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さよなら、愛しのバルコニー(はとだ)

『吹けよ春風』を発行していた、1回目の緊急事態宣言から1年。

そのときのことを振り返ると、真っ先にうちのバルコニーを思いだす。わたしの心に春風を吹かせていた、大切な存在のひとつだから。

この記事は、バルコニーをテーマとしたフォトエッセイです。

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うちはマンションの6階。家賃がすこし高めだけど、バルコニーも含めたら高くない、といまは思える。

ここで過ごす時間が増えたのは、2020年2月に会社を退職してから。家での息抜きとしてバルコニーによく出るようになった。

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送別会でいただいたお花をバルコニーで撮影。

2020年4~5月の外出自粛中は、近所のスーパーに行く以外はほとんど外出しなかった。家で缶詰め状態で鬱々とするこの状況でも、ここで気分転換できるのはありがたかった。

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キャンプ用の椅子に座って、Zoomでお喋りしたり。


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風を感じながら読書をしたり。


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レジャーシートを敷いてごはんを食べたり。


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クリームソーダをつくって飲んだり。


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ノーリーズンしたり。


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夕方に「ぎっしり満足!」も食べた。

ほかにも、朝起きて歯磨き、軽く走ってストレッチをしたり……。そんなふうにバルコニーでいろいろとやっていたけど、何もせず、何も考えないでただぼーっと空を眺めることも多かった。

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ここから見える空は、毎日表情が違う。毎日見ていても、全然飽きない。


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空を見ていると、そのときの心の状態で「きれい」「切ない」「寂しい」「重い」「怖い」とさまざまな感情が浮かんでくる。


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浮かんできた感情はただ漂わせる。バルコニーでは思い悩んだり、あんまり深く考え事をしたりはしなかった。


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わたしにとってここは家のなかでいちばん好きな場所。バルコニーでの時間は、大切な癒しでありリフレッシュタイム。外出期間中の長すぎる「おうち時間」を飽きずに過ごせた理由のひとつに、この存在がある。

そんな大好きなバルコニーで、わたしは一度だけ、ちょっと泣いた。

引っ越しするときだ。

12月28日の朝。年末のバタバタと眠けのなか、すべての荷物をトラックに積み終わった。

ガランとした部屋でひとりとなり、バルコニーにでた。

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すっきりと晴れている。最高のプレゼントだ。


ここで何度空を見上げたことか。
いままで、いろんな感情が生まれてきて、それを静かにやさしく受けとめてくれたバルコニー。

うれしくてウキウキする日も、どんより気持ちが重たい日も、無職になった日も、プロポーズされた日も、結婚指輪をはじめてつけた日も、いつもわたしの存在を受けとめてくれるようだった。

いろいろあった2020年。
ひとときの豊かな時間を一緒に過ごしてくれてありがとう。

そんな想いで胸をいっぱいして、わたしは部屋をあとにした。




ちなみに、わたしのTwitterとnoteのアイコンもバルコニーで撮影しました。

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執筆者:はとだ
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note:https://note.com/hatoda



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