー青年

人生どうしていいのか…五里霧中
そんな二人

1人きりの歌歌いと
1人きりの追っかけ

ライブハウスやバーで
朝まで飲み明かしていた

最初に動いたのは私だった
このままではいられないと旅に出た

旅先で彼に勧められたのは三輪山

それから10年経った
私は彼の歌が大好きだったし

奈良の丘で彼の歌を口ずさみ
とても幸せな気持ちになったことを
今でも昨日のように覚えているのだけれど

彼は、もう歌ってはいない

私は、教えて貰った三輪山にご縁を頂き、人生の転機や迷った時、いつもここに帰ってくる

人との出会いは不思議だ

後から振り返るとその出会いは必然だったと実感するものの、渦中に気づくことはなかなか無い

どこでどうしているのか
何も分からない奈良の青年

まるで、三輪さんと出会うための仲人のよう

今、ここ
毎日、毎瞬
何を選んでどう生きるか

その結果、今を生きている

分からないね
ドキドキする

今の先には何があるのだろう

しんしんと降り始めた雪
冷たい空気をすぅっと吸い込む

ただいま


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