「フリーハーブゾーン」の復活(野あそび夫婦 アオ)
キャンプ民泊NONIWAの庭には数種類のハーブが植えられている。この一角を僕は「フリーハーブゾーン」と呼んでいて、お客様は自由にそこのハーブを摘み取って、料理に使っていいことにしている。
当初はローズマリー、タイム、バジル、セージ、大葉、スペアミント、ディルなどが植えられていたこの「フリーハーブゾーン」も、モグラの連続凸攻撃や妻が気まぐれに植えたミニトマトのビッグウェーブに飲み込まれ、今ではローズマリーとタイムが残るのみ。あとは名も知らぬ雑草たちが我が物顔で「フリーハーブゾーン」を占領している。
〜夏草や兵どもが夢の跡〜
芭蕉の句が心の底から滲みる光景に、少しセンチな気分になったところで、意を決して雑草を一掃していく。使うのはステンレス鋸鎌。田舎暮らしには欠かせないアイテムの一つだ。
雑草を掻き分けていくと、雑草なのか?ハーブなのか?判断するには微妙な草を見つけた。少し千切って噛んでみる。そこまでクセは無いけど、少し風味がある。たぶんハーブだろうけど、ここに何を植えたかは覚えていない。ネットで調べたり、SNSで聞いてみると、どうやらそれは「オレガノ」らしい。植えたことすら忘れていたので、なんだか得した気分だ。
ハーブを使いこなせると、どこか魔女っぽい感じがする。だから偶然発見した「オレガノ」を摘むときも、年老いた魔女よろしく‘イヒヒヒヒ’と心の中で呟く。
そもそも「オレガノ」とは何なのか?どう使えばいいのか?まずはそこから調べる必要がある。インターネットでも調べられるが、やはり魔女っぽさを追求するなら、紙の本の目次を紐解きながら呪文を唱えたい。
見習い魔女の指南書となるのは、日沼紀子著『スパイス&ハーブ料理の発想と組み立て』。僕が見習い魔女だとすると、日沼紀子さんは、賢者クラスに匹敵するのだろう。
ふむふむ。
オレガノ、、、オレガノ、、、あった!
❝風にのって漂う清涼感のある香りは、語源であるギリシア語の「山の歓び(Orus Ganus」そのものであろう“❞
なんとも素敵な語源。期待に胸が膨らみつつ、続きの文章を読む。
❝その強い殺菌作用は、かつてミイラ作成の際にも重宝された❞
いよいよ魔女修行っぽくなってきたー!またまた期待で膨らむ僕の胸。
次は利用法の項目を確認。どうやらトマトとの相性がバツグンに良いらしい。冷蔵庫には昨日の晩から仕込んでおいた鶏胸肉のローズマリー塩漬けがある。これを使ってオレガノたっぷりのトマトチキンライスなんてどうだろうか?
僕の胸は今にもはち切れんばかりだ。
レシピはさほど難しいものではない。細かく切ったニンニク、玉ねぎ、鶏胸肉を炒めて、トマトペースト、ケチャップ、赤ワイン、みりん、そして今回の主役であるオレガノを入れたら、あとは水分が飛ぶまで煮込むだけ。これでトマトチキンライスの元が完成。ちなみに今回は鶏胸肉のローズマリー塩漬けを使っているので、最後にコショウのみを使って味を整えた。
トマトチキンライスの元は多めに作っておくことをオススメする。お米と一緒に炒めるだけで、いつでも本格的かつ風味豊かなトマトチキンライスが簡単に食べられるからだ。
僕はまだ見習い魔女レベルなので、今は弱小魔法しか唱えられない。ドラクエでいうところのホイミくらいが関の山だ。これから地道にレベルアップしていこう。賢者までの道のりはまだまだ長い。
あれ?そもそも賢者目指してたっけ?
<野あそび夫婦 青木達也(アオ)>
アウトドアライフプランナー。日本初のキャンプ初心者向け施設「キャンプ民泊NONIWA」を夫婦で運営。自然のなかで遊ぶように暮らす”を人生の目標に、都心から60分ちょいの里山 埼玉県ときがわ町に移住。初心者向けキャンプのはじめかた講習・子ども向け火育イベントを開催中。
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