バンコクでベスパ いろいろ不具合もありまして
バンコクでベスパに乗り始めて3年目。
実はこれまで不具合もありまして、本気で乗り換えを考えました。
私がベスパを購入する前の印象は、
「やっぱり外車は故障とか多そうだし、メンテナンスにお金かかるんじゃない?」
と思っていました。
購入前にウェブサイトや動画などで詳しく研究をしたのですが、やはりメンテナンスの問題が心配でした。
そんな中、私はベスパのディーラーを訪れてみると、新車から30,000キロまでの定期点検サービスが付いているということを知りました。
5,000キロごと(または半年ごと)に定期点検のサービスを受けることができて、その時に必要なエンジンオイルや消耗部品などすべて含めて手間賃込みだとのこと。
なるほど、それならメンテナンスに関しての心配は解消されるな、と思って購入の後押しにもなりました。
ところが・・・
実際に乗り始めてまもなく、そろそろ5,000キロの定期点検かなという時に、突然エンジンが始動しないという不具合が発生しました。
その日私は郊外まで遠出した帰りで、自宅まではあと10キロくらいのところで飲み物を買おうとコンビニに立ち寄り、冷たいジュースで喉を潤してさて、帰ろと思ってセルスイッチを回してもエンジンが始動しません。
キーを始動の位置に合わせると自動的にメーターの針が動いて、警告ランプが点滅するのですが、警告ランプが消えず、セルは回るもののいつものようにエンジンが始動しないのです。
バンコクの炎天下の昼下がり、うだるような暑さの下、私は冷や汗と大汗をかきながら色々考えを巡らせましたが、原因がまったくもって不明です。
近くでそんな私の様子を見ていたバイクタクシーのおじさんが、声をかけてくれました。
私はおじさんに事情を説明しつつ、「この近所にバイク屋さんはありませんかね?」と尋ねると、おじさんは心当たりがある様子で、
「ここから近いから、アンタのバイクを後ろから押して行ってあげるよ」
とのこと。
動かない私のベスパを後ろから押すと言うのは、おじさんが自分のバイクにまたがったまま片足を前にだして、私のベスパのタンデムステップをおじさんが足で押しながら前に進む、というタイではよく見かけるスタイルなのでした。
おじさんは手慣れた様子でしたが、私にとっては初めての経験。
私は恐る恐るおじさんの足加減にまかせながら前に進んでなんとか近所のバイク修理屋に到着しました。
気の良さそうな笑顔で迎えてくれた修理屋の主人は、私のベスパを見て
「ベスパはウチじゃ修理できないなぁ・・・」
どうやらベスパの修理は工具も含めて特殊なものらしく、普通のバイク修理のお店では対応できないとのこと。
こりゃどうしたもんか・・・
するとバイクタクシーのおじさんが、
「そう言えば、◯☓通りの向こうにベスパの店があったな」
私は言われるままに、スマホのグーグルマップで調べてみると、確かにそこにはベスパのディーラーがありました。
「じゃぁそこまでまた後ろから押してやるから、行ってみよう」
と気安く言うおじさん。
いやいや、そのベスパのディーラーまでは確かに5キロほどの距離だけど、大通りを横切り、Uターンの陸橋を渡ってさらに幹線道路を進んで行く経路になるじゃん・・・
そんなアドベンチャーな経路をおじさんの後押しで他の車に気をつけながらたどり着けるかどうか、私の不安は募るばかり。
私の心配をよそに、バイクタクシーのおじさんはもちろん、故障したバイクを後押しする我々の姿を見慣れているのか、周囲の車も2台のバイクを上手く避けながら走ってくれているようでした。
暫く走ると私も慣れてきて、Uターン陸橋も無事に越えてなんとか目的地のベスパのディーラーに到着したのでした。
バイクタクシーのおじさんにはここまで送ってもらったお礼に私が100バーツ札を渡しすと笑顔で走り去って行きました。
やれやれ、ともかく故障の原因を調べてもらうしかない。
飛び込みで入ったベスパのディーラーのメカニックの兄ぃちゃんに、
(・・・今日何回目かな)と思いつつ事情を説明。
私は修理が終わるまでやることがないので、エアコンの効いた控室でゆっくり休んでいると、
「お客さん、エンジンは普通に始動しますけど」
とメカニックの兄ぃちゃん。
