タイ語が話せるまで 3
私がタイ語を話せるようになった経緯をこれまで書いてきました。
今回は過去の話ではなく今現在のお話。
私が働いている職場には、私の他に日本人はいません。
社長をはじめ事務職の皆さん、そして工場で働くのは全員タイ人です。
誰も日本語を話せる人はおらず、すべてタイ語で仕事をしています。
1人だけ例外、というか私の同僚に、アンドリューというおじさんがいます。
アンドリューはイギリス国籍ですが香港で長く暮らし、色々あって10年ほど前に二度目の結婚をしたのがタイ人という経歴の持ち主。
今はその奥さんと娘二人の4人家族でバンコクで暮らしています。
そんな彼が最近、
「私はどうしてあなたのようにタイ語が覚えられないんだろうか?」
と私に尋ねました。
職場で私とアンドリューの会話は英語です。
といっても、私の下手な英語に彼が上手く合わせてくれて成り立っている英会話なので、アンドリューにとって私は最適な話し相手とは言えないのですが、在タイ歴10数年のアンドリューはほとんどタイ語が話せません。
彼の奥さんはタイのイサーン地方の出身なのですが、英語が話せてアンドリューとは知り合った頃から英語で会話をしています。
娘たちはまだ小学生ですが、インターナショナルスクールに通っていて、英語も勉強中なので、普段はタイ語を話しますが、アンドリューとは英語で会話しています。
そういう家庭環境なので、アンドリューはタイ語を話す必要がないため、彼のタイ語は上達しないのだろうと思っていました。
とある日の昼休み、私とアンドリューは職場近くに新しくオープンした食堂に昼ご飯を食べに行こう、ということになりました。
新しい食堂はタイ人が経営する普通の食堂でしたので、メニューはタイ語のみ。
ここは私がお店の人とタイ語で会話をして色々と段取りする出番だな、と思っていると、お店の若いお兄ちゃんが流暢な英語で我々に話しかけてきました。
そうなると、アンドリューは遠慮なく英語で会話に応じて食べたいものを注文して難なく食事を終えて職場に戻りました。
私はどうにも腑に落ちないまま、午後からの仕事をしていました。
『もしあのお店に私一人で行っていたらどうなってただろう?』
初めて行くお店に私一人で行くと、お店の人は当たり前のようにタイ語で対応したでしょう。
それは特に問題ありませんし、私も特に意識することなく初めて会うお店の人とタイ語で話しをして食事していたはずです。
ではなぜ今日は英語で話しかけられたのか?
そう、アンドリューが一緒だったからです。
彼は誰がどう見ても西洋人。
今日のお店に限らず、彼と出会うタイ人は、初めて会う西洋人に対して、できる限りの英語で話しかけるのです。
一方の私は、
『見た目はタイ人っぽく見えないけど、中国人ではなさそうだし、もしかして日本人かな』
という第一印象で見られ、少なくとも私が流暢に英語を話すとは思われないのです。
私と初対面のタイの人が、私にどう対応しようか迷っている間に、私のほうからタイ語で話しかけると、相手はホッとした表情を浮かべてタイ語での会話が始まるのです。
時には私のタイ語のスキル以上に難しい言い回しで会話を進める人もいます。
私が十分に理解できず、相手に聞き返して初めて
「あ、この人はタイ人じゃなかったわ」と思い出してくれるのです。
そういうことを繰り返しているうちに、私のタイ語はいつの間にか上達していったのだ、と最近思うようになりました。
アンドリューがタイ語を覚えられないのは、彼が西洋人であり、西洋人に対して優しいタイ人が気を使って、英語でしか話しかけないので、彼がホントのタイ語会話に触れる機会が少ないからだろうな、という結論に至った次第です。
逆に私が一人でイギリスで暮らすとどうなるのか?
明らかに東洋人な私に対して、イギリスの人たちは日本語や中国語で話しかけてくるのでしょうかね?
私は英語圏の国で暮らしたことがないのでわかりませんが、実際に英語圏で暮らしていたら、私の英会話ももうちょっとマトモだったかもしれないな、と思ったりします。
私にとって初めての外国がタイであり、半ば強制的にタイ語を覚えなければいけない環境で暮らしたおかげで言葉を覚え、今につながったのも何かの縁なのかな、と思う今日この事です。