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蕗ノート 命が立ち上がる

月山山中の雪の上に寝転んで空を見上げていた。
誰もいない静かなブナの森に、いきなりバサッと音がする。

立ち上がったのは、雪に押し倒されていたブナの木あちらでもこちらでも立ち上がっている。

見渡すと、ここにいます!とばかりにたらの芽、こしあぶら

赤ちゃんも、ヤギちゃんも一緒。
命はまんまるつぼみから、やがて立ち上がる。

自然の中で時を過ごすと自然から溢れるほどのメッセージがやって来る。
風は木々を揺らすから、木々は葉っぱで集めた色々を幹を通って根っこまで送れるのかな。
踊る時、両手をあげるのは私たちもユサユサしたいからかな。

わずかな木漏れ日に芽を出した小さな芽
生え出る所を間違えちゃいけない。

植木屋をしていた時、庭に勝手に生えてくるカシの木をバサバサ切ったのを思い出した。

それは私のような人間が都会にいることとも似てる。都会で働いていた時はバサバサ切られていた。

山はまにまにのままに。
生きとし生けるものが皆、それぞれの生を全うしている。

私はあなたじゃないからあなたになれなくても大丈夫。あなたは私じゃないから私になれなくても大丈夫。
そんな勇気を、誇りを、自信をくれる。
 

世界は不思議だ。
あれから私は、夢で起きたことが現実でも起こったり
未確認飛行物体を見たり
過去から許されるようなことが起こったりしている。
 
 

不思議なことを言われた。
それは、私が10年前恋人に言ったことと一緒だった。
 

私の中に一本柱を立てたい
今まで揺らいでいた自分の芯をまっすぐ、ぶれないものにしたい。
 

そういう時期がやって来たのだと言うその人に
私は「そんなことはいいから経済は?」と言ったのだ。

そして今、それを自分が思いもかけない人から言われたのだ。

そして私は、「あの時分からなかったけれど、あの時彼はこんな気持ちだったんだな」というのをはじめて実感した。

人生は不思議なもの。
点と点が結ばれてくると、なぜ今までの人生だったのかが見えてくる。

森を歩くと、今にも羽化しそうな彼らがいた。

トンボ、チョウチョ、セミ、ホタル
今までの自分から、サナギになって、新しいものになる。

人間もきっとそんな時期がある。
それは振り替えってみないときっと分からない。

分からなくても、立ち上がってみる。
赤ちゃんは不思議だ。ちゃんと必要なことを次々クリアして人間になっていく。

冬のような時期が長く続いても
必ず春は来る。

早すぎた春に、雪を押しのけてでも出てきた先人たちのように、立ち上がることがまず始まりなのだと感じた。

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