「なんで??」
と思いつつ、整備場に見に行くと確かにベスパはエンジンが動いている。
「警告灯が点いたように、エンジンオイルの量が減ってたのかもしれません」
「え?そんなことで??」
まったく腑に落ちないまま、
「じゃこの際エンジンオイルを交換してよ」と頼むと、
「定期点検サービスのキロ数までまだ到達してないので、購入したお店でチェックしてもらえますかね?ウチでやると後々の保証の問題とか色々ややこしいので」
なんともやる気のない説明だな、と思いましたが確かに納車して3ヶ月ほどだし購入したディーラーに行ってクレームのひとつも言ってやろかと思い、私は一旦帰宅することにしました。
翌日の朝、私は3ヶ月前に購入したベスパのディーラーに向かいました。
クレームを言いたいけれどなにはともあれ原因を特定して修理してもらうしかありません。
待つこと3時間。
「エンジンオイルとギアオイルも交換しましたので、問題はないと思います。
というメカニックの兄ぃちゃん。
「とりあえず元通りに走れるんだね?もうすぐ定期点検だからそのときもまたちゃんとチェックしてよね」
と言い残して私はその場を去ったのでした。
それから数ヶ月・・・
毎日の通勤は問題なく、朝は渋滞が始まる前に市内を抜けるために早朝に出かけるようにしたおかげで快適に出社して、オフィスで一息入れるいつもの習慣になりました。
しかし帰りの渋滞は避けることはできません。
季節は真夏に入り、走っている時は問題ないのですが、信号待ちや渋滞にハマるとヘルメットの隙間から汗が滲んできます。
そんな真夏の帰り道。
大通りの渋滞を抜けて、私の自宅がある裏通りに差し掛かった時に突然、ベスパのエンジンが停止しました。
・・・いやいや、あと少しの距離なのにまたかよ。
路肩にベスパを停めて、シートを開けてメットインのバケツみたいなカゴを取り出してエンジンを見てみました。
ものすごい熱気がこもっていますが、見た目では何が起こったのかわかりません。
渋滞に長くハマって動けなくなると、ベスパは自動的にラジエーターのファンが回って熱気を冷ますシステムになっているのですが、この日も渋滞にハマっている時に、ラジエーターのファンが回っていました。
もしかしてエンジンのオーバーヒートが原因なのかもしれません。
やがて西の空が赤くなり、まもなく陽が沈む時間になりました。
私の自宅までは1キロちょっとだし、あきらめて動かないベスパを押して歩いて帰ることにしました。
トボトボと歩くだけですが、重たいベスパを押し歩いていると汗がでて息が切れそうです。
「どうしたんですか?故障ですか?」
そんな私に救世主が登場。
通りすがりのバイクタクシーの兄ぃちゃんが私に声をかけてきました。
「理由はわからないけど、エンジンが始動しないんだ。ウチまであとちょっとなんで歩いてるんですよ」
「じゃ、後ろから押してあげますよ!」
気の良い兄ちゃんは、快く助けてくれるようです。
そして例の後押し方法で私は無事に自宅にたどり着くことができました。
「どうもありがとう!あのお礼に・・・」
と私が彼にお礼を言い、お金を渡そうとすると
「マイペンライ!(大丈夫ですよ)気をつけて!」
と言い残して風のように走り去って行きました。
格好いい・・・ヒーローのような兄いちゃんだ。今日のMVPは彼だな。
私は人の優しさに心から感謝しました。
ベスパが停まった時は、怒りに任せてディラーのメカニックの兄ぃちゃんのことを恨んだりしましたが、もうそれはどうでもよくなったのでした。
翌日、私はまたまたベスパを購入したディーラーに出かけました。
エンジンが高温になると停止するということが気になった私は、警告を知らせるセンサーにも問題があるのではないかとメカニックに伝えました。
電気系統のチェックとオイル交換をしてもらいましたが結局のところ、原因は特定できませんでした。
ベスパならではの持病なのかな。
やはり、外車は信用できないな。
今なら下取り価格もいい値段になるだろうし、いっそのこと信頼と実績の日本メーカーのバイクに乗り換えるか?
いろんな思いが駆け巡りました。
そんなわけで、高温になるとエンジンが止まる謎の持病を抱えた私のベスパは2年目に入ったのでした。
(続く